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連載候補短編

メイド雇ったら大嫌いなクラスメイトが来たのでVTuberデビューさせる

作者: 日之影ソラ

「――今日の配信も来てくれてありがとうー! また次の配信も期待しててね~ それじゃバイバーイ!」


 ディスプレイから流れる音声と映像に、多くのコメントが手を振っている。

 かくいう俺もその一人。


「はぁ、やっぱりⅤはいいなぁ~」


 最近流行りのVTuberに俺はすっかりはまっていた。

 二次元のキャラクターでありながら、どこか現実の人間味を感じさせる話し方。

 アニメや漫画のキャラと違って、相手とのコミュニケーションもとれる。

 何よりすごいのは、誰かが書いたイラストに目の前で命が吹き込まれていることだ。

 アニメとかも好きだし凄いと思う。

 けど俺は、誰より身近に感じっれるVTuberの存在に惹かれた。


「俺もⅤのデザイン担当したいなー」


 一応これでもそれなりに活躍しているイラストレーターだったりする。

 カードゲームのイラスト、ラノベの挿絵、いろいろと担当してフォロワー数も多い。

 ファンの中にはⅤのイラスト書いてくれーと言ってくれる人もいる。

 俺だってやりたい。

 でも、Ⅴを作るってそう簡単じゃない。

 まず一人じゃ作れない。

 イラストは俺が描けても、それを動かすことは自分じゃできなかった。

 そして一番の問題は中身、声の担当だ。

 あいにく現実にも友達が少ない俺にとって、個人的に誰かに頼むとか一番ハードルが高かった。


「はぁ……あの時の依頼断らなければなぁ……」


 実は以前に一度、大手から声がかかったことがある。

 その時はあまり興味がなくて断ってしまった。

 VTuberの存在すら知らなかった俺は、その時初めてⅤの世界を知った。

 そしてドはまりした。

 あの時に戻れるならジャンピング土下座してでもお願いしたのに。


「……いや、駄目だな」


 どこかに所属して作りたいわけじゃない。

 それじゃ商業的な意味合いが強くて、俺が求めているⅤは作れない。

 俺は自分が好きなⅤを自分の手で作りたいだけなんだ。

 売れる売れないは正直どっちでもいい。

 ただ、作りたいだけだから。

 そうなると結局、自分で必要な物や人材を集めるしかないわけだが……。


「無理ゲーすぎ」


 声以外の担当者は集められなくもない。

 問題は声だ。

 声優にオファーするにもお金がかかるし、そもそも受けてくれないだろう。

 ほとんど趣味でやりたいだけだからな。

 声優さんなんて起用したら、きっと思い通りには進まない。


「やっぱり無理だな……あ、メール来てるし」


 締め切り催促のメールだった。

 ここのところ案件がたまっていて忙しい。

 学校に通いながらは正直厳しいな。

 授業中は何もできないし、帰宅してから宿題とかテストとか……まーめんどい。

 そこそこ収入もあるし、やめて専業になってもよかったんだが……。

 親が学校はちゃんと卒業しろとうるさい。

 正論だから反論もできなくて、結局二年の今までしっかり通っている。

 

「明日までにこれとこれ……終わるか? いや終わらせないと」


 ゴールデンウィークも明日で終わって、明後日から学校だ。

 ここで一気に終わらせないと地獄を見ることになる。

 死ぬ気でやれ、死ぬ気で!


 ぐぅ~


「……飯が先だな」


 そういえば朝から何も食べてなかった。

 適当に冷蔵庫を開ける。

 昨日コンビニで買った総菜がまだ残っているから適当に食べる。

 

「飽きたなぁ……コンビニ」

 

 一人暮らしの男性はよくあると思う。

 自分で作るのが面倒で、できあいの物に頼っている。 

 その結果、飽きる。

 コンビニばかりで味気ない食生活。

 と、俺の場合はそれ以外もいろいろと大変だ。

 仕事で手いっぱいで家のことがほとんどできない。

 掃除、洗濯、料理……。

 別にさぼってるわけじゃないぞ。

 本当に時間がないんだ。

 

「メイドとか雇えないかな」


 そういうサービスがあるとか聞いたような……。

 試しにネットで検索してみると、近場でメイドレンタルのサービスを見つけた。

 金額はそれなりにするけど十分払える。

 

