【暗黒神様と】人界のオカルト寺院【一緒】1スレ目
「まだかなーまだかなー」
ウールをモミモミとしながら三人を待っているのだが全然こねぇ。いやまだド深夜なので当然だが。
眠気も戻ってくる様子はないし暇なのである。ご飯もないし、魔力も節約中なので本を眺めるぐらいしか暇つぶしがない。
横のウールを眺める。
「なんか面白いもの無いの?」
「ありませんネ。望まれるのならばその辺の人間捕まえてラジコンにでも加工致しますが」
「いらん」
なんだそのラジコンは。人間を何をどうやったらラジコンに出来るのか。聞いたらグロい話しか出なさそうなので聞かないけど。
「アスタレルなんかと二人でいてもろくでもなことにしかならん気がするし早く三人共こっちにこないかなー」
そう言った瞬間だった。横のウールが突如として立ち上がったのは。
勢いに負けた草が周囲に散ってかさかさと乾いた音を立てて散らばる。
なんだ突然。ビビるのでやめてほしい。
暫く無言でどっか遠くを眺めていた羊はやがて茫洋とした口調で静かに呟いた。
「……私は恐ろしい見落としをしておりました」
「ん?」
何だいきなり。お前がそんなことを言うってなんかちょっとヤバそうなんだが。そーっと下から見上げても手をフリフリとしても反応は無い。ただウールを打ち震わせながらなんということだだとかなんたる無様なだとかブツブツと言っている。
10分ほどそうしていたが。グルンと首がこちらを向いた。その物理法則とか人体構造を無視した方向を向くのやめてほしいのだが。最近のトレンドなのか?今すぐやめるべき。
アスタレルはゆっくりとした動作で私に向き直り、ぐびりと喉を鳴らした。
「閃きました。暗黒神様、ちょっとあの寺院とやらに参りましょう。
私は────────とんでもないことに気づきました。というわけで行きますヨ暗黒神様」
「えぇー」
なんでだ。まだカミナギリヤさんもアンジェラさんもおまけに樽子も居ないので行きたくないのだが。これではほぼソロ攻略じゃねーか。
ずりずりと足首を掴まれて引きずられていく。いやまぁこいつがいればそうそう不測の事態に陥るということもないではあろうが。
それでも行きたいか行きたくないかと言われれば行きたくねぇ。引きずられながらもじたじたと暗黒神ちゃんアームを振り回して抵抗する。
「ん」
引きずられていると何かぬめっとしたものがぼたぼたと降ってきた。何だこれ。手でぐしぐしと拭ってから眺めてみると、何やら赤黒い。あとなんか湿っぽい鉄のような匂いがする。
「……………」
それはどうやらアスタレルのほうからぼたぼたと落ちているようだった。しかもどんどん量が増えている。増えてくればやがてその正体にも察しがついた。
「なんであんたそんな血だらけなのさ」
「失礼。暗黒神様を動かす、まぁつまり干渉するというのは悪魔や神性にとっては割と苦行なものデ。
物質的には軽いので動かすこと自体は簡単なのデスが、ある程度限界を見極めねばうっかり反動で死にかねまセン。
困ったデブです」
「誰がデブじゃい!!」
失敬な!!このムチムチボディを捕まえて、……ん、ヤバいなよく考えたらデブな気がしてきた。
そーっとお腹に手を伸ばし、恐る恐るとつまんでみる。指先に伝わるふっくらとしたマシュマロ感触。余ってる皮、などという生ぬるいものではない。軽く、柔らかで、そしてたしかに指の間に挟まれた大いなる存在がわかる。
むにゅ、なんたる見事な脂肪。
無言で立ち上がる。まぁ、なんだ。たまには運動も必要であるからして。
私が若干ダイエットの為にやる気を出したのを察知したのか引きずるのをやめて私が立ち上がるのを待っている。なんかやけに今日はおとなしいな。何を企んでいやがるのだ。
べしべしと尻をはたいて砂を落としながらリュックを背負い直してカメラを手に持つ。これでよし。アルトラ寺院とはそれほど離れた場所ではない。割とデカイ寺院らしくここからでもそのシルエットが見えている。歩いて5分くらいだろう。
「では参りますヨ、暗黒神様」
「はいはい……」
羊の小さな手とおててつないでブラブラ肝試しである。嫌だが仕方がない。
それにまぁ肝試しをしているうちに他の三人も合流するであろう。羊を見下ろせば……何か変な機械らしきものを持ってカチカチしていた。なんだそれ。
液晶っぽいものにタッチパネルなのか指先を滑らせて操作している。
うーん、スマホ、か?やけに肉の塊だが。
何かを熱心に打ち込んでいる様子である。ふむ……。
「えい」
取り上げてやった。
【暗黒神様と】人界のオカルト物件でデート実況スレ【一緒】
1.本当は怖い黒羊さん
というわけで人界にあるオカルト物件アルトラ寺院を暗黒神様と散策デートするので実況します
私としたことが失念しておりました
私の今のこの状況、どう考えてもデートです本当にありがとうございました
2.本当は怖い黒獅子さん
は?
