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2.吐蕃の緑の宝石 2

 沙南公国政府では、通常10日に1度、西公はじめ宰相、軍師、文官と武官それぞれの長が揃って会議を行う。しかし現在、その会議はほぼ2日おきに行われていた。討議される内容は内政、外政、山林管理、そして軍制改革など、多岐にわたる。そしてそれがなぜ今それほど慌しくなっているかといえば、相変わらず治まる気配のない異常気象と、何より宰相、将軍といった、沙南政府にとっての主要人物を亡くしたことによる、政務の混乱であった。






 沙南公国は吐蕃皇国のある大陸のほぼ真ん中辺りに位置している。国は山地の中の盆地にあり、従って耕作地が少ない。しかし年間通して比較的穏やかな気候と豊富な水資源に恵まれており、また地下資源も豊富に産出されている。

 国の経済の多くは、大陸通商路のひとつである砂漠の道と、海の道から首都大都に向かう途中の商人によってもたらされる交易が占めている。その次辺りは鉄などの鉱石と、それによる金属細工が占め、その後に果樹、穀物と続く。

 国土は広い盆地と、さほど険しくはないが、延々見渡す限り連なる山地と、急流を挟んで広がる沙漠地帯と、その南を遮る壁のような山脈が、これまで外敵をほとんど寄せ付けなかった。

 そのような国柄のせいか、人々の自主自尊の気質は比較的強く、一方で穏やかで、軍事力に対する欲求は比較的薄かった。

 公国の正規軍はきちんと存在していたが、国境と城の警護以外の主な任務は、皇国中に張り巡らされた街道と運河の治安維持であり、皇国一緊張感に欠けていると陰口を叩かれてすらいるほどであった。また、そのような事情から、傭兵の比率も皇国一高かった。





 そして8月の事件以降、最も変革の必要性が議論されているのが、この軍政の改革なのであった。





 これまで沙南公国は皇国内外の各勢力といずれも友好な関係を築いてきていた。

 南方の諸勢力はほとんど鎖国状態であるためここは例外とするが、沙漠地帯を主な勢力範囲とすると考えられている砂漠の民ともうまく利害関係と相互の尊重姿勢がバランスをとっており、吐蕃皇国では恐れられ、差別の対象である砂漠の民にとって、沙南公国は最も住みやすい国と言われるほどであった。

 また前西公の時代には東の沢東公国との繋がりも強く、不文律の盟約関係が存在していた。

 しかし今現在、沙南と良好な関係を築いていた前東公、琇倫は謀反の咎で刑死しており、近親の一族もことごとく連座させられている。現在の沢東公国を実質的に治めているのは、吐蕃皇である。

 北の高蘭公国との関係には今のところ取り立てて変化はないが、何といっても現・皇妃を出した国である。当然、皇との関係はより良好に、かつ密接になっていくことは想像に難くない。





 さほど悲観的に考えずとも、現状より周辺の環境が良くなるということはない。

 至急に、かつ細心の注意を払って、国の防衛策をはじめとした軍政の改革と見直しをしなければならない必要に迫られているのである。






 その日も朝一番から沙南政府高官たちの会議は続いた。

 ろくな休憩もとらずに昼を過ぎ、ようやく食事を兼ねて休憩をとることとなった。

 うんざり顔やしかめ面、疲労しきった顔が出ていった後の会議室に、珪潤、珪髄の兄弟が残った。





「御疲れ様です」

「お前こそ。ご苦労だったな」

 しばらく互いをねぎらう言葉を交わした後、ふと髄が思い出したことを訊ねる。

「閣下、先日の夜にはどこかへお出かけでしたか?」

 髄は潤の異母兄であったが、常に公人としての立場を崩すことがなく、潤が西公に就いて以降は、公私を問わず“閣下”という呼称を使い続けていた。

「ん…?何かあったか?」

「いえ、先日夜中にお部屋に明かりがついていないようでしたので」

「そうか、いや、最近少し庭を散歩しているんだ。…少し、眠れなくてね」

 あながち嘘でもなかった。さすがに毎日城下まで出るほどの余裕はなく、しかし眠れないので、城下に下りない日は、城内の庭で夜半過ぎまで歩いているのである。

 そうでしたか、と髄は頷いたが、万が一のこともあるので気を付けるように、と釘を差すのは忘れなかった。

 それに曖昧な応えを返しながら、ふと思いついたように潤が訊ねる。

「そういえば、矸氏は最近どうだ?」

「いえ、その後まだ…」

「そうか……」

 それは先日来体調不良との理由で自宅に引き篭もりがちの文官の名であった。

「仕事に支障はないのか?確か、矸氏は農林産業の長官であったか」

「はい、ですが、今のところ特に問題は起こっておらぬようです。どうやら体調の悪化に気付いた矸氏は仕事を適当に振り分けておったようで。ただ、完全に休む気もなかったようではありますが…」

