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ブルーライトニング  作者: Toy
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ブルーライトニング 第6章 弟? 妹?

登場人物 

 マルス:ダグラスインダストリーが開発した軍用アンドロイド。高い戦闘能力を誇るが、可愛い容姿をした男の子である。


 敷島玲子しきしまれいこ プレストシティに住む16歳の少女。両親と妹をテロにより亡くしている。妹を亡くしたためか、年下の子供が好きである。


 サム・ダグラス大佐:プレスト海軍に所属する戦闘機パイロット。プレスト海軍のロボット部隊を指揮している。また、ダグラスインダストリーの経営ファミリーの一員でもあるため、新型ロボット(ダグラス製が多い)のテストに関わることが多い。


 上原真奈美うえはらまなみ ダグラス社のロボット技術者。玲子とは血縁関係にはないが、母親代わりになって面倒を見ている。

 玲子はサムとマルスに別れを告げて、そこから立ち去った。立ち去るときの玲子の歩調が、何となく軽いのをみて、サムはほっとした。

「ねえ、サム」とマルスが話しかけてきて、サムはマルスを見下ろした。

「なんだね?」

「今の玲子っていう人、誰? どうして、セキュリティーエリアに入れるの?」

「ああ、マルスは知らないのか・・・ 玲子はソレイユの親友なんだ。ソレイユがシティへの立ち入りを制限されているので、玲子はセキュリティーエリアの立ち入りが特別に許可されているんだ。それで、ソレイユに会いにきてるんだよ」

「そんな理由で、セキュリティーエリアの立ち入りができるようになるの?」

「ソレイユのシティへの立ち入りを禁じたんだ。彼女につらい思いをさせているから、これくらいのことはするさ。それに、玲子はしっかりとした娘だからね。うちの司令官連中も一目おいているんだ」

 マルスはその説明で納得したようだ。

「そうなの・・・」

 サムの顔がほころぶ・・・

「どうした、玲子に一目惚れか? マルス」

「よく、わかんない・・・ でも、優しい人だなって思う・・・」

「いいよ、玲子のことを好きになっても・・・ 好きになる価値がある人だ。俺の家族も玲子のことを気に入っていて、よく家にも招待している。非番の時は会うこともあるさ」

「そう・・・」


 その晩、夕食の卓についた上原に玲子が言った。

「おばさん、今朝はごめんなさい」

 玲子は寝坊をして、今朝は朝食の支度をしなかったことを気に病んでいた。

「たまにはいいじゃないの」

「ええ、そうなんだけど・・・」と、玲子の答えは歯切れが悪い。

「伯父さんも同じだと思うけど、玲子が朝食を作ってくれることには感謝してるわ。玲子が作るものはおいしいし、元気が出るもの。でもね、無理はしなくていいの。いいこと?」

「はい」

「さあ、早く食べましょう。ロビー、スープをもらえるかしら?」

「はい、博士」

 ロビーが配膳を終えると、上原と玲子は向かい合わせでテーブルにつき、食べ始める。

「今日はソレイユに会えた?」と、上原が聞く。

「ええ、それから、サムにも会ったわ。それがね、おかしいの。今日はノーマじゃなくて、男の子を連れてたわ」と玲子はくすくすと笑う。

「へえ、男の子?」と上原はマルスの事だと察したものの、とぼける。それに、玲子がご機嫌なのも気になった。

「マルスっていうの、とっても、かわいいかったわ」

 うