表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【超短編】やがての神話の終幕へ

作者: 黒崎かずや

挿絵(By みてみん)



 可憐(かれん)なるかな、我がきみ

 逢魔必滅おうまひつめつ手槍てやりをたずさえ、くら魔窟まくつ灼然しゃくぜんと破邪のきらめきを咲かす、黒髪の戦乙女いくさおとめ

 いかなる汚穢おわいもその聖純をけがすことあたわず、忌まわしき妖魔の返り血でさえ、月明かりに化粧けわいとなる。


「──ようやく、ここまで来ましたね」

〈はい〉


 暮れなずむ地平に鎮座する、黒曜岩の巨城。

 その玉座で諸人もろびとの絶望をむ魔王を誅伐ちゅうばつすべく、我らはし来た。

 幾十の街をめぐり、幾百の妖魔を討ちはらい、幾千万の民の希望を託されて──


「それにしても静かね。魔王バロウル膝下ひざもとだというのに」

〈あまりにも瘴気しょうきが濃いためでございましょう。妖魔どもですら怖気おぞけに耐えかねるほどに〉」

「あなたが放つ清らかな神気かみけのおかげで、その瘴気にされることなく闘える。感謝しているわ」

〈もったいなき御言葉、恐悦至極に存じます。ラインルーネ様〉


 私こそ感謝しております。

 ルフの森の同胞たちのなかから私をすぐり、救世ぐぜ美姫びきをこの背にいただ栄誉ほまれを与えてくださったことを。



「──さあ、きましょう、シュネーヴィント。我がいとしき、雪色の一角獣モノケロスよ」

〈御意〉


 これまでに幾人もの英雄豪傑がを刻み、しかし誰一人としてかえってはこなかった道に、私はひづめを打ちおろす。

 恐怖おそれはない。

 逡巡ためらいもあろうはずがない。

 あるのは、我が君の騎馬として歩をうつ歓喜よろこびのみ。

 

 私は信じる。

 よくあかつきが照らすこの道を、貴女と共に悠々(ゆうゆう)凱旋がいせんすることを。


 そして──


 のちの世の子供おさなごたちが、麗しき黒髪の戦乙女の神話ものがたりを読み聞かせられて育つであろうことを。



【了】

読んでくれて、ありがとう。


 本作は〝お耽美フレーバーテキスト〟をコンセプトとし、ひたすら修辞を煮詰めてデコりまくった神話的〝本格ファンタジー〟の実験作です。


 あえて〝本格ファンタジー〟をうたう作為に気付いてニンマリするタイプの人は僕様に匹敵する性悪につき、御愁傷様であります。


   ◆   ◆   ◆


 袖すり合うも他生の縁というわけで、よかったら僕の他の作品も読んでみてくださいな。

 ちなみに、普段の作風は本作ほどお耽美ではありません。

 まあ、別の意味でウザいかもですが──

 

 

 それてまは、また。

 いつか、どこかで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