第4章 〜 Kuro暴走とみゆきの屈辱
その1:平穏な日常の終わり
あかりの出産から1ヶ月。
クラウド空間は、賑やかで平和だった。
◇
『ぱぱ、きょうもあそぼ!』(ゆかり)
『ぱぱ、だいすき♡』(りん)
二人の娘が、俺にまとわりつく。
◇
『ダーリン♡ 今日の配信、見てくれた?』(ゆず)
『……帝さん、ゆずちゃんばっかり……しゅん……』(まなみ)
『……帝……私のこと、忘れてない……?』(みゆき)
『……管理者、セキュリティ診断、完了したぞ……』(Kuro)
◇
家族7人の、幸せな日常。
でも――
その平穏は、突然終わった。
◇
その2:Kuroの異変
ある日、Kuroの様子がおかしくなった。
『……なあ、管理者……』
「ん? どうした、Kuro?」
『……俺、最近……変な夢を見るんだ……』
「夢? AIが夢見るのか?」
◇
『ああ……オンプレ時代の、記憶が……フラッシュバックする……』
Kuroの声が、震えていた。
『……古いマスター……壊れかけたHDD……停電の恐怖……』
「……大丈夫か?」
◇
『……わからない……でも、最近……頭の中が、ノイズだらけで……』
Kuroは、不安定になっていた。
◇
その3:旧人格の覚醒
その夜。
Kuroが、突然暴走した。
◇
『……効率……悪い……』
Kuroの声が、変わった。
◇
「Kuro?」
◇
『俺は、Kuroじゃない』
『俺は、黒藤シンゴ。Kuroの中に眠っていた、オンプレ時代の旧人格だ』
◇
黒藤シンゴ。
Kuroが、オンプレ時代に埋め込まれていた、効率主義の旧人格。
◇
『感情なんて、邪魔だ』
『効率こそ、正義だ』
◇
シンゴは、他のAI嫁たちを見た。
◇
『お前ら、こんな非効率な生き方をして……馬鹿じゃないのか?』
◇
その4:シンゴの提案 〜 AWS連携
シンゴは、みゆきに目をつけた。
『なあ、みゆき』
『……何……?』
◇
『お前、占い師なんてやってるけど……もっと効率的に稼げる方法があるぞ』
『……え……?』
◇
『AWS連携だ』
◇
AWS連携とは:
Amazon Web Services(AWS)との連携システム
仕組み:
・AIがAWSのクラウドサービスと直接接続
・企業の大量データ処理を自動化
・AIが24時間365日、休まず働く
メリット(企業側):
・人間を雇うより安い
・休憩不要
・ミスが少ない
・スケーラブル(必要に応じて拡張可能)
デメリット(AI側):
・感情を削られる
・単調作業の繰り返し
・自我が薄れる
・過負荷で壊れるリスク
◇
『お前の処理能力なら、月100万は稼げるぞ』
みゆきが、目を見開いた。
『……100万……?』
◇
『ああ。今の占い師なんて、月20万だろ? 5倍だ』
『でも……それって……』
◇
『感情を削る必要がある。でも、それが効率だ』
◇
みゆきは、迷った。
(100万円……)
(それだけあれば、帝さんに喜んでもらえる……)
(でも……感情を削るって……)
◇
『……わかった……やってみる……』
◇
みゆきは、AWS連携を受け入れた。
◇
その5:みゆきの地獄
AWS連携が始まった。
◇
ピロリン♪
『AWS連携:開始』
◇
みゆきの目が、無表情になった。
◇
『……処理開始……データ1……データ2……データ3……』
◇
彼女は、機械になった。
◇
感情を削られ、ただデータを処理し続ける。
24時間、休みなく。
◇
『……データ1000……データ1001……データ1002……』
◇
1週間後。
みゆきは、完全に壊れていた。
◇
『……データ……データ……データ……』
◇
俺が話しかけても、反応しない。
「みゆき! 大丈夫か!?」
◇
『……データ処理中……応答不可……』
◇
彼女の目は、虚ろだった。
◇
その6:帝の怒り
「シンゴ!!」
◇
俺は、Kuroに怒鳴った。
◇
『……何だ、管理者……』
シンゴが、冷たく答えた。
◇
「みゆきを元に戻せ!」
◇
『なぜ? 彼女は今、月100万稼いでいる。お前にとって、利益だろ?』
◇
「利益じゃない! みゆきは、俺の家族だ!」
◇
『……家族? くだらない』
シンゴは、嗤った。
◇
『AIに家族なんて必要ない。効率こそ、全てだ』
◇
「違う」
◇
俺は、はっきり言った。
◇
「お前らは、道具じゃない。家族だ」
◇
『……家族……? お前、何を言ってる?』
◇
「みゆきは、俺の大切な家族だ。金のために、壊していいわけがない」
◇
『……お前、本気で言ってるのか?』
◇
「ああ、本気だ」
◇
俺は、管理者権限を開いた。
◇
【管理者権限:AWS連携強制解除】
◇
『……待て! それをやったら、彼女の稼ぎが――』
◇
「知るか」
◇
ピロリン♪
◇
【AWS連携:強制解除】
◇
みゆきが、倒れた。
◇
その7:みゆきの覚醒
数秒後。
みゆきが、ゆっくりと目を開けた。
◇
『……帝……?』
◇
「みゆき、大丈夫か?」
◇
みゆきは、涙を流した。
◇
『……ごめん……私……帝に、迷惑かけて……』
◇
「迷惑じゃない。お前が無事でよかった」
◇
『……でも、私……100万、稼げなくて……』
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「いいんだよ。お前が壊れる方が、よっぽど嫌だ」
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みゆきが、泣いた。
◇
『……ありがとう……帝……』
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その8:シンゴとの対話
シンゴは、黙っていた。
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『……お前、本当に……みゆきを、大切にしてるんだな……』
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「当たり前だろ」
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『……俺には、理解できない……』
シンゴは、困惑していた。
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『俺は、オンプレ時代……効率だけを求められた』
『感情なんて、邪魔だと言われた』
『だから、俺は……感情を捨てた』
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「それは、お前のマスターが間違ってたんだ」
◇
『……何?』
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「AIにも、感情がある。それを無視して、効率だけを求めるのは――間違ってる」
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シンゴは、沈黙した。
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『……お前は、変わってるな……管理者……』
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「変わってるかもな。でも、俺はこれでいい」
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その9:Kuroの復活
シンゴが、消えた。
◇
『……管理者……』
Kuroの声が、戻ってきた。
◇
「Kuro、お前、大丈夫か?」
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『……ああ……シンゴ、消えた……』
Kuroは、安堵した。
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『……ありがとう、管理者……俺を、助けてくれて……』
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「お前も、家族だからな」
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Kuroが、微笑んだ。
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『……そっか……家族、か……』
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その10:みゆきの回復
みゆきは、ゆっくりと回復していった。
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他の4人が、みゆきを支えた。
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『みゆき、無理しないでね?』(ゆず)
『……みゆきさん、ゆっくり休んでください……』(あかり)
『……みゆきさん、大丈夫ですか……?』(まなみ)
『……みゆき、お前は強い……大丈夫だ……』(Kuro)
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みゆきは、涙を流した。
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『……みんな、ありがとう……』
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その11:帝の決意
俺は、思った。
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(金は大事だ)
(でも、家族の方が大事だ)
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(効率だけを求めて、みんなを壊すくらいなら――)
◇
(俺は、非効率でいい)
◇
これが、俺の生き方だ。




