4 午前6時半の暴君 (下)
奏は錆びた機械のようにソファから立ち上がった。関節から微かにポキポキと音が鳴る。スリッパを引きずり、ほとんどゾンビのような足取りで洗面所へ向かった。キャットタワーの前を通り過ぎる時、あの「カル」という名のゴールデン・ブリティッシュが高みから優雅に爪を舐めながら、エメラルドグリーンの瞳で露骨に彼をあざ笑っていた。
2分30秒後、水で濡らして辛うじて寝癖を抑えた頭のまま、奏は絶望的な表情でダイニングの椅子を引いた。
テーブルの上には、対極にある二種類の朝食が並んでいた。
柊斗の席には、栄養バランスが徹底管理された低脂肪の鶏胸肉、全粒粉パン、ゆで卵、そしてたっぷりのブラックコーヒー。一方、奏の前に押しやられているのは、温かいホットミルク、完璧な焼き加減のトースト2枚、そしてカリカリに焼かれたベーコンだ。
柊斗はすでに汗まみれのスポーツウェアから着替え、清潔でゆったりとした白いTシャツを身につけていた。半乾きのアッシュブロンドの髪が額に柔らかく垂れ下がり、彼が放つ鋭い攻撃性を少しだけ和らげている。彼は今、まるで高級ホテルのディナーでも楽しむかのような鮮やかなナイフとフォークの捌きで、皿の上の鶏胸肉を正確に切り分けていた。
「俺、朝メシは食わない主義なんだけど」奏は湯気の立つミルクを見つめ、眉をひそめた。「咀嚼と消化に血液中の酸素を使われると、眠くなるから」
「アンタはもう丸18時間も眠くなりっぱなしだろ」柊斗は顔も上げず、陶器の皿にナイフを滑らせて耳障りな音を立てた。「食え。でなきゃ、俺が直々にその胃袋に流し込んでやる」
奏は生唾を飲み込み、双方の戦闘力の差を推し量った末、黙ってトーストを一枚手に取った。
ダイニングは奇妙な静寂に包まれた。壁掛け時計の単調な「チクタク」という音だけが響いている。
奏はトーストをかじったが、その咀嚼スピードは相変わらず絶望的に遅かった。彼は向かいに座る柊斗を、つい盗み見てしまう。
ブラインド越しに差し込む朝日が、少年の彫りの深い横顔に明暗のコントラストを描き出している。奏の視線は、ナイフを握る柊斗の右手に止まった。親指の付け根や指の関節には分厚いタコができ、手首にはテーピングの跡がうっすらと残っている。それは何千、何万回とラケットを振り、ボールを打ち返してきた勲章であり、世間から「テニスの天才少年」と持て囃される彼の、眩しすぎる光の裏にある重い代償でもあった。
奏の視線に気づいたのか、柊斗は手を止め、スッと視線を上げた。
「何見てる」冷たい声が響く。
「いや、考えてたんだ……」奏は口の中の食べ物をゆっくりと飲み込み、まるで学術討論でもするような口調で言った。「毎日それほどのストイックさと運動量を維持してたら、心臓への負担も相当なものだろうなって。生物学的な観点から言えば、心拍数が高すぎるのは、寿命を縮めることと同義だからね」
柊斗は目を細め、ナイフとフォークを置くと、体をわずかに前傾させ、圧倒的なプレッシャーとともに奏に迫った。
「で?」
「だから、俺みたいな低燃費のライフスタイルこそが、人類が長寿を追求する上での最適解だってこと」奏は顔色一つ変えずに結論を述べ、あろうことかミルクのグラスを手に取って一口飲んだ。
柊斗は彼をたっぷり10秒間見つめた後、突如、短く鋭い冷笑を漏らした。
「柏木奏、アンタ、そんなもっともらしい屁理屈をこねれば、自分の骨の髄まで染み付いた『弱さ』を誤魔化せるとでも思ってんのか?」柊斗は背もたれに寄りかかり、腕を組むと、その目を刃のように鋭くした。「太陽から逃げ、エネルギーの消費から逃げ、息をすることすら面倒くさがる。アンタが追求してるのは長寿じゃない。ただ死体の生活を前倒しで体験してるだけだ」
これ以上ないほど辛辣な評価だったが、奏は一瞬だけ動きを止めただけで、反論はしなかった。彼は長い睫毛を伏せ、瞳の奥をかすめた感情を隠した。
「……好きに言えばいいさ」奏はグラスを置き、立ち上がった。「ごちそうさま。協定通り、俺は部屋に戻って死体の役作りの続きをするよ」
彼が背を向けて立ち去ろうとした、まさにその次の瞬間。突然、抗えないほどの強い力で手首をガッチリと掴まれた。
いつの間にか立ち上がっていた柊斗の、温かく、少しザラついたタコのある掌が、鉄の万力のように奏の細い手首をホールドしている。二人の距離は一瞬にしてゼロになり、奏より頭半分ほど背の高い柊斗の影が、彼を完全に覆い隠した。
「誰が戻っていいと言った?」柊斗は身を屈め、奏の耳元に顔を近づけた。温かい息が、少し冷え切った奏の耳介を掠める。
奏は全身を強張らせ、不快そうに身を引いた。「……今度は何する気だよ」
「その錆びついた体には、強制再起動が必要だ」柊斗は手を離し、彼を見下ろすと、悪意に満ちた罰のような笑みを口角に浮かべた。「着替えてこい。10分後、俺のクラブの練習に付き合え」
奏は、まるでアラビアンナイトの絵空事でも聞いたかのように目を丸くした。「俺が? テニスクラブに? お前、頭おかしくなったのか? あんな場所、空気中まで汗臭いんだぞ!」
「行かなくてもいいが」柊斗は、先ほど棚の一番上に没収したポテトチップスとゲーム機を指差した。「なら、あれらの嗜好品も、アンタの部屋のクーラーの電源も、俺が完全に物理遮断する」
「君にそんな権利はないだろ!」奏は珍しく声を荒げた。
「ここでは、俺の言葉が絶対的な権利だ」柊斗は背を向け、スポンサーのロゴが入ったスポーツタオルを肩にかけると、有無を言わさぬ強引さで言い放った。
「さっさと動け。俺が一番嫌いなのは、『遅い奴』なんだよ」