 髄の報告に、潤は試案顔になる。そんな彼に、異母兄は冷静な声をかける。

「あまりお気になさらないで下さい。私も可能な限りフォローしておりますし、あまりこの状況が続くようなら矸氏の様子も見てこさせましょう」

 冷静で、的確な髄の言葉に、潤は苦笑する。確かに、子供の扱いではない。今の時点ではそれ以上の対応はないであろう。気を廻しすぎな潤の方が、この場合は普通ではない。それは彼自身、なんとなく気付いてはいたのである。







     *****







 日の暮れきった沙南の街中、一つの安宿に入っていく人影があった。

 きしむ床板を踏みしめながら二階の最奥の部屋に近付くと、おもむろに扉を叩く。間をおかず中から扉が開き、来客を迎え入れると、素早く周囲を見回してから、静かに扉が閉められる。

「ありがとう。大丈夫でしたか?紅珠」

「ええ、問題ありません」

 部屋を訪れた男が闇色のフードを脱ぎながら言い、扉に鍵をかけて振り返った女――紅珠が応えた。

「毎回面倒な手順を踏んでいただいて申し訳ありません、一応、念のためでございますので」

「ああ、わかっている。気を使わせてすまんな」

「恐縮です、リン様」

 冷静な声音で簡潔に答えた紅珠が、意外なほど優雅な仕草で男――リンに椅子を勧める。そして自らも反対側の椅子に座った。





(やはりこういうのは慣れぬな…)

 「リン」という名で呼ばれて会話をする自分自身というものに居心地の悪さを感じながら、珪潤はそっと真正面の紅珠から視線を逸らして、部屋をぐるりと見回す。

 木材の枠組みに土の塗壁、大きくとられた開口部である窓は、今は深夜であるため木戸がぴったりと閉められている。そんな沙南地方で標準的なつくりのこの部屋は、不特定多数の人間が使う宿の一室に特有の、質素さと不潔さのぎりぎりのラインを保っていた。

 光源は二人が囲んでいる卓の上と、紅珠の背後、寝台脇の小卓上のランプのみであるが、狭い部屋にはそれで充分な明るさが得られていた。

 寝台、に一旦視線を止めてしまって、潤はやや慌てて意識的に視線を他へ移した。

 彼がこの部屋に招かれたのは今日を入れてもまだ3回ほどである。一番最初に紅珠に声をかけたときは、この宿の一階の酒場の隅で話をした。

 最初、いきなり仕事の依頼を始めた潤に当然驚いていた紅珠は、しかし当初はあまり乗り気ではなかったのを、潤は気付いていた。しかし彼とてそもそも勝算があって声をかけたわけではなかった。いや、それ以前に、本気で彼女に仕事を依頼するのも、彼自身決め兼ねつつ、それでも声をかけて呼び止め、話し始めてしまった以上は話だけでも聞いてもらいたい、と事情を説明した。矸氏の、名前こそ伏せてはいたものの、報告されている病状について説明をした。すると、紅珠の表情がわずかながら変わった。

 その後は紅珠からの問いかけも交えてやや詳しいことまで話し合い、結果紅珠は潤からの依頼を受けると答えたのであった。

 紅珠はある事件に関わることを吐蕃皇国内で調査し続けてきており、この沙南公国でもその調査の最中であった、と言った。そして私事を優先しているようで気が引けるが、話を聞く限り、潤の持ってきた話は、彼女の追っている案件に関わりのある可能性がある、だからむしろ自分にその件を深く調べさせてほしい、そう紅珠は言った。潤に否やのあるはずはなかった。

 そしてその場で、『沙漠の女戦士・紅珠』は「沙南公国の貴族の若様」リンに、事件調査員・兼・ボディーガードとして雇われる契約を交わしたのであった。

 「沙南公国の貴族の若様」リンを名乗った珪潤は、紅珠に本当の身分を明かしてはいない。それはもちろん、西公という責任ある立場にある者としての最低限の自己防衛であったが、それ以上に、紅珠という人物に対して「リン」という個人で付き合うことに対する、背徳感にも似た楽しみを覚えていることも、否定できない事実であった。