「雇おうかな……」


 真剣に悩む。

 このまま家事を放置していると、この家がゴミ屋敷になりそうだ。

 食生活が悪いと体調も崩しやすい。

 なんだか最近身体がずっとだるいし、そろそろ命の危険を感じている。

 知らない人を家に入れるのは正直抵抗あるけど……。

 お金で雇った人なら相応の距離感を保ってくれるだろう。

 それにメイドって、ちょっと憧れるし。


「よし! ぽちるか」


 メイドを雇った。

 せっかくなので明日からお願いすることに。

 ゴールデンウィーク最後の日にメイドを雇うなんて、俺もなかなかやるじゃないか。

 とか言いつつ、目の前の締め切りを倒すことに専念した。

 

  ◇◇◇


 翌朝。


「……終わったぁ」


 ガサガサになった声で呟き、椅子にもたれかかる。

 思った以上に時間がかかって、朝までコースになってしまった。

 飯と風呂以外は休憩していない。

 さすがに体力の限界だ。

 一度寝て……。


 ピーンポーン!


「あ? なんだよこんな時間に……」


 俺はとぼとぼと玄関に向かった。

 新聞の勧誘か?

 いや、一度も来たことないな。

 何か忘れてるような……。

 二回目のインターホンが鳴り響く。


「はいはい、今開けま――え?」 

「なっ……」


 俺は驚いた。

 もう目が覚めるくらい驚かされた。

 玄関を開けたら、そこにはメイドさんが立っていたんだ。

 そりゃ驚くよね?

 メイドを雇ったことは思い出したよ。

 驚いたのはそこじゃないんだ。

 そのメイドが、予想外の人物だったことに、俺はビビるくらい驚いた。


鳴世(なるせ)……文歌(ふみか)?」

沖田創栄(おきたそうえい)!?」


 俺が雇ったメイドはクラスメイトだった。

 それもただのクラスメイトじゃない。


「なんでお前がが……」

「どうしてあんたが……」


 お互いに犬猿の仲の……大っ嫌いなクラスメイトだった。


  ◇◇◇


「なぁなぁ! 今期のアニメ最高だぞこれ」

「見たよ。というか何回も聞いたし」


 俺は数少ない……友達と学校で他愛もない話で盛り上がっていた。

 仲良くなれたのはアニメ好きだったから。

 俗にいうオタクだ。

 結構ハードな話題にもついてきてくれるから、こいつらとの会話は楽しい。


 だけど……。


「ふっ、またくだらない話してるのね」

「あん?」


 隣の席から毎度のように悪態が飛んでくる。

 鳴世文歌、俺の隣の席に座っているクラスメイトで、俺の天敵。


「なに? キモイから話しかけないでくれる?」

「そっちが先に声かけてきたんだろ? ツンデレか?」

「は? いつ私があんたにデレたのよ? 脳みそ沸いてるんじゃない?」

「なんだとこの野郎」

「なによ!」


 という感じに、顔を会わせる度に喧嘩になる。

 それも仕方がないのだ。

 なぜかは知らないが、彼女はアニメや漫画と言った創作を快く思っていない。

 敵視しているといっても過言じゃない。

 対する俺は根っからのオタクで、好きすぎてイラストの勉強してプロになったまである。

 そんな俺たちが敵対するのは必然だった。


 こいつとだけは仲良くなれない。

 お互いにそう思っていただろう。


  ◇◇◇


「そんなお前がメイドねぇ……」

「……」

「おい、無視するなよ。ご主人様が話してるんだぞ」

「誰がご主人様よ!」


 彼女は叫ぶ。

 部屋に響く甲高い声が耳をキーンと振動させる。

 これはさすがに予想外だった。

 メイドを雇って、それがクラスメイトだったというだけでも驚きなのに。


「鳴世がメイドねぇ……」

「キモイ目で見ないでくれる?」

「その格好でここまで来たのか?」

「だから何?」

「恥ずかしくなかったの?」

「うっさいわね! 恥ずかしいに決まってるでしょ!」


 逆ギレされた。


「仕方ないじゃない! これがお店のルールなんだから!」

「はいはいわかった。そんなに声を荒げるなよ。近所迷惑だろ?」

「誰のせいだと思ってるのよ……はぁ、もう最悪。よりにもよってこいつ?」

「こっちのセリフだ」


 俺だってこんなやつを家に上げたくなかった。

 だからって玄関先で追い返すわけにもいかないし、お金も払ってしまっている。

 なんで前払いなんだよ。

 しかも三か月分一気に!


