6話 裏切りのI DOL
輝星は丸川弁護士から8日間の精密検査を説明した。精密検査自体は1日で終わったが、目を覚まさなかった。異常だと感じた丸川弁護士はもう一度念入りに精密検査を調べた。特に脳に異常がないか検査をしたが異常は見つからなかった。
輝星の8日間眠たままベッドの上にいた。当然、自力で食事は出来ないため末梢点滴を手の静脈に注射して栄養を取っていた。
下の処理はオムツに任せていた。
説明を聞いた輝星は腕と点滴に視線を向ける。オムツは確認しなくってもわかった。ゴワゴワして違和感がハンパなく感じからだ、いつものパンツじゃないと顔を真っ赤にして恥ずかしく感じた。
丸川弁護士は真剣な表情をして、8日間の外の出来事を説明し始めた。僕が眠ってる間、世界で同時地震が発生し大災害を起こした。特に沿岸部の被害が大きかったと説明を受けた。そして、僕が乗っていた電車が地震の影響でトンネル内で脱線事故を起こし。
打撲などの怪我人は出たが幸い重傷者や死者は出なかったとのことを神妙な表情で説明を受けた。
丸川弁護士は輝星の精神的ダメージを考えて建物の損害だけ説明し、死者や行方不明者などの人的被害は説明しなかった。
「輝星君の血だらけの姿で救助ヘリに運ばれてるのをテレビのニュース番組で見た時は心臓が止まるかと思いましたよ」
「えっ! 僕血だらけ? テレビ?」
「頭の怪我の方は大丈夫でしたよ。先生が言うには傷はキレイに塞がっていると言ってました」
「頭に怪我をしたのか僕......そう言えば電車の中で......」
輝星は片手を頭に置いて電車事故の発生前後の出来事を思いそうとするが思い出せない。夢の中で2年前に亡くなったばっちゃんのことで、思いと懐かしく記憶で一杯になって上手く思い出せないでいた。
事故? 世界? 赤い幽霊? かみ?? 記憶の中を思い出そうとするがパズルのピースがバラバラになっている感じで記憶の中がぐちゃぐちゃで整理が出来ない。
あの日、僕は......。駄目だ思い出せない。
輝星が思い出そうと努力してると、静かになった部屋からテレビのニュース番組が始まった。ニュース番組に久しぶりに興味が沸き視線を向けると。
輝星が救助ヘリに運ばれてる静止画だった。しかも、輝星と認識出来るぐらいの静止画を背景にあなうアナウンサーと司会が専門家の人達と、映像に出てる少年(輝星)の怪我を心配している声や何故地震が起きたのか? この脱線事故を回避出来なかったのかと議論していた。
輝星がテレビを見ながら口をパクパクして驚いてると、丸川弁護士がテレビを見ながら、どこか懐かしそうに説明した。
「あ、この映像ですよ。これを見たんですよ。どうやら輝星君も驚いてるようですね」
「これ僕です......あんな血だらけだったんだ」
「私もあの映像を見た時は....正直駄目かと思いました。本当に無事で良かった」
「えーーと、心配してくれてありがとう..ございます」
輝星は丸川弁護士の本当に親身な気持ちが伝わり照れ臭そうにする。そして、ニュース番組が次の話題に切り替わる。
『歌手の”蛯名 七”さんと人気グループ”スカイブルー”のボーカル”赤松 英二”さんとの密会デートとお泊まり愛がスクープされました』
テレビの中で驚きの喝さいの声が聞こえる。そして、司会と芸能リポーターと論争を始める。ニュース番組で二人の写真が紹介されると。
「ヒャァ!?」
輝星は立ち上がり奇声を上げた。どうして奇声を上げたのか、その原因は”蛯名 七”である。
蛯名 七のデビュー当時からファンで応援していた。彼女は元々”エイト”という8名のガールズグループに所属していた。
デビューして間もない彼女たちは認知度向上のため駅などの路上ライブをしていた。丁度好きなアニメのイベント帰りで彼女たちの歌を聞き。そして、蛯名 七の明るい笑顔の惹かれてファンになった。惹かれた理由は輝星を相澤と間違えて振った、蛯澤さんの笑顔に似てたからだ。
