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1/8

プロローグ 冒険者は決意する。







「あのね、ヒガン? ――アンタ、想像力が足りない!」

「なに……?」


 俺はあるクエストの終了後、リーダーである少女――シガナにそう叱責された。

 しかし、こちらとしては怒られることに思い当たる節はない。

 いったい、どういうことなのだろうか?


「アンタねぇ! ――最後はアタシがトドメを刺すって流れ、想像できないの!? そりゃ、ちょっとばかり状況が予定から外れていたけど、主役はアタシよ!!」

「その状況が問題だろう? あのままシガナが攻撃に出れば、下手をすれば負傷していた。これはあくまで、適切な、論理的思考に基づく推測によるものだ」

「だーっ!? だから、アンタのその『論理的思考』とかいうの、もうウンザリなのよ! やっててちっとも楽しくないじゃない!!」

「快楽を優先して命を散らすのか? 本末転倒ではないか」

「それ! そういうとこ!!」

「………………む?」


 俺が理解できずに首を傾げていると、シガナはこちらを指さす。

 そして、こう続けた。


「確かにヒガンの能力は評価できる。でもね、そういう堅苦しいやり方や言い方は求めてないの!! アタシにはアタシのやり方があって、他のみんなもアンタの指示通りに動く人形じゃないの!! ――心があるのよ!!」


 ――む、そこまで言われると不服だ。

 俺はこのパーティーの戦力を分析し、最適な戦略を提唱していたにすぎないのに。心や感情といったものも理解できないわけではない。

 しかし、戦場においてそれは二の次のはずだった。

 そのはず、なのに……。


「アンタはクビよ! ――言い方を変えれば、追放ね!」

「……そうか」


 だが、シガナは話を聞く様子ではなかった。

 その上でクビを言い渡されたなら、俺にはもう覆しようがないだろう。これは今の状況を論理的に分析した結果による、最も適した判断だった。

 有力なパーティーと聞いてはいたが、このままではこれ以上の伸びしろがない。

 すなわち、俺としても不適合な環境だった。


「それならば、俺は今日限りで去ろう。今まで世話になったな」

「ふん……! もう、ホントに知らないから!」

「こちらこそ、だ」


 そんな捨て台詞を言い合って、俺はその場を後にした。





 果たして俺は間違えていたのだろうか。

 そんなはずはない。言うなれば、あれは、シガナの我がままだった。

 実際にその後、彼女のパーティーはあっさり崩壊した。理由というのも分かりやすく、シガナによるスタンドプレイに尽きる。


「だが、次こそは上手くやってみせる」


 あの日から俺は論理的思考に磨きをかけなおした。



「もう、誰も傷つけない」



 俺は究極のリアリストとして、感情というものを捨て去った。

 そして、決意する。



「俺が、すべてを成功に導いてみせる」



 ――もう失敗しない。誰にも、させたりしない。


 



次話は21時頃に。

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