「はぁ、仕方ない。お前で我慢してやるから家事してくれ」

「は? なんであんたのために」

「お金、全額払ってるんだけど?」

「う……」

「仕事なんだろ? だったらせめて金額分は働いてくれ」


 開き直ってこいつをこき使おう。

 学校じゃ散々俺たちのことを馬鹿にしてくれたんだ。

 ここの家主は俺で、雇い主も俺だからな。

 

「さぁ働け!」

「こいつ……マジでむかつく」


 とかいいつつも彼女は立ち上がり仕事に取り掛かろうとする。


「何からすればいいのよ」

「そうだな。先に掃除と洗濯、終わったら昼飯作ってくれ」

「わかったわ。って汚いわね。自分で掃除してないの?」

「してたらメイドなんて雇わない」


 彼女は呆れた顔して作業に取り掛かった。

 テキパキと部屋の中を掃除して、たまっていた洗濯物も片づけていく。

 随分と手際がいい。

 ささっと二つとも終わらせると、昼食の支度を始めた。

 材料は予め買ってきてくれていたらしい。


「はいどうぞ」

「……美味いな」


 出された昼食を食べて、思わず素直な感想が漏れてしまった。


「お前……なんでこんなに手際いいんだ? このバイトずっとやってるのか?」

「そんなわけないでしょ。私も一人暮らしだから家のことは自分でやってるの。バイトだって最近始めたばかりだし」

「ふーん、なんでバイトしてるんだ?」

「は? 馬鹿なの? そんなのお金のために決まってるじゃない」


 それはそうなのだが……。

 こいつはいちいち馬鹿にしないと気が済まないのか?


「なんでそんなに金が要るんだよ」

「……別に、あんたには関係ないでしょ」

「それはそうだ」


 表情が明らかに曇った。 

 たぶん聞かれたくないことでもあるんだろう。

 こいつのことは嫌いだけど、踏み入ってほしくない場所に土足で入り込む気はない。

 俺だってされたら嫌だからな。


「ご馳走様。美味かったよ」

「……そう」


 そっけない返事だな。


「じゃあ俺は部屋にいるから、片付けとか残りやっといてくれ」

「言われなくてもそうするわ」


 相変わらず態度が悪いな。

 イラっとしたが、美味い料理に免じて許してやろう。

 しかし……あいつ料理もできたのか。

 家事全般が得意で学校でも人気者だし、容姿も正直かなりいい。

 男子生徒の中でも人気が高い。

 何より声が綺麗なのがむかつく。

 声優やってもいいレベルで声が通るし魅力的だ。

 

「完璧人間かよ。腹立つな」


 いっそうあいつのことが嫌いになった。

 俺はパソコンの画面と向かう。

 昨日から徹夜で終わらせたものを納品して、作業完了のメールを送信する。

 これで仕事は終わりだ。

 急ぎの連絡もないし、今日はぐっすり眠れるぞ。


「ふぁーあ……あいつが帰ったら寝るか」


 俺が選択したのは四時間コース。

 そろそろ終わりの時間だ。

 俺は時計を見る。

 すると――


「入るわよ」

「……ノックくらいしろよ」

 