 二度目から彼女と会うのは宿の、一階の酒場ではなく、二階最奥のこの部屋であった。

「いかにこの沙南という街が安全であるとはいえ、やはり依頼主と公の場で顔を合わせている姿を他人に晒しているのは安全ではありません」

というのが紅珠の言うところであった。しかし潤としてはいささか気にしないではいられない。

 この宿は基本的に、一般の旅行客相手というよりは、紅珠のような流れ稼業の者が主に利用する宿である。とはいえ、荒事を生業とする者が多く集まる場所であるので、ある意味では健全な営業が行われている。――沙南公国がいかに治安が良く住人の気質が穏健であるとはいえ、隠靡な裏稼業が一切存在しないわけではない。そしてそういう行為は、こういった宿で行われているということは、いかに生真面目な珪潤とて知っている。

 まして、目前にいる紅珠という人物は、ひとことで言って、ちょっとその辺りの王侯貴族の深層の姫君にも見かけないほどの美女である。全く意識しないというのも、不自然な話であった。

 しかし二週間ほど前に契約を交わして、実際に会うのは今日で4回目の紅珠は、全くそういったことを意識していないようであった。

 感情の窺い難いポーカーフェイスは、彼女の玲瓏たる美貌にとてもふさわしいものだが、その内面もやはり冷厳に徹しているのだろうか、などとつい潤は思ってしまうのであった。





「今のところ、特に何の動きもありません。ただ、多少の情報は手に入りました」

 卓を挟んでリンこと潤に向かい合った紅珠が、やはり冷静な声音で、話し始めた。

 無駄な社交辞令も前置きも口にしない彼女の姿勢が、彼には好ましかった。

「矸家の当主は少なくともこの一週間、一歩も敷地外へは出てきておりません。それどころか、建物からも出ていないのではないか、と思われます」

「なぜそう言える?」

「矸家の屋敷に勤める小間使いから聞きました。とはいえ、聞き取りをすることができたのが、夜間は矸氏の屋敷外の、自宅に戻っている者でしたので、その者の勤務時間外のことは定かではありませんが」

「屋敷には入れたのか」

「いえ、残念ながらまだです。…合法的に入る口実が今のところ見つかりません」

 紅珠が言いながら視線を落とした。





 紅珠の言葉に、潤は矸氏のことを思う。

 矸家は三代前から沙南地方に住んでいる、沙南公国でも有数の貴族である。

 現在の当主は先代当主の次男で、若い頃から官僚一筋に勤め上げてきた人物である。といっても、長男はずいぶん昔に若くして亡くなってしまっているので、実質矸家の当主をこの30年余り、ずっと務めていることになる。

 特に際立った才能というものがあるわけではなかったが、ずっと若い頃から官僚一筋にこつこつ勤め上げてきており、だからこそ他に彼以上に沙南の農林産業のことを知っている者はいないと言われる人物である。

 特に何かあるとすれば、数年前に妻を亡くし、その後、かなり年の離れた妻を迎えたということくらいであるが、反対に言えば、それ以外特段に変哲のない人生を送ってきている人物なのであった。





 リンに、当主に異変が起きているという矸家の館の場所を教えられ、初めてその場所を訪れた時の感覚を、紅珠ははっきり覚えている。

 表の道路に面した敷地は土塀で囲まれ、中二階のつくりだという屋敷の姿は、その上にのぞいている屋根しか見えなかった。一見すると、何の変哲もない、沙南地方の高位高官の屋敷のつくりであり、季節柄溢れるように緑の葉を茂らす植栽など、むしろこぎれいな屋敷であった。しかし、肌に感じる悪寒は相当のものであった。

 訪れた時は日の高い昼間であったにも関わらず、まるで屋敷全体を薄黒い靄が覆っているような錯視感を覚えた。青く晴れ渡った空の下にいるのに、底知れない光のない闇に臨んでいるような不安な心持がして、無意識に直視するのを避けそうになっていた。

 ふと道ゆく人を見れば、誰も一様に無言で足を速めて通り過ぎていく。この場所が高級住宅街であり、上品で閑静な環境であるということや、通行人が少ないという事情を鑑みても、それは明らかに不自然なものに映った。

 不思議なことにその場所にいる間は、鳥のさえずりも、道端を歩く犬や猫の姿も見られなかった。水と緑の豊かなこの沙南の街で、塀越しにも見えるほど草木や花の豊かなこの立派な屋敷構えの場所で、後から考えればそれも異常なことの一つであった。





 場所を移して、沙南の国の中で人々から話を聞いてみた。

 不思議なことに誰もが何らかの違和感を感じていた。にも拘らず、誰もその違和感の正体を知らなかった。知ろうとした者に出会えなかった。

 夜が怖いという者にたくさん出会った。それは老若男女選ばなかった。だからこそ、不自然であった。歳若い者、幼い子供や女性が口にするならまだしも、いい歳をした大人が、屈強な若者が、老練な男性が、ふと、最近、夜が怖いのだと口にする。それは異常であった。