3.本当は怖い黒馬さん
死ね今すぐ死ね
4.本当は怖い黒猫さん
にゃーん
5.本当は怖い黒猿さん
氏ねばいいのに
6.本当は怖い黒蛸さん
死ね以外の感想が浮かばないのは逆にすげぇわ
7.本当は怖い黒山羊さん
暗黒神様とデートとかもうそう思う事自体が既に罪深くない?絶許案件でしょコレ
8.本当は怖い黒蝶さん
みんな~
ルイス以来のお祭りの時間だよ~^^
9.本当は怖い黒羊さん
だがしかし選ばれたのは忠実な下僕たる私でした
有象無象共は嫉妬に身を焦がしつつシコって寝ろ
10.本当は怖い黒月さん
煽られてばっかりの発狂悪魔がここぞと煽り返してくるの笑う
11.本当は怖い黒狼さん
どうせなんかやらかしてイツメンに戻されるでしょ
12.本当は怖い黒兎さん
まぁいざという時に呼ぶ名前は大抵私か蛇ですからな
お嬢様は黒(^o^)に対して信頼クソですので大抵がもののついでに呼ばれる程度です
最初に顕現を果たしたとも思えぬこの体たらく、まさに黒(^o^)
13.本当は怖い黒蛇さん
うぇwwwwwwwざまぁwwwwww
15.本当は怖い黒山羊さん
コクウボァ
15.本当は怖い黒羊さん
莉翫☆縺占イエ讒倥i繧呈ョコ縺励※繧?k縺ゅj縺ィ縺ゅi繧?k闍ヲ逞帙→諞取が繧剃サ・縺ヲ豌ク驕?縺ォ蜿」繧貞茜縺代〓繧医≧縺ォ縺励※縺オ縺悶¢縺溘%縺ィ繧呈栢縺九○縺ャ繧医≧縺ォ縺励※繧?k
16.本当は怖い黒月さん
安心した
17.本当は怖い黒水さん
これだよこれ
18.本当は怖い黒猿さん
実家のような安心感
いや実家なんだが
19.本当は怖い黒雷さん
☆お☆ま☆た☆せ☆
20.本当は怖い黒狐さん
そういうとこじゃぞおぬし
・
・
・
「……とりあえずクソスレ立てるのやめたほうが良いんじゃね?」
それ以外にコメントしようがない。こんなクソスレを立てられた地獄の住人達がかわいそうだろ。
じーっと肉肉しい端末を眺めてしばらく。ふと気が向いた。羊の手から奪った端末をつつーといじる。ちょいと考えてから無難なものにしておくこととした。
変なコメントしてもなんだからな。ぽちぽちと両手でボタンを押して変換、ビックリマークを付けて完成である。「暗黒神ちゃんだぞーっ!」書き込み、完了……と。
書き込みに成功したらしくスレッドには私のレスがしかと載っている。名前欄が何やら文字化けしまくっているが。とりあえずこれでできた筈だ。なんか反応あるだろうか。ちょっぴりワクワクしながら更新ボタンを押してみる。
「あれ?」
スレッドが落ちました、人大杉。よくわからんな。とりあえず私が折角書き込みしたスレッドは落ちてしまったということだけはわかった。残念。
なんかエラーとかになったのだろうか。まぁ名前欄が文字化けしてたしなんかあったんだろう。
「なんか落ちたぞ」
言いながらアスタレルに端末の画面を見せてみる。アスタレルは何やら何を当たり前のことを、みたいな顔をしている。なんでだ。
「当然でショ。1万レスまで出来る長編用鯖ですが暗黒神様の書き込みに対応出来るほどのものではありませんヨ。
1万程度、んなもん2秒で埋まるに決まってますネ。どうせ記念カキコの短文だけでしょうガ」
私から奪い返した端末をスクロールしながら何やら見ている。画面がせわしなく動いて目がチカチカするので目がバッテンになった。アスタレルは現代っ子なのであろう。
「おや、既に暗黒神様降臨祭スレがPart556まで進んでますヨ。悪魔も暇人共ですネ」
「ふーん……?」
なんか祭りが起きたらしい。いいけど。もうとりあえずほっといて探索に向かうか。
悪魔というものは何を考えているのかまるでわからんな。