第七話 華原の策 其の三
「綾!?」
突然現れた私にお兄ちゃんは驚く。多分私の能力を初めて見たからだろうな。
「どうしてそんなに苦しそうにしてるの?」
別に怪我をしているわけじゃなさそうなのになんで腕を痛そうに歩いてるんだろうと思ってお兄ちゃんに聞いた。
「これは・・・全部あの白髪野郎が悪いな」
そこで私は数十メートル先にいる華原くんに気づいた。
「あれ?華原くん?」
私は空間を歪ませる能力を持っているからか周りの形が見ていなくてもなんとなーくわかる。
(さっきまであんなところに人いたかな?)
でも、突然人が現れたように感じた。
「お前は・・・ああ!委員長か」
それに目の前だけじゃなくどこかにもう一人いると私の能力は言っている。
(でも聴覚と視覚はあっちだって言ってる・・・ややこしい!)
「まあ、誰だろうと騙して殺すが」
とかなんとか言っていた華原くんの言葉はほとんど無視し、取り敢えず背を向けて反対方向にいた見えていない謎の人物に走り出す。
「なにしてるんだ綾!?」
「ちょっと背中はお兄ちゃんに任せた!」
お兄ちゃんは強いし、この数秒ぐらいなら間違いなく耐えられる。
「てい!」
襟を掴み、背負投で地面に叩きつける。
「いっ・・・気づかれたか」
一見何もない空間から華原くんが出現する。
華原くんが倒れている間に私の刃渡り数センチの小刀を能力で出現させる。
「お兄ちゃん!こっち来て!」
叫びつつ私は起き上がった華原くんの相手をする。
小刀を華原くんの腹目がけて突き出す。
「おっと」
「え?」
華原くんに突き出した腕を掴まれ、小刀をはたき落とされる。
「動くな」
低い脅すような華原くんの声がコンクリート造りの殺風景な部屋に響いた。
「チッ」
お兄ちゃんが持っていた刀を落とす。
「お前の後ろのナイフも動かすな、こいつの腕を叩き折るぞ」
私は左腕を掴まれ地面に押しつけられているので全く動けない。
「これでどうだ?」
カラン、とお兄ちゃんの背後から金属音がした。
「じゃあ次は腕を頭の後ろに回してしゃがめ」
お兄ちゃんは言われた通りに動く。
「じゃあ後ろを向け」
その言葉が発せられた直後、私の下からヴゥンと音がした。
「何の音だ?」
そして、華原くんもろとも私は床に沈み、天井から落ちた。
「チッ、面倒な!」
ボキッ、という音とともに私を激痛が襲う。
「綾!」
「綾!」
空中で綾の腕を折ったあいつは綾を放り投げ、俺に向き直る。
「この野郎が・・・!」
あいつよりも先に俺は動いた。
『灰雷!』
さっき落とした刀を回収すると走り出した勢いそのままにあいつを斬りつける。
「おっと、危ない」
金属同士がぶつかり火花が散る。
「綾の腕を折った代償は払ってもらう」
「ならそっちも払ったらどうだ、俺達を傷つけた代償を」
あいつの刀を弾き、肩から下に切りつける。
「お前らに払うものなんてなんてない」
「死ね」
がら空きになった心臓へと刀を向けた。
「させるもんですか」
俺は何者かに後ろから掴まれ、引きずり倒される。