 彼女の肌感覚は、明らかに数ヶ月前に沙漠の小さな街で感じたものと、首都・大都で感じたものと、今この街にあるものが同じ種類のものであると訴えていた。それは表層的に感じる不快感というよりも、人間の存在の、魂の根幹が忌避する恐怖感であるように感じられた。





 怪しいかどうかといえば、今回の件はかなり怪しいと、紅珠は感じている。手段さえ選ばなければ、確かに採りうる方法はいくつか考えられる。だが今回はそういうシチュエーションではない。しかしかといって、手遅れになってもこの上なく後味の悪い思いをしそうだ、という予感もする。とはいえ、今は様子をうかがうしか彼女に採りうる手段がないのも事実であった。






「矸氏の屋敷は、最近一日中窓や扉が全て閉ざされているようです。と言っても、下働きの者たちの出入りも多く、客人の出入りもありますので、完全に閉ざされているとまでは言えません。ですが家人が普段生活している場所は基本的に閉ざされているという状況のようです」

「それは、つまりどういうことだ?……やはり、病気か何かか?感染性のある病気を誰かが患っていて、隔離されているとか?」

「可能性として否定はできません。しかしそれならばもっと医者の出入りもありそうですし、下働きの者ももっと出入りを控えたり、そういった場合にふさわしい身なりをしていそうなものですし、何より通いの者には当面暇を出しそうなものですが……実際、話を聞いた者もそういったことは口にしておりませんでしたし」

 確かに、矸氏は体調不良ということで仕事を休んではいるが、具体的な病名の報告は受けていない。真面目な性格の矸氏のことを思えば、報告を怠っていると考えることも不自然で、かといってあからさまに屋敷を閉ざしていないという状況を見れば、報告しようにもできない状況であるとも思えなかった。

 つまり、やはり異常なのである。矸家の屋敷の現状は。

「…やはり、中の状況を知らぬことには、ということ、か」

 リンこと潤の言葉に、紅珠は頷いた。





 しばしの無言の後に、紅珠がふと思い出したように顔を上げた。

「そういえば、矸氏の奥様は――現在の奥様は、二番目の方だと伺いましたが」

 ああ、と頷く潤に、紅珠が問いを重ねる。

「どちらから来られた方なのか、ご存知ですか?」

問われて、潤は頭をひねった。

「確か……沙南公国の家の出ではなかったと思う。はっきりとは知らないが、吐蕃王国の方から妻を迎えたと聞いた。と言っても、特に有力な貴族と姻戚関係を結んだとかそういう政治的な思惑があったわけでもなく――確か、古い貴族の家同士の交流の中で、長く連れ添った妻を亡くして気落ちしていた矸氏に、新しい妻を迎えて元気を出してもらおうという話になって、見合いをしたのだとか聞いた。それが今の細君だ」

 潤の言葉に、そうですか、と紅珠が再び口を閉ざす。相変わらず感情の伺いにくい表情をしていたが、何やら考え込んでいるようなのに、潤は気になった。

「何を考えている?矸氏だけでなく彼の細君にも何かありそうなのか?」

 潤の言葉に、紅珠がゆっくり視線を動かす。

「まだ……はっきりとしたことは言えません。ですが、無関係であると言い切ることはできません。もちろんいくつもある可能性の一つであるとしか今はまだ言えませんが」

潤は頷くしかなかった。紅珠の、随分と言葉を選んでいる様な、何かを迷っているかのような雰囲気は気になったが、それが何なのか、彼には分かりようもなかった。





     *****





 潤のもとに新たな人事案が上がってきた。

 リストの一番上の欄を見て、潤は思わずため息を吐いた。宰相位が空白のままであったからである。


 宰相は公を除けば沙南で最も高位の役職である。

 その職務は内外政における全てを把握し、かつ調整役でもあらねばならない。故に特にこの役職に就くための資格などはなかったが、その人間性において、条件が大変厳しくなるのである。

 いわく、公正な人柄で公平な判断が下せること、常に落ち着いて思考を巡らせ、常に的確な判断が下せること、人の和を大切にし、時には仲裁者となること。そして何より、広範な知識を有し、公を補佐できるだけの知略があること。

 そんな人物にはなかなか恵まれなかった。何しろ先の宰相位に就いていた人物、景朔林が不世出の宰相と呼ばれ、沙南一国のみならず、吐蕃皇国全土にその名と人となりが知れ渡っていた人物であるとなれば、おいそれと次の人物を選べなかったのである。

 そしてまた、とりあえず適当に任命するというには、政局が緊迫しすぎていた。それくらいなら、空位のまま、皆でフォローした方が、よほどよいと判断されたものであろう。





 軍のトップである、大将位には曹几達(ソウキダツ)という名が記されていた。彼は沙南公国正規軍の主力部隊である歩兵部隊の将軍であった。やや直情径行のきらいはあるが、部下たちからもよく慕われ、また、傭兵たちとも良好な関係を築ける人物である。確かに適役であった。

