7話 久しぶり...
蛯名 七のことで放心状態だった輝星は、丸川弁護士と医者、看護師の説得で立ち直ることが出来た。
担当の医者が診察をしてくれて身体に異常がないことを教えてくれた。ただ、背中に最近出来た火傷の後があると教えてくれた。
医者は火傷が奇妙なアザになってるので書いて教えるとのことなので、ボールペンを取り出すと書けるノートがない事に気付いて辺りを探す。隣にいた看護師が気を利かせてコピー用紙を持って来てたようだ。
「先生....このアザはギリシア文字の【α】ですか?」
「ん! 星乃君はギリシア文字を知ってるのかい」
「まぁ、ゲームとかでたまに見ますから..」
「そうい事か..ゲーム知識ね。それで、このギリシア文字の【α】の文字が背中のアザになってるんだよ」
「酷いんですか? 自分じゃ分からないんですけど....」
丸川弁護士が一声掛けて代わりに確認することになった。輝星の背中に移動すると、医者と看護師も一緒に追随した。
「この真っ赤になっている箇所ですか....確かに【α】の文字に似てますね」
「丸川弁護士....火傷の後は酷いですか?」
「大きさは....」
丸川弁護士の説明だと500円玉ぐらいの大きさであることだった。火傷の後も真っ赤になっているわけではないと教えてくれた。
医者の先生が気になるんなら整形外科で手術して火傷の後を目立たせないように出来ると教え貰ったけど断った。
丸川弁護士が父親の遺産から出るよと教えくれたけど、違うんだ確かにお金の心配もあったけど中二病を発症させたんだ。
「大丈夫ですよ。それに....なんかカッコいいし..」
丸川弁護士は大きく溜息をして呆れ顔になり。医者と看護師は中二病だねと大笑いしてた。
その後、お世話になった医者と看護師にお礼の挨拶して退院することになった。医者の先生はもう一日様子を見てから退院した方が良いよと言っていたが、僕は当然断った。
早く家に帰って四種の神記アニメを見ないといけない。先週分のアニメフルコースだ、楽しみでしょうがない。
つまらない人生には四種の神記だけが頼りだ。もう、アイドルなんてごめんだ。
着替えは丸川弁護士が準備してくれたので着替え始める。上着を脱いでお腹の視線を向けると、腹筋が6つに割れていた。謎だ以前から身体を鍛えていたけど4つが限界だった。
それに腕や足の筋肉も引き締まってる感じがするし、起きた時に怠かった身体も今は軽く感じる。謎だ..。着替え終わるとレスキュー隊が回収してくれた鞄を持ち、お世話なった人に挨拶を済ませ外に向かう。
急遽家に帰ることが決まったので、丸川弁護士が車で家まで送迎してくれると言ってくれた。蛯名 七のせいで金欠だったから正直助かった。
丸川弁護士が他にも伝えたいことがあるからとのことだった。
丸川弁護士の車に乗って大通りの道路から住宅街に入った。外の景色を見ると半壊している木造の家があった。半壊した家が気になり目を追っていると、家の持ち主なのか半壊した家から荷物をトラックの積荷に運んでいた。
「地震で家が崩れたんでしょう。家族が無事ならいいんですかね」
「家が崩れるてるのを見たのは初めてです。今回の地震はそれ程凄かったですね」
「私は地震発生時、家に居ましたから凄く揺れましたよ」
「丸川弁護士の家って確か....30階建てのマンションでしたっけ?」
「えぇ、そうです。最上階に住んでいますから、とても揺れましたよ。家具や小物入れが倒れましたし、家には妻と娘が居ましたから、地震とマンションの揺れに怯えてましたよ。輝星の家は大丈夫ですかね?」
「.....多分大丈夫です。父親が結構お金掛けて建てたみたいですから..」
それからもいくつかの家が半壊している家があった。後片付けしている人が居れば、半壊したままで住人が見当たらない家もあった。
どうしてなのか考えてると横から声が聞こえた。
「あの家の持ち主はまだ、避難所で生活してるかも知れませんね」
「避難所か....場所は足りたんですか? 日本中で地震が起きたんですよね..」
丸川弁護士は無言で顔を横に振る。避難所の場所は足りてないようだ。丸川弁護士は思い口を開く。避難所を建てるには広い空き地が必要だ。田舎に行けば土地は余ってるが、都心部になると開けた土地は少ない。国や県など市町村が管理している公園や学校でも足りないため、民間企業にも協力して貰って土地を借りて避難所を建ててる。