蛯名 七のファンになって、売れないCDを何度も何枚も買って上げた。購入者には好きな子から手渡しで貰え、最後に握手してくれるからだ。握手する時にひまわりの花のような大きく明るい笑顔に癒された。
ほどなくして蛯名 七が所属していたガールズグループから脱退しても彼女のファンを続けた。
彼氏作らないって言ったよね、嘘だったの? その服は何? 露出が多いんですけど、いつものワンピース?は その濃いメイクは何? 僕が知ってる蛯名 七のメイクは田舎から出たばかりの素朴なナチュラルメイクだろ。
しかも相手の男性は転生者じゃないか、理由は分からないが男性が所属してる芸能事務所に所属すると、〇〇〇〇〇〇系に転生するんだ。
僕も転生に憧れて応募したけど....転生は出来なかった。
丸川弁護士は突然、奇声を上げた輝星に驚き呼び止める前の原因を考えた。輝星の視線の先を追うとテレビだったので原因は直ぐに分かった。
「輝星君落ち着いて..もしかして、スカイブルーのファンだったの....」
「えっ! えっ? スカイブルーのファン? どうして....そっち? 普通は女性の方じゃないんですか..」
「えっ!! まさか..輝星君は”メンズイーター”のファンなのかい?」
「メンズイーターって何ですか? 蛯名 七って何者?」
丸川弁護士は輝星の質問に驚きながら教えてくれる。彼女、蛯名 七は女子中高生から特に嫌われていて、蛯名は多くの人気若手歌手や若手俳優とスキャンダルになっていた。しかも、毎週違う人とスキャンダルされるため、インターネット上で”メンズイータ”ーと揶揄されて話題になっていた。そして日本中に一斉に広まった。
輝星の家にテレビはあるが、ゲームとアニメの専用機だ。当然、パソコンもゲーム専用機のため、ニュース番組などで世間の情報をしることがなかった。
新聞はお金が勿体ないため取っていないし、お金があれば4種の神記(小説、漫画、アニメ、ゲーム)に使い、残りは生活費とメンズイーターに使っていた。
輝星には親しい友達がいないためSNSなどの情報網から伝わらない。
「その様子だと知らなかったみたいだね。まぁ、私も娘に教えて貰ったけどね。大丈夫かい輝星君....」
一年という短いようで長い期間ファンを続け、生活費を削って応援してた苦行の思いが、呪いとなり少年の心に刻まていく。苦行の思い出を涙や鼻水と一緒に垂れ流す。
「....ずっとファンでした」
輝星は振り絞る気持ちで語る。それに答える用に丸川弁護士相槌を打つ。丸川弁護士以外から同情の視線を感じる。視線を出入り口に向けると、そこには看護師や医者がいた。
輝星が奇声を上げたことに驚いた。他の患者がナースコールで看護師を呼び、担当の医者と共に輝星がいる個室部屋に入っていた。
医者も看護師も憐れみと同情の視線と、もういいからと同情の相槌を打つ。そして、輝星の下半身に視線を向けて軽く笑う。
何故? 下半身を見られて笑われてるのか疑問の思ってると思い出す、オムツを履いてたのを、しかもズボンのサイズが合ってないので、足膝までずり下がっていた。真っ白なオムツが丸見えになり顔を真っ赤に染め気が動転して奇声を上げる。
「あああああああああああああああああああああっ! 裏切りものーー!」
僕はまた、笑顔に騙されたのか..あの笑顔も嘘だったのか。彼氏作らないって言ってたのにファンの皆を裏切って楽しいのか、影で笑ってたんだ、男と。
蛯名も蛯澤も大嫌いだ。僕の思いを滅茶苦茶にした。えび....エビ....エビなんか大嫌いだ。
こ、こんな世界ぶっ壊れちまえばいいんだ。
ん? デジャブか前にも同じことを言ったような気がする....気のせいか? うーーん覚え出せない。
悔しい..悔しいから海老を大食いしてやる!!
最後の方は暗い話になってすいません。
これで大体、主人公の心情は伝わったかなたと思います。
もう少し進めば無双戦闘話しに切り替わると思います。