 気になる点があるとすれば、彼が生粋の叩き上げの職業軍人であり、かろうじて貴族の名は持っていたが、位も低く、あまり裕福とも言えない。軍事のみならず、政治的手腕が求められる大将という職位が彼に務まるか、全く未知数なことであった。

「まあ、これも妥当だな」

 潤は呟き、リストの続きに目を通していく。


 文官の長には角釉勾(カクユウコウ)という名が挙げられ、副長兼諜報部の責任者に珪髄の名があった。こんどは潤は苦笑する。

「髄はもう少し自己評価が高くてもよいと思うがなあ」

 正確には誰がこの人事を配置したか、何人もの思惑があるから一概には言えないが、この髄に関しては、彼自身がこれ以上の地位を固辞したことを潤は知っていた。

 髄は公職に就いてより以降、一貫して父である前西公を、そして現在の西公である潤を、支え続けてきた。しかし自分自身に高位の職を求めることがなかった。彼は権力というものが一極に集中することを避けていた。


 髄は情報部などという仕事に就いているだけあって、他人の思惑というものに敏感であった。そして、権力が特定の一族に集中することを嫌った。

 髄は潤と、母親が違うとはいえ、同じ父親を持つ兄弟であり、同じ珪の名字を名乗ることが許されている。よって、傍流とはいえず、珪氏一族の正式な一員なのである。である以上、珪氏の者――現時点では潤――が西公位に就いている限りは、自分は強権を握ってはいけないのだ、そう髄は主張するのである。

 とはいえ、こういった考え方は、実は沙南公国においてはさほど珍しいものではない。

 沙南地方に在住する民族――例えば珪氏をはじめとするユン族――では、長は基本的に世襲制ではなく、そのとき、最もふさわしい能力を有している者がなるべきだというのが一般的な考え方であり、それは吐蕃皇国に吸収され、混血が進みつつある現在でも主流の考え方なのであった。


 こういった考え方は、この地方に生きてきた民族の歴史に由来したものなのかもしれない。

 沙南地方は山地の中の盆地に発展した。現在でも田畑は少ないが、それでも少ない平地や、斜面を拓き、現在ではその景観の美しさを讃えられるまでにしたのは、ひとえにこの地に至り、定住し始めた頃のユン族の先祖から代々続けられてきた開墾の歴史の結晶であった。住みにくい土地を現在の美しさまで拓いてきた、その自負は各人の土地に対する強い愛着を生んだ。それゆえに、沙南公国人は、自分たちの土地を強く守ろうとする国民性を有していると言われているのである。

 そしてその、土地を守ろうとする意志は、よりふさわしいリーダーの存在を欲した。

 現在の潤を含めて、珪氏の直系が西公位に就くのは3代続いているが、それがこの先も続くかどうかは分からないのである。





「…これは最終案か?」

 一通りリストを確認した潤が顔を上げ、執務机の前に控えていた男に問いかける。

「いいえ、ほとんどまとまった案ではありますが、まだ最終的なものとはなっておりません」

野太い声で答えたのは、人事部の長であった。

 8月の事件で高位の文官も何人かは処罰され、還らぬ者となった者も数名いた。生還した者の中には、いかなる地獄を見てきたのか、病に伏せってしまった者もいた。

 そんな中で、職務上会議に同行しなかったこの男は、幸い難を逃れたわけだが、だからこそ強い憤りを抱いているらしく、それでなくとも文官らしからぬいかつい巨体に厳しい表情で、職務に励んでいるのである。

「そうか、では引き続きよろしく頼む。それから…」

 少し口を閉ざしてから、おもむろに潤は続ける。

「人材はなるべく広く募ってくれ。承知の通り、我が国政府は現在深刻な人材不足だ。従来の職員はよくやってくれている。だからこそ、内部で変に異動したりさせるのはよけいな混乱を生じさせかねない。他国の者であっても、例えこれまで全く無名の者であっても…職務に対する適性とやる気を鑑みて、積極的に登用してくれ。もちろんそなたは既に承知してくれていると思うが…」

「もちろんでございます。ですがなお一層、励ませていただきます」

いかつい姿の人事部長官は、意外なほど洗練された仕草で西公に頭を垂れた。






     *****






 紅珠はじっと期を待っていた。

 待つことには慣れていた。いや、慣れというよりも既に倣い性だった。

 7つの時に砂漠の民に迎えられた。その日から、彼女は戦う術を身に付けることを始めた。

 ほどなく師匠に従って実戦の場に出るようになった。彼女の戦闘能力は実戦の中で鍛えられ、身に付けていったものであった。


 ――実は、それ以前にも、彼女は武術を習ったことはあった。しかしそれは完全に護身のみの技であり、積極的に戦うためのものではなかった。しかし普通に生きるだけなら、それで充分であった。だから、彼女が求めたのは、生きるための力ではなく、己の考えで戦う、戦士としての力だった。


