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第十六話:新たな旅立ち

1. 旅の準備


模擬戦の後、エドワードは俺たちを自分の執務室に招いた。

「まず、これを」

エドワードは、小さな札を二枚取り出した。

「これは?」

「騎士団の協力者であることを示す証明印だ」

エドワードは説明した。

「これを各地の騎士団に見せれば、信用を得やすくなる。何かトラブルに巻き込まれた時助けになるだろう」

「なるほど」

俺は札を受け取った。

確かに、騎士団の紋章が刻まれている。

「それと、伝達鷹のマーキングを受けてくれ」

エドワードは、友人だという召喚術師を呼んだ。

「こちらは、クレイン。召喚術師で、伝達鷹を扱える」

「よろしく」

クレインは気さくな男性だった。

「では、マーキングを」

クレインは手をかざした。

まず、ルーシェンにマーキングを施した。

淡い光がルーシェンの体を包み、すぐに消えた。

「次は、ファルマさん」

ファルマにも、同様にマーキングが施された。

「そして、榊さん」

クレインが俺に手をかざした。

だが、その瞬間。魔力が、弾かれた。

「え?」

クレインは困惑した。

「マーキングが……できない?」

「どういうことだ?」

エドワードが聞いた。

「分かりません。何かが、マーキングを弾いているんです」

クレインは首を傾げた。

俺は、内心焦った。闇の力が、魔法を弾いたのだ。

「まあまあ、私とファルマさんにマーキングができたんだから、十分でしょう」

ルーシェンが助け船を出した。

「榊さんは、私と一緒にいますから」

「そうですか……分かりました」

クレインは釈然としない様子だったが、引き下がった。

こうして、マーキングは完了した。

「定期的に連絡を取り合おう」

エドワードが言った。

「何かあれば、すぐに伝達鷹で知らせる。そちらから知らせたい事があれば、さっきの札を騎士団に見せれば、伝書鷹を借りられるはずだ」

「分かりました」

その時、部屋のドアが開いた。

現れたのは、第二騎士団の騎士団長だった。

三十代前半の男性で、精悍な顔つきをしている。

だが、その目には、どこか冷たいものがあった。

「エドワード、勝手なことをするな」

騎士団長は不機嫌そうに言った。

「騎士団の印を、勝手に渡すとは」

「勝手ではありません」

エドワードは冷静に答えた。

「宰相閣下の許可も得ています」

「何?」

騎士団長は驚いた表情を見せた。

「これから、宰相閣下のもとへ向かう予定でした」

「ぐっ……そうか」

騎士団長は、渋々といった様子で引き下がった。

だが、その目は、俺たちを睨みつけていた。

特に、俺に対する敵意が強い。

自分が勝てないエドワードと相打ちになったことが、気に入らないのだろうか。


2. 宰相との面会


俺たちは、再び王城へと向かった。

今度は、先に宰相が話を通しておいてくれたのか、スムーズに通された。

宰相の部屋に到着すると、宰相は相変わらずの半笑いで迎えた。

「ほほう、これはこれは。旅立つのですかな?」

「はい」

エドワードが答えた。

「では、これを」

宰相は、満足気に頷くと札を取り出した。

「王国内の通行証です。これがあれば、各地の街の出入りがスムーズになるでしょう」

「ありがとうございます」

「それと、資金も」

宰相は、重い袋を渡した。

「旅には金がかかりますからな」

俺は袋を受け取った。

かなりの重量だ。

「それと、連絡できるように、王城の召喚術師のマーキングも受けておいてください」

宰相は、王城の召喚術師を呼んだ。

現れたのは、老齢の召喚術師だった。

「では、マーキングを」

召喚術師は、まずルーシェンにマーキングを施した。

次に、ファルマ。

そして、俺。

だが、やはり、俺へのマーキングは弾かれた。

「これは……」

召喚術師は困惑した。

「何かが、マーキングを拒絶しています」

「別に構わん」

宰相が軽く言った。

「ルーシェンとファルマ嬢にマーキングができれば十分だ」

「しかし……」

「良いと言っている」

宰相の声には、有無を言わせぬ強さがあった。

召喚術師は、黙って引き下がった。

宰相は、俺をじっと見た。

その目は、一瞬だけ、鋭く光った。

まるで、全てを見抜いているかのような目。

俺は、背筋が寒くなった。

この男は、気づいているのか?