 鳴世が俺の仕事部屋に入ってきた。


「なんだよ?」

「やること全部終わったから報告に来たのよ」

「そう。お疲れ様。終わったなら帰ってくれて大丈夫だ。また明日よろしく」

「……」


 なんだか彼女の様子が変だ。

 部屋をきょろきょろ見ているし、俺のパソコンの画面も気になっている。

 早く帰ってほしいんだけど……。


「どうしたんだよ」

「……あんたってイラストレーターだったのね」

「ん? ああ、そうだよ。学校の人には言うなよ? めんどくさいからな」

「ふーん……」


 彼女は俺のパソコンをのぞき込んでくる。


「この沖たんっていうのがペンネーム?」

「そうだけど?」

「……ふっ、ダサい名前!」

「くっ、しかたねーだろ! 最初に適当につけただけだからな!」


 俺だってまさかこの名前でデビューするとは思ってなかったよ。

 けど今さら変更できないし、ちょっと愛着沸いてるし。


「なるほどね。あんたみたいな学生がメイド雇える金なんて持ってるの意外だったけど、そういうことだったのね。納得したわ」

「だからなんだよ! 終わったならもう帰れ!」

「言われなくても帰るわよ。じゃあね、沖たん先生」


 ニヤっと笑う。

 完全にからかっている顔だ。

 こいつに知られたのはまずかったかもしれない。

 やっぱりむかつく。

 いい声で馬鹿にしてくるのが尚むかつく。

 けど何度聞いてもいい声なんだよなぁ……。

 

 ん?

 いい声?

 声……声!?


「待て鳴世」

「なによ? もう帰るんだけど」

「……お前、なんでバイトしてるんだ?」

「は? またその質問? お金にためだって言った――」

「そうじゃなくて、なんでバイトできてるんだよ」

「――!?」


 鳴世の表情が変わる。

 どうやら俺が言っている意味に気づいたらしい。

 俺はにやりと笑みを浮かべて続ける。


「うちの学校の校則、知ってるよな? バイトは禁止だ」

「……だから何よ」

「校則違反だぞこれ。しかもやってるのは他人の家にメイドとして訪問するサービスだろ? 学校の奴が知ったらどう思うだろうなぁ」

「……あんた、私を脅してるの?」

「別にそんなつもりじゃない。ただ事実を確認してるだけだ」


 鳴世の表情がどんどんこわばっていく。

 こういう悪役っぽいセリフ、案外嫌いじゃないな。

 相手が嫌いな奴だから余計にか?

 

「あ、あんただってバイトしてるじゃない!」

「俺のはバイトじゃない。趣味の延長だし、最初から学校には許可を取ってる」

「う、噓でしょ?」

「嘘じゃない。ちゃんと学校からもらった特別許可証がある」


 通常、俺の通う学校ではバイト禁止だ。

 ただし例外はある。

 俺の場合、もともと働くつもりで始めたことじゃない。

 趣味をやっていたらお金が入っただけ。

 それに俺は成績も悪くないし、学校での態度もよくしている。

 先生に相談したらさらっと許可が下りたよ。


 でも、彼女は違う。

 許可なんて取ってないし、取れるはずがない。


「このバイト、確か二十歳以上しか受けられないんじゃなかったか?」

「な、なんであんたがそれを……」

「募集要項あったからなんとなく見たんだよ。そこに年齢厳守ってあった。でもお前は違うよな? 察するに、年齢を偽ってるんだろ?」

「っ……」

 

 この反応、どうやら図星らしい。

 学校でも人気者な彼女が年齢を偽り、禁止されているバイトをしていて、しかも普段から馬鹿にしているオタク趣味満載のメイド姿でご奉仕している。

 一つでも知られたらきっとすごい反響だろうな。

 そこまでしてお金がほしいのか。

 よほどの理由があるのかもしれない。

 が、俺にはそんなことどうでもいい。


「あんたも……秘密あるじゃない。イラストレーターだっていう」

「それを知られたところでなんだ? 多少の影響はあっても、お前ほどじゃない。対等な秘密とは言えないな」

「くっ……どう」

「ん?」

「どうすれば黙っててくれるの?」


 俺はにやりと笑う。

 もはや完全な悪役だな。

 彼女もようやく自分の立場を理解したらしい。

 どちらが上で、下なのか。

 主人とメイドという立場が、仕事を越えてしまった瞬間だ。


「別に、ただお願いを聞いてほしいなって」

「お、お願い?」

「ああ、お前にやってもらいたいことがあるんだ。その身体で」

「か、身体!?」


 彼女は自分の身体を自分で抱きしめる。

 俺から隠すように。


「あ、あんた私に何をさせて……何するつもりなのよ!」

「安心しろ。悪いことじゃない」

「悪いことに決まってるでしょ!」

「お前には――」


 俺は椅子から立ち上がり彼女を詰め寄る。

 後ずさる彼女だが、部屋の壁にぶつかって逃げ場がない。

 そんな彼女に迫って、ガシっと肩をつかむ。


「わ、私まだキ、キスだってしたことないのに」

「VTuverデビューしてもらう!」

「……え?」

 

