第二話 動き出す野望
正鬼の下校中にて
流石に学校に華原が来るなんて事はなかった。
だが、ちょうど周りに人が居なくなった所でいつの間にか俺の横に立っていた。しかも車椅子に乗って。
「!」
俺は即座に身構える
「そんな警戒しなくてもいいじゃない。ちょっと落ち着いてくれる?」
「今日私があんたに会いにきたのは、私の計画に協力してほしいからなんだけど」
俺は時間稼ぎとしてあいつに聞く。
「何をすればいいんだ?」
「大森家からの華原家を守ってほしいの」
「なるほど、ならお前に聞きたいことが二つある。まずお前が華原家ではどういう立場なのか教えてくれ」
「家長よ」
家長と言うことはこいつの指示一つで即戦争状態に入ると言うこと・・・おっと?これだいぶ考えて行動しないといけないんじゃねえか?
俺は次の質問をする
「次は計画について教えてくれ」
「遺産相続と第三次大戦の勃発よ」
そりゃまたたいそうな野望だな
遺産がどんなもので誰のものなのかは知らんが
「これであんたの質問には全部答えたわ。で、協力してくれる?」
そりゃもちろん
「断る」
「あらそう、残念だわ。でも私はあんたの家族を人質にとってでもあんたを仲間に引き入れる」
そう言って立ち去っていく華原。
どうするべきだ?
ここで殺すべきか?
ミスれば一ノ瀬家から仕掛けた事になる、そして戦争にでもなった時いくら華原家が嫌われてると言っても大森家は味方してくれないだろう。
パチン!
俺があれこれあ考えているうちに華原は指を鳴らし消えた。
休日の山の中にて
あの日あいつと話したことを要点だけ親父に伝えると
「休日は特訓だ!」
とか言い出しはじめた。特訓・・・まあ一ノ瀬家はいまだに一週間に戦闘訓練が家訓として残っている。特訓もその一つであり十歳以上である俺は武器と能力を使った動きの訓練となっている。
と言うわけで俺は今親父と戦っている。
当然親父は家長なので能力が使える。
まあ俺も使えないことはないがな
俺は自分の刀を振る。
「よっ」
親父はしゃがんで俺の攻撃を避けた。
そこから親父は回転蹴りを放つ
親父の能力は、『加速する』能力で、その名前の通り自分のふれた物の速さを普段の五倍に加速出来る能力だ。
ちなみに俺の能力は『刃物を操る』能力だ。
「『雷光』!」
俺は業名を言った。すると稲妻のごとく刀は動き、親父の奥の木に刺さる。
今のは一ノ瀬家に伝わる業と言われるものの一つで、それぞれの業にごとの構え、業名を言えば誰でも能力を使ったかのような事象が起こせる。
「正鬼、その業は隙が大きいんだ、軽く使えるものじゃない」
「じゃあどうすればいい?」
「お前の場合は多分自慢のナイフを能力で飛ばした方がすぐに攻撃に出れるし、あわよくば追撃もできる」
その後も親父は俺と一緒に会話をしながら、俺の癖や欠点を指摘していった。
「正鬼!どうする?今日はもう終わりにするか?」
「確かに終わりにしたほうがいいかもしれないわね」
「そうか」
え?
今の声は綾じゃない。
この声は
「親父!そいつは綾じゃ無い!華原だ!」
「知ってる」
夕暮れの街中にて
あの日、霧奈に逃げられた日に霧奈が見つかることはなかった。
そして僕は今、家長の家に来ている。
「全く、どこ行ったんだろうな」
家長は公私混同という言葉が一番嫌いらしく、家にいる時と仕事してる時の言葉使いや表情がガラリと変わる。
「家長、すみません、あの時僕がちゃんとしてれば・・・」
「利生、いつも言ってるだろう?仕事の時以外は敬語じゃなくて良いって」
「ごめん、雅豹」
家長の名前は苗字も入れて大門雅豹という。
え?どうして一ノ瀬家みたいな感じで家長の名前がその家の名前じゃ無いのかって?それは、大森家の中にあるグループが多すぎて数年前から家長が血筋で選ばれるのはおかしいという声が出た。というわけで今は大森家全体から投票で選ばれるようになった。
「お前が見失うなんて珍しいじゃないか利生」
「何人かが行方をくらませたんだ。これ以上は自分でやろうと思う」
「ああ、確かに華原と名乗る人物が動き出した以上いつ戦闘が起こるかわからない。兵力はできるだけ温存しておくべきだろう」
「それじゃあ雅豹に聞きたいんだけど、華原霧奈は華原家で言うとどの位置にいるの?」
「分からん。だが諜報部いわくそれなりの地位にはいるらしい」
「なら家長が直々に行動することはないと思うけど、幹部以上って仮定で推理してみる?」
「よし、そうするか」
「まず、華原霧奈がこのタイミングで行動してきたのは何故か」
「多分何かしらのきっかけがあったんだろうな」
「最近起こった出来事・・・」
「そういえば雅豹、華原家ってヘリとか戦闘機、爆撃機とか作ってんだよね?」
「ああ。・・・喜彫グループか!」
「そうじゃないかな」
「確かあそこの社長かなんかが亡くなったんじゃ無かったか?」
「うん、確か名前は・・・覇鏡華だったけ?」
「よくそんな長い名前覚えられたな」
「最近よくニュースでやってたからね」
「で、一つ思ったんだがうちの外務部は何をしてたんだ?」
「え?」
「お前まだ気づかないのか」
「普通こんな変わった名前のやついるわけないと思わなかったのか?」
それは家長も人のこと言えないんじゃ・・・?
「こいつの名前をよく見ろ」
「はから?・・・華原!」
これは多分単純すぎて気付かなかったんだろう。
「ようやく掴めたな、きっかけ」
その後僕たちが数十分話し合って得た結論は
『華原霧奈は何かしらの方法を使って戦争を引き起こそうとしている』
と言う事だった。