 ……力を求めた理由は、少なくともその頃にはあった。しかしひとつの諦観と共にそれを失って、今初めて、彼女は自らの意志で、ひとつのことに情熱をもっていた。


 それはあるはずのない事柄であった。少なくとも、彼女は、それが現実に起きる事象だとは思っていなかった。しかし、それは確かに彼女の目の前で起こった。

 つまりそれは、正しく現実となった悪夢であった。

(まだ間に合うはずだ)

 彼女はそう、思っていた。

(これ以上、事態が進展する前に、被害が増える前に)

 彼女の脳裏によぎるのは果てしなく広い荒野に忍び寄る滲むような暗い靄のような固まり、そして果てしなく遠い地平で輝く、ひとつの光。

(大丈夫。それが見える限りは、まだ大丈夫だ)

 紅珠は、そう己に言い聞かせる。胸に抱いた剣の鞘を無意識に握り締めて、がちりと重い金属音が鳴った。






 紅珠は矸氏の屋敷を見張ることのできる場所に身を潜めていた。しかし町外れであるとはいえ、そこは紛れもなく沙南の町中であったので、隠れる場所を探すのは苦労した。しかし昼間よりはまだましであった。

 とはいえ、本当は、夜間の張り込みは避けたいところであった。彼女が今追っている「闇」は、日の下でこそなりを潜めているが、日が暮れた後は、文字通り闇の活躍する世界だからである。

 紅珠は記憶を掘り起こしてみる。







 この世は光と闇の戦いである。

 光が産み落とした闇は、長じて光を喰い尽くさんとする邪悪へと転じた。

 光と闇の戦いは気の遠くなるほど遥かな昔から続き、勝敗を繰り返した。

 一番最近の戦いは、光の勝利に終わり、闇は永劫の煉獄に封印された。しかし互いに死力を尽くし、ひどく弱ってしまった。

 封印の力を打ち破るため、闇はたくさんの眷属を産み落とした。しかしそれでも封印を破るには至らず、闇とその眷属は封印の中で自らの力を蓄えつつ雌伏の時を過ごしている。

 一方、光も彼らに対抗し、たくさんの子供や眷属を生み出した。弱い封印の力を補うため、そしていつか復活するかもしれない闇を再び打ち負かすため。

 そうして光と闇は互いに力を蓄え、いつか起こる、世界の覇権を争う戦いのために備えているのだという。







 ふと、紅珠が顔を上げた。

 矸氏の屋敷の側に、人影が近付くのが見える。紅珠は目を凝らすが、何となく違和感を感じる。人目を忍ぶ様子だがそのわりに身のこなしがぎこちない。身を隠すのが習い性の傭兵や闇稼業の者ではありえない。

 しばらく様子を見ていた紅珠だが、ふとその人影の正体に思い当たり、腰を上げた。


「…何をしているんですか、あなたは」

 矸氏の屋敷の近くの物陰に件の人影を引っ張り込んで、紅珠がため息を吐く。

「ああ、やはりここにいたのだね」

対して、少し困ったような、照れたような表情で笑いながら、紅珠の雇い主――リンが言った。

「宿屋に行ったんだけど、君がいなかったから、もしかしてここかなと思ったのだが」

「――そういう場合は危険ですからそのままお帰りくださいと申したはずですが」

そうなんだけどね、と笑うリンに、紅珠は内心頭を抱えたくなった。しかしとは言え、相手は自分の雇い主である。加えて前回会ってから約1週間は経っている。そろそろ報告の必要があることも確かであった。

 紅珠は素早く周囲の気配を探った。現在二人がいる場所は、先ほどまで紅珠が隠れていた場所ほど安全な場所とは言えなかったが、特に今現在不都合はなさそうだった。

 深夜の静けさゆえに声が響きそうになるのを抑えながら、紅珠はその場で雇い主であるどこか危機感のない青年に、現在までの状況を報告することにした。






 矸氏はこの一週間、屋敷から一歩も外に出ていない。それは文字通り、少なくとも日中には『屋外』に出ていないということである。仲良くなった下仕えの少女の証言もあるため、前回の報告時よりは確実な情報である。そもそも矸氏の家族の姿すらほとんど見かけることがなく、特に奥方は常に自室に籠もりきりらしい。

