第九話 任務完了と疑問
戦闘を開始して二時間後、ティラノサウルスは
討伐された。今回の件による死傷者数はゼロ。
ただ、建物が一部倒壊しているため、倒壊した建物の
再建には丸一週間掛かるであろう。
「おつかれなのだ」
「あぁ、おつかれ」
「にしても、吹き飛ばされた時は死ぬかと思ったのだ」
それは無謀に突っ込んだ夜野の自業自得だろ
と思いつつ、苦笑いをする。
「怪我はないか?」
「平気なのだ!!」
「そうか」
開花はほっとする。
倒壊した建物の復興は王権と生命班の協力の元、対処してくれるらしい。
余談ではあるが、この宇宙国は立憲君主制だ。
国民、貴族、王と階級段階は全部で3つあり、
働いている人の報酬のうちの20%が税金になる。
税金は主に街の復興や国民の要望に応じた施設の設立、
医療、子育て支援、介護支援、王の生活費に均等に
使われる。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「了承なのだ!!」
ふたりはヘリに乗ったのち火星 生命班本拠地に
帰るようだ。
ー数時間後ー
「まもなく到着します」
ヘリの操縦士に声を掛けられ、ふたりは降りる準備を
した。無事、火星 生命班本拠地 ヘリポートに
到着した。
その後、ふたりは任務を完了した事を神爪に
報告した。
ふたりは司令室を出ようとした時、開花は神爪に
呼び止められた。
「どうした?」
開花は問う。
「お前のマイクロチップを点検させて欲しい。
後で調整室へ来い」
「承知した」
開花は了承の返事をしたのち自分の部屋に
着替えに行く。
マイクロチップ、それは現文明社会にとって
ごく普通のことだ。
マイクロチップ内にはその人自身の個人情報が
入っている。
さらにマイクロチップの中に生命術式の式を
入れることも出来る。
生命班に入隊する際、必ず3種の生命術式を入れる
ことは絶対条件になっている。
その中で特に重要視されるのは
再生[リジェネレーション]だ。
再生の術式を入れることによりマイクロチップを
入れた人の生死に関わる時、自動的に発動される
ようになっている。
だからといって軽い怪我や、死亡しない程度の
重症をしてしまっても発動されない。
そのため、人為的な再生の発動が必要になるのだが、
開花、神爪、水光、夜野、宇宙には例外が存在する。
それは自分の意思でマイクロチップから発動出来るということだ。
普通の生命班員はマイクロチップからの発動は
不可どころかできないに等しい。
しかし、開花ら五人は意思でマイクロチップ内にある
生命術を発動出来る。
この詳細については現在、調査されている。
開花は着替えながら
「後で五人で紅茶でも飲もうかな」
と独り言を言っていた。
しかし開花自身、心の中では少しモヤモヤしていた。
内容はダークヴァイヤンス化した生命体への疑問だ。
なぜいきなりダークヴァイヤンス化するのか、
その原理はなんなのだろうか
原因については悪意者が生命体を暴走される生命術を
宇宙に放っていると仮定されているが
本当にそうだろうか。
そう疑問を抱きつつ開花は調整室へ向かうのだった。