第四話 魔物の森
三歳になった。
この頃から僕は外に出歩くことが多くなった。
魔法が使えるようになり、そこそこ強い魔物と出会わない限り危険はないからだ。
この世界の常識では、五歳の洗礼を受けなければ魔法は使えないが、なぜか僕は使える。多分、魔法神の加護をすでにもらっているからだと思う。
「今日はこのくらいにしておくか。」
今日も領地の魔物の森に来ている。ここは、まだ人が立ち寄っていない危険な地域のため、重要な鉱石であったり、植物がたくさん生えている。
「まさか魔法でここまでできるとは。大体の調味料が手に入ったよ。」
領地が最南端ということもあり、海にも面している。そのため、生活に大切な塩は簡単に手に入った。それでも、この時代の人は塩田で作っているためそれなりに時間がかかるんだよね。
僕の場合は、土魔法で作った甕に海水を入れて魔力を流し込むと真水と塩に分離する。理由はわからない。でも、イメージするとその現象が起こる。それが魔法だと思い込むことにしたよ。
「砂糖はサトウキビが森にたくさん生えてて簡単に手に入ってよかった。」
まさかの魔物の森にはサトウキビが自生していた。南の地域優秀すぎる。
「一番の難敵はこいつらだったな。でも、醤油と味噌は日本人にとって欠かせないでしょ。」
醤油と味噌は日本人の味だと思っている。ただ、日本人でも醤油と味噌の作り方が分かる人は少ないだろう。
「大豆が原料ってことはわかってたけどここまで長かったな。」
大豆が原料でそこに塩を加えてまではわかっていた。でもそこからわからなかった。まさか、蒸して炒って茹でるなんて。まぁ、できたからいいけど。
「これは、自分では味見できないから父上や母上にこっそり渡してみたけど、あの時は本当にもうだめかと思ったよ。」
時間が有り余っていたため、出来心でお酒を造ってしまった。
魔物の森には南国ならではのフルーツがたくさん自生していた。その中にまさかのブドウも自生していたためワインを作った。僕はまだ三歳のため、お酒を飲めないから、味が分からない。そこで、両親が晩酌しているときにこっそり僕が作ったワインを入れて渡した。
「ん!?なんだこのワインは!?先ほどまでのワインと明らかに味が違う!!」
「確かに!このワインはどこの産地のものかしら。わかる人はいる?」
両親がすごくおいしいといって飲んでくれた。ただ、勝手に入れたため使用人たちはずっと同じワインだと思っていて、パニックになっていた。その日は、僕の両親と使用人で夜中までワインを探し回ってたほどだ。結局、保管しているうちにボトルの上層と下層で味の変化があったことで終息していた。お父様、お母様本当にごめんなさい。
「あんなにおいしいなんてちょっと気になるな。僕も前世では、高いお酒は変えなかったものの飲むこと自体は好きだった。いつか必ず飲んでやる。」
そんな決意を胸に魔物の森から出ようとしているとき。
「ん?なんだこの魔力は、このあたりでは一番強い魔力だ。」
森の中心にこのあたりで一番強い魔力を感じた。
「あの魔物だ。ん?あれは、、、。ドラゴン!?」
トカゲのような姿に蝙蝠のような羽が生えている。この世界で最強種と言われているドラゴンが目の前にいた。
「ガァァァァァァァァァァ!!!」
「やばい!気づかれた!!」
ドラゴンがこちらに向かって咆哮し、尻尾で攻撃してきた。
「戦うしかない!」
ドラゴンの尻尾を最小限の動きで躱したアレンはドラゴンの首に向かって腰に差していた剣で一線。
『スパン!』
「え。」
ドラゴンは静かに首がスライドしていき、体もゆっくりと倒れていった。
「まさか、身体強化と剣の付与魔法で一撃って。」
アレンは魔法について基本魔法も特殊魔法も使わずにドラゴンに勝ってしまったことに驚いた。
「それにしてもこのドラゴンどうしよう。」
このまま放置していってもいいがせっかくのドラゴンの素材だ。もったいない。
「一応、アイテムボックスは使えるけどあれって魔力量によって入る量が決まるんだよね。僕はまだ限界が来てないけど、さすがにドラゴンは入らないよね。」
アレンは手を前にかざしアイテムボックスを発動する。
目の前のドラゴンは跡形もなく別次元に消える。
「ははは。もう何がなんやら。」
アレンはまだ気づいていない。
この時点で人類の誰もアレンに勝つことはできないほど強くなっているということに。
誤字脱字の指摘お願いします。
調味料や甕、お酒などはアレンのアイテムボックスにすべて入っています。
はじめの描写はガルシア領から魔物の森を突っ切って海の浜にいるところから始まっています。
ドラゴンがいた場所はちょうど森のど真ん中です。