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Night Magius  作者: 青葉 夜
8/18

007 GUN FIRE


「……………!」


音にしたらパチッ。そんな感じで、夕子さんが突然瞳を開いた。


「目ぇ覚めましたか?」

「…ええ。問題ない?」


言われて頷く。刻印を終えるのが、夕子さんの目覚めギリギリというのは問題ではない。

この結界も、内側からすらも感知できないという極上の術式だ。編むのに苦労した。

…まぁ、何も問題は無いだろう。


「とりあえずは。まぁ、何かそろそろ限界っぽいけど」


幾ら隠密結界を張っているとはいえ、此処は彼等の陣地。

変に気配の薄れている場所…というのも、また異変ではあるのだ。


「とりあえずこの銃は把握しておいたし、一度撃って見れば多分扱える」


言って、右手にグリップを握った拳銃を見せておく。


「把握した…って、拳銃を扱えるの?」

「何処の国だったかのツアーで、射撃のがあって…」


バカバカと拳銃を試射させられた経験があるのだ。

あのときは9mmパラベラムから始まって45口径、.357マグナムに諸々……。

矢鱈滅多に撃たされたのだ。

………じいちゃんに。


拳銃に対して夢見るお年頃だった当時の俺は、不用意にも拳銃に対する好奇心をあの祖父に晒してしまったのだ。


「よし、任せておけ」


何を思ったのかあの祖父はあっというまにパスポートを取得し、俺を海外の射撃演習所まで連れて行き、


「童顔に見えるがソレは種族的なものであって、既に年齢は大丈夫」


何が大丈夫なのかさっぱりだったが、そういうわけで俺は射撃訓練を受けさせられて。

当時既に祖父の下で訓練を受けていた俺は、基礎体力やら平衡感覚やらは丈夫になっていた。そのため、結構命中させることも出来て、何気に褒められてはいた。

…まぁ、そこで拳銃に対する憧れは消え去ったが。


「…まぁ、人は色々な歴史バックボーンを持ってるんですよ」

「そ、そうなの」


引きつって苦笑する夕子さん。

まぁ、真実を言っても仕方ないし。


「ところで、今何時?」

「そうね大体ね…0200といった所ですか」


何気に三時間は潰せた。結界様様である。

しかし、流石にコレだけ時間が潰せた事は当然ながら夕子さんにとっても予想外だったらしく、結構驚いてしまっていたようで。


…まぁ、この結界だけは錬度高いしね。

授業中とかにコレを使っておくと、教師に指名される事とか、寝てても注意されることとかが極端に減るのだ。

愛用してますとも、隠密結界。


とりあえず、そんな物が張られてあるとは気付いていない夕子さんは、自身の装備していた銃器を身体からはずし、鞄の中の別の銃器と取り替えていく。


「? 何で変えるんですか?」

「ん? 私の魔銃って、このパイソン以外は魔銃としてはイマイチなのよね。あんまり使いすぎると暴発しちゃうのよ」


言いながら夕子さんは2丁拳銃を取り出し、それを腰に挿す。

……あれはジェリコかな?


「まぁ、銃の話なんて如何でも良いんですけどね」


言いつつ、腰に挿したリボルバーを引き抜く。

何か、大きな気配が近づいているような気がして。


「…あら、解るの?」

「一応。ビンビン来てるし」


ただただ、色々な感情が混ざり合った結果に生まれた憎悪。

激しい感情の最果てには、如何なモノでも憎悪が待っているのだとか。

今、此方に向けて威嚇を掛けているのは、そんな感情の集合体のような気がして。


…不意に、気配が高まって。


「来るっ!」


夕子さんの激が飛ぶ。

と、同時に爆音。正面の扉からではなく、背後の壁が…破られた!?


驚いている暇も無く、咄嗟に振り返って崩れた壁に向かってトリガーを引く。

夕子さんの二丁拳銃と、俺の放つ弾丸は、その壁を崩して迫る魔物に見事にヒットして。


――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!


声ではない、音と表現の仕様のない何かが脳裏に響いた。


「…っ!?」


咄嗟に耳を押さえて、そのままドアを蹴破って廊下へ。

途中に夕子さんの鞄を拾って、廊下からさらに支援銃撃。

夕子さんが廊下まで引いたのを確認して、ようやくその場から駆け抜ける。


…と、夕子さんがついてきていない。


「ちょ、夕子さん何してるんですかっ!!」

「ちょっとお土産をね」


そう言って夕子さんは缶のようなものから何かを引き抜くと、それを今さっきまで居た魔物の居る教室の中へと放り込んで。


…………!?


「まさか、手榴…!!」


言葉半ばにして轟音。

本物の手榴弾は、爆発と言うよりもその破片で人を殺すという。

だとすれば、この爆発はおかしい。まるで火をおこすための爆弾の爆発じゃないか。

…魔術で改良でもしてあるのだろう。


「あはっ」


正直、可愛く笑って見せようが、この人はテロリスト以上に恐い人だと認識してしまって。


「…………」


なんとも言えず、視線をそらすのだった。


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