 屋敷に出入りする人間は、日用品を届けに来る商人がほとんどで、顔見知りなどが尋ねてきた様子はない。一度、職場の同僚らしき人物が訊ねてきたことがあったが、門前で断られている様子であった。

 ここしばらくの特筆すべき変化といえば、屋敷に運び込まれる荷物に、香草が増えたこと。仕入先は様々で、大都方面から来るものも、西方からのものもあった。屋敷の外にいては全く嗅ぎ取れないが、屋敷内は常にほのかな香りが漂っている状態らしく、慣れない者にとっては、そろそろ息苦しい状況であるという。

 そのわりに、屋敷内のどこかで羽虫が湧いているらしく、そろそろ時期外れの害虫駆除に、下働きの者たちは苦慮しているという。

 その他には、些細なことではあるが、この屋敷の近辺で鳥の声を聴くことがなくなった。矸氏の屋敷は沙南の住宅によく見られるように、敷地内にたくさんの樹木や花々が植えられているが、最近めっきり小鳥の姿が見られないのである。加えて、犬や猫の姿もほとんど見かけられない。屋敷の人間たちが可愛がっていた子犬も最近は寄り付かなくなっているらしく、歳若い少女たちはしきりと寂しがっていた。


「…そう言えば、俺の方からも、報告がある」

 リンこと珪潤の言葉に、紅珠は目を見開いた。

「昨日、庁舎内で矸氏の姿を見た者がいる。その者は矸氏が職場に復帰したのだと思って彼の部署に行ったのだが、そこでは誰も矸氏の姿を見てはいなかった。その者以外にも矸氏の姿を見かけた者は何人かいたようだ。しかし誰も彼と会話を交わしたり、はっきりとその姿を確認した、という者はいないようだった」

「…それはおかしいです。確かに矸氏は昨日は屋敷の外へ出ておりません。それどころか、家族の者も誰一人出入りしておりません」

 これは確実なことだった。何しろ紅珠はここ数週間、矸氏の屋敷を見張り、ここ数日は昼夜を問わず出入りする人間をチェックしているのだ。

 矸氏の屋敷に出入りの門は表と裏の二つと、使用人のみが使う勝手口が一つだけ。よほど秘密の出入り口や地下通路などがあるならば別だが、むしろそのようなものを一般の貴族の家が備えていれば、その方がよほどおかしく、怪しいという話である。後ろめたいことが何もないなら、そんなものを使用する必要など一切ないのであるから。

「では、昨日の矸氏の姿はなんだったというのだ」

「わかりません。ありえないことです。全員が幻影でも見ていたのでなければ、そのようなことは…」

 紅珠が何か考え込むように口を閉ざす。表情に乏しい紅珠の顔色を読むことは潤には難しかった。彼女が何を考え、何を憂慮しているのか、正確なことは、潤には分からなかった。


「…それで、君の見解はどうなのだ」

 潤の言葉に、紅珠はほんのかすかに眉根を寄せて答える。

「あまりよい状態とは思えません。ですが、無断で踏み込むほどの口実もなく、――期を、窺うしかないかと」

 様々に疑わしき兆候はある。高価な香料を大量に購入しているなど、この沙南では通常考えられないことである。しかしそれとて別に違法なことをしているわけでないなら、何の咎められることでもない。

 貴族としての位や職場での地位も高くはないとは言え、矸氏は名の通った古い貴族である。無礼を働くわけにもいかないであろう。何の後ろ盾もない紅珠としては、何かタイミングを見つける他は採る手段がないのであった。






 そのとき、夜の静けさを打ち消して、ぐおん、と空気が大きく鳴動した。

 紅珠が瞬時に全身を緊張させ、矸氏の屋敷に視線を向ける。潤も慌てて彼女と同じ方へ目をやる。二人の視線の先で、屋敷の周囲を囲むように半透明の黒い壁がせり上がってきた。そのように見えた。そして夜空の彼方で一瞬ちかりと光が瞬いたかと思うと、凄まじい速さで近付いてきた。思わず目を覆う二人の目前で、矸氏の屋敷に星が落下したように見えた。一瞬、眩い光がほとばしるような感覚があり、音もなく地面が揺れた。

(――何らかの、術か!!)