 なぜか怯えていた彼女だったが、キョトンとした顔を見せる。


「VTuver?」

「なんだお前、VTuver知らないのか」

「し、知ってるわよそれくらい! なんで私が、え? 私にVTuverになれって言ってるの? それがお願い?」

「それ以外に何があるんだ。まさかエロいことでも想像したのか? お前って意外とむっつりだな」

「ち、違うわよ馬鹿!」


 うるさいな。

 けど、この罵り声も悪くない。

 聞く人が聞けば確実にそういうはずだ。

 

「なんで私なのよ」

「それはもちろん、お前の声が綺麗だからだ」

「……え?」

「性格は悪いけど」

「ひっぱたくわよ、あんた」


 冷たい視線を向けられたのでとっさに下がった。

 本当に叩かれそうだったぞ。

 怖い怖い。


「お前の声はかなりいい。俺がイメージするキャラの声にもぴったりなんだよ」

「……あんたの描いたキャラの中身になれってことよね」

「ああ、そういうことになる」

「そんなの嫌よ。なんであんたなんかに」

「秘密……」

「うっ……卑怯よ。やっぱり脅してるじゃない」


 脅しじゃなくて忠告しているんだよ。

 親切な忠告を。

 と、言葉ではなくニッコリと笑顔で伝えた。


「言っておくがな。この話はお前にも得があるんだぞ?」

「は? どこがよ」

「知ってるか? VTuverって儲かるんだぞ」

「……そうなの?」


 食いついたな。

 よほど金に困っていると見える。

 これは堕ちるまで一押しだな。


「ああ。人気によるけど、例えばフォロワーこのくらいで月にこのくらいは……」

「え、嘘、マジで言ってる?」

「ああ、マジだぜ。俺はそういう話を直接聞いたこともある。業界には知り合いが多いからな」

「現実じゃボッチなのに?」

「お前ぶん殴るぞ」


 今度は彼女が距離をとった。


「やってくれるなら、V活動で得た収益の七割をやる」

「七割も?」

「ああ。俺の取り分から七割はお前にやる。別に俺はお金がほしくてやりたいんじゃないからな」

「七割……七割……」


 さっき教えた金額の七割を計算しているな。

 頭の中はお金でいっぱいだろう。

 あとほんの少しだ。


「制作含む編集はこっちでやる。お前は声だけやってくれればいい。それで七割だ。悪くないだろ?」

「……」

「声だけなら他人にばれる心配も薄いし、そういう面でも安心できる。誰もお前がVTuverやってるなんて思わないだろうしな」

「た、確かにそうね」


 彼女は納得しかけている。

 あとはもう、一言尋ねればいい。


「どうする?」

「……わかったわ。やってやるわよ」


 よし、堕ちたな。

 俺は心の中でガッツポーズをした。


「で、でも勘違いしないでよね! お金のために協力するだめで、心からあんたに協力するつもりはないんだから!」

「……ツンデレじゃん」

「誰がいつデレたのよ!」


 こいつアニメの世界からそのまま出てきたキャラクターじゃないよな?

 時々疑いたくなるレベルで二次元に近いぞ。

 そういうところも、俺がイメージするキャラ像に近い。

 一番ネックだった声を確保できた。

 これでついに、俺が求める最高のVTuverづくりがスタートできる。


「これからよろしく頼むぜ。鳴世」

「ふんっ、ちゃんとお金は払いなさいよね……沖田君」


 この日、お互いの秘密を知った俺たちはVTuverを目指す仲間になった。

 クラスの大嫌いな隣の席のあいつが、俺のキャラクターの声になる。

 こんな奇跡があるんだな。

 今でもこいつのことは嫌いだけど……。


「ワクワクするよ」


 期待で胸がいっぱいだ。

 この先、俺たちがどうなっていくのか。

 今から楽しみで仕方がない。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

一応連載候補です。

連載するかどうかは検討中です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 嫌いの女の子+メイド この組み合わせ好き、でもなぜVTuberになるは理解できない。
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