俺が、闇の力を持っていることを。

「では、気をつけてな」

宰相は、再び半笑いに戻った。

「なにか進展があれば、知らせるようにするからの」

「わかりました」

俺たちは、宰相の部屋を後にした。


3. 旅立ちの朝


翌朝、俺たちは早くに起きた。

今日が、旅立ちの日だ。

エドワードの家で、最後の朝食を取った。

「では、行ってきます」

俺はエドワードに挨拶をした。

「ああ、気をつけて」

エドワードは、ファルマを抱きしめた。

「ファルマ、無事で帰ってこい」

「はい……叔父様……」

ファルマは涙を浮かべた。

「必ず……帰ってきます」

「榊、ルーシェン、ファルマを頼む」

「はい」

「わかりました」

俺とルーシェンは頷いた。

「それと、これを」

エドワードは、俺に兜を渡した。顔の開いた兜だ。

「これは、私が若い頃に使っていた兜だ」

「いいんですか?」

「ああ。今の私には、もう必要ない」

エドワードは微笑んだ。

「お前に、使ってもらいたい」

俺は兜を受け取った。

皮製だが、重要な箇所には金属が使われており、軽くて丈夫そうだ。頭の防具は買っていなかったから助かる。サイズもやや大きいが許容範囲内だ。

「ありがとうございます」

「では、行きましょうか」

俺たちは、エドワードの家を後にした。

途中武器屋に寄り、調整してもらった鎧を受け取って装備する。

王都の東門へと向かう。

街は、まだ朝早くで、人通りは少ない。

だが、門には既に衛兵が立っていた。

「旅立ちか?」

衛兵が聞いた。

「はい」

「気をつけて」

俺たちは、門を抜け王都を出た。

振り返ると、巨大な城壁が聳え立っている。

「行きましょう」

ルーシェンが先導する。

不思議なことに、王都を出ると、監視の気配が消えた。

あの影は、あくまで王都の中での監視だったようだ。

「では、まずはストークレンに向かい、その後後研究所に寄りましょう」

ルーシェンが提案した。

「様子を見ておきたいですし」

「了解です」

俺たちは、来た道を逆に辿った。


4. ストークレンへ


夕方前、俺たちはストークレンの街に到着した。

「まだ少し早いですがここで一泊しましょう」

ルーシェンが提案した。

「明日、研究所に寄ってから、東に向かいます」

「分かりました」

俺たちは、また『銀の月亭』に宿を取った。

宿の主人は、俺たちを覚えていた。

「おや、また来てくださったんですか」

「ええ、少し旅をすることになりまして」

「それは大変ですね。どうぞ、ごゆっくり」

部屋に入ると、俺は疲れてベッドに倒れ込んだ。

「疲れましたね」

「まだ一日目ですよ」

ルーシェンが笑った。

「これから、もっと長い旅になります」

「そうですね……」

俺は溜息をついた。

だが、同時に、少し楽しみでもあった。

この世界を、もっと見て回れる。

様々な人に会い、様々な経験をする。

それは、元の世界では得られなかったものだ。

「……頑張りましょう」

ファルマが笑顔で言った。

「はい」

俺は頷いた。

宿で迷惑にならない範囲での闇の力の研究を行い、翌朝、俺たちは早くに出発した。

そして、東に向かって歩き出した。


5. 待ち伏せ


昼過ぎ、俺たちはファルマが襲われた森の街道に差し掛かった。

この道は、嫌な記憶が残る場所だ。

「ここは……」

ファルマの表情が曇った。

「大丈夫ですか?」

俺が聞くと、ファルマは小さく頷いた。

「はい……大丈夫です」

だが、その時。

前方から、声が聞こえた。

「よお、待ってたぜ」

「ひっ……!?」

現れたのは、三人の男たち。俺は怯えるファルマを咄嗟に背に隠した。

「前は名乗りも出来なかったな。俺はアルヴァスだ」

剣士の男が鞘に入った剣で肩をたたきながら名乗る。

「ミ、ミセルだ」

魔法使い、いや召喚術師と思われる男が少しどもりながらも名乗る。

「……ヴァルク」

言葉少なめに弓使いが名乗る。

アルヴァス、ミセル、ヴァルクか。

あの時の三人組だ。

「また、お前たちか」

俺は鋼の剣を抜いた。

「ああ、今度こそ決着をつけさせてもらうぜ」

アルヴァスは獰猛に笑った。

「前回は、ルーシェンのせいで撤退したが……」

「こ、今回は違うぜ!」

ミセルが自信満々に言った。

「こ、これで何とか対抗できるはず…!」

ミセルは、右腕に1mはあるカメムシみたいな淡く光る召喚獣を召喚した。

「え、なにそれ」

あまりに気持ち悪いビジュアルにちょっと引く。

「こ、こいつは反射虫!魔法を反射する召喚獣なんだ!」

「こ、これがあればルーシェンは魔法が使えないはず!使えば自分に魔法が返ってくるからな!」

ミセルはドヤ顔だ。

「なるほど」

ルーシェンは冷静に言った。

「興味深いですね」

「興味深い、どころじゃないですよ!」

叫びながら剣を構える。

アルヴァスも鞘から剣を引き抜き構えた。

「さあ、勝負だ!今は嬢ちゃんには手を出さないで置いてやる!あれからどれだけ強くなったか見せてみろ!」

今度こそ、決着をつける。

そして、この三人組の真意を、確かめる。


反射虫はんしゃちゅう


体長1mほどの、淡く光るカメムシに似た召喚獣。

背中に触れた魔法を反射する能力を持つ。

ただし反射できるのは、背中に直接触れた魔法のみであり、範囲の広い魔法を受けた場合は接触した一部しか反射できない。そのため、爆発や広域殲滅系の魔法には弱い。

また物理攻撃への耐性は低く、武器による攻撃で容易に倒される。

この性質から使いどころは難しく、魔力消費もそれなりに多いため、使用者は少ない。


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