 潤には天空から星が落ちてきたように思えた。しかしそれにしては衝撃は小さく、何より物音がなかった。それは物理的な現象ではなく、観念的な現象、精神に作用する術のように、潤には思えた。

「―――流星…………!?」

 潤の隣で、紅珠が呟くのが聞こえる。紅珠は光を直視するのを避けつつも、くいいるように屋敷の様子を見つめていた。表情は珍しく、明らかに強張っていた。

「――どういうことだ?何が起こっている?」

 潤が声をかけると、紅珠ははっとしたように体を揺らした。そして潤を見て、一つ呼吸を整えた。

「屋敷の周りに結界が張られました。その結界内に光が落ちたように見えました。何らかの術が、あの中で行なわれたものと思われます。いえ、現在行われている最中なのだと思います。恐らく、なんらかの召喚系の術――」

「召喚術?しかし、あのようなものは見たことがないぞ?しかも、こんな時間に行われるなど――」

 言いかけて、潤ははっとした。通常、自然の気が活発になっているときに行われる召喚系の術は、つまり自然の生命力を利用するための術である。それであれば、深夜、月の下で行われる召喚術によって呼び出されるものは、呼び出そうとされるものとは――

 紅珠が天を仰いだ。その視線の先には全き月が白々と光っていた。

(今日は満月だったか――)

 再び視線を眼前の屋敷に向けると、紅珠はそこへ近付いた。潤も辺りを見回しながら、その後に続く。

 これ程異様な光景が眼前で起こったのに、特に街が騒がしくなる様子もなかった。確かに、一瞬眩しい光が起こったくらいでは、扉を閉ざし、眠りに就いている人々が気付くこともないのだろう。

 紅珠はそっと手を屋敷の外壁に近づけた。慎重に近づけた掌が、軽い衝撃とともに弾かれる。紅珠は弾かれた左の掌を見た。少しぴりぴりとしたが、特に怪我などはないようであった。

(――「火」?「熱」?少なくとも、その系統か。さほど強いようにも感じない。完璧な拒絶も感じられない。崩すことは、私にも可能、か?)

 紅珠はあくまで肉弾戦が専門の、戦士であった。しかしたいていの場合得体の知れない相手と戦わねばならない職業柄、相手の戦闘方法を分析する能力には優れていた。そして力の強弱はあれど、術者との戦いや付き合いも多く、基本的な知識と対処法は身に着けていた。

 戦闘は、その手段が何であれ、『己を知り、敵を知ることから始まる』というのが、彼女の師匠からの教えであった。

(術の否定には反対の術で相殺を狙うのが常道。外法にもそれが通用するという保証はないが――それでも、元が同じ『術』であるのならば、同じ方法も有効だろう)

 紅珠が考えているうち、ようやく屋敷内が慌しくなってきた気配が伝わってきた。貴族の屋敷らしからぬ、慌しい足音に人声。そして。

「きゃあああああああ!!!!!」

 屋敷の奥で響いた鋭い悲鳴、そして騒々しい音。

 屋敷を囲むように張り巡らされた結界にほとんど阻まれてはいるが、外壁のすぐ側にいた紅珠たちには、その様子が確かに伝わってきた。

「どうする?踏み込めるのか?」

「…可能、と思います」

 潤の問いに紅珠は答えた。そして改めて潤に鋭い視線を向ける。

「……入りますか?」

そんな紅珠に潤は驚く。

「はっきり申し上げて、この中で行なわれているのは、外法である可能性が非常に高い。言い換えればそれは、完全に未知なる現象が起こっているのだということです」

「しかしそなたはそれに対処する方法を知っているのであろう?」

「最善を尽くします。しかし、危険は避けられません。危険を避け、より良い方法を探るなら、今は突入せず、沙南公政府に知らせ、対策を練るという方法があります。――むしろ、その方が良いとすら感じます。私は依頼主を危険に晒すことを望みません」

紅珠は厳しく、そして真摯な表情であった。潤は紅珠の評判を思い出す。旅の道中の、完全無欠の保護者。彼女に依頼すれば、例え過酷な沙漠の旅でも傷一つ負うことなく、病に倒れることもなく、目的地へ至ることができる。

 それはつまり、彼女の危険や外敵を退ける戦闘能力の高さの結果でもあるが、同時に、依頼主保護を最優先とする紅珠の細心の心配りの結果でもあるのだった。

 そのことは、何となく潤にも伝わった。しかし、彼には今は退くことはできなかった。

「そなたの言いたいことは分かった。しかし、今、起こっていることを確かめもせずに逃げるようなことはしたくない。無謀なことはせぬし、最低、足手纏いにはならぬようにする。中に入りたい。そなたの力を貸してくれ」

 紅珠は潤をじっと見つめる。しかしそれは一瞬で、すぐに頷いた。

「承知いたしました。――術は、使うことができますね?」

「ああ、ほんの少しだが――「火」を」

「それで結構です」

 紅珠が潤に頷いてみせた。そして一瞬にして表情を変える。まるで作り物のように整った容貌から一切の迷いが消え、怜悧で厳しいものとなる。

 満月に照らされて、紅珠の全身から紅い影が揺らめき立っているような錯覚を、潤は見たような気がした。

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