だが、民間企業から借りてるのは丸川弁護士は反対のようだ。弁護士として土地を何の契約もせず貸すのは後々トラブルになると分かってるからだ。
「僕が通っている学校も避難所になってるんですか?」
「大事な事を忘れてました。学校の事を知らせたかったんですよ。避難所の方は体育館で行っているみたいです」
「じゃあ、学校は休みですか!」
「残念ながら学校は昨日から再開されました。輝星君の担任の先生から連絡がありました。後程、私の方から先生に連絡しときます。学校はどうしますか体調が悪ければ....」
「休めないですよね。父親の遺書のせいで....」
「....はい。学校が休みじゃなければ通学しないと行けないですね」
父親の遺書の中に緊急の急用じゃなければ学校を休んでは駄目というものがある。休むと罰として一か月の生活費が減るんだ。前にゲームのイベントで休みがバレて一割も減った。このせいで愛読している漫画を発売日に購入が出来なかった。
車が住宅街を抜けてしばらく経つと山林が見えるようになった。視線を奥に向けると丘の上に屋敷らしき建物が見えてくる。
あれが、愛する我が家だ。父親はでかくって広いのが好きだ。目の前の山林から屋敷の奥に見える山の奥まで敷地だ。多分、東京ドーム3個分だ。
家の外壁が見えるが正面の入り口門はまだ遠い。敷地が広いのはメリットとデメリットがある。メリットは神殿を作っても誰にも怒られないことだ。前に遊んだロールプレイングで神殿を作れば勇者に転職出来るとおもったからだ。毎日、大石を削ったら小さいけど洞穴に隠れてる神殿ぽいものが出来た。神殿は出来たけど転職が使える神官がいないことに気づき、勇者に転職するのを諦めた。
デメリットはコンビニもなにもないこと。最寄りのバス停まで全速力で走って1時間以上も掛かる不便さだ。
他には買い物は大変だけど、通販を頼めば宅配で来るので問題はない。野菜とかは家の敷地で育ててるので問題ない。
そうして、ようやく鋼製の巨大な門が見える。ロケットランチャーを何十発も当てなければ破壊されない頑丈な門だ。
門の脇に車を停めると外に出る。巨大な門には差し込める鍵などないので、生体センサーで開ける必要がある。
門の横にあるライオンのオブジェの口に腕を差し込む。ライオンの目が光ると生体センサーを調べている
。これが登録されていない者が同じことをやると腕を引きちぎられるらしい。
検査が完了すると目の色が赤色から緑色に変わる。そうすると機械音が鳴り響き巨大な門が開く。
因みに家の電気は全て自家発電だ。当時、最高の発電機と太陽光発電システムで電気を作り出し蓄電池に貯めている。
門は自動的に閉まってしまうので急いで車に乗る。車に乗って門を通る。
「輝星君には悪いけど入るだけで大変な家だな」
「分かりますよ。これのせいでばっちゃんが、外出することがほとんどありませんでしたから....」
しばらく坂道を登っていると海外のセレブが住んでそうな巨大な屋敷が見えて来た。屋敷は3階建てで青と白の壁色をしている。地下は2階もあり倉庫になっている。生前父親が集めた骨董品が入っている。
建物は本館だけではなく、野菜や果物を育てるための水耕栽培システムや施設野菜専用の建物がある。生きるために必要な者は大体揃っている。無いのは四種の神記を買うための資金だ。
維持費や税金は父親の遺産から支払われてる。一体いくら資産があるのか分からない。
車を本館の前に停めると、丸川弁護士に頭を深く下げる。
「丸川弁護士、本当にありがとうございます。病院のことや学校のことまでやって貰ってすいませんでした」
「当たり前のことをやっただけだ。それよりも家の片づけを手伝わなくっていいのか? 車の中で大丈夫と言ってたけど..」
「大丈夫です。掃除はばっちゃんに叩き込まれましたから得意なんです」
「輝星君..もっと大人....嫌辞めておこう。分かった何かあったら携帯か事務所に連絡してくれ。学校の担任の先生には連絡しとくよ」
「はい」
輝星はお礼を言うと鞄を持ち上げ車から出る。丸川弁護士は軽く会釈して出発する。輝星は急いで玄関に向かう。入り口の門を開けるには家に入って管理室で操作するしかない。
鞄から鍵を取り出し玄関に差し込む。
「久しぶりの我が家だ。早く後片付けをして....アニメを見よう! と、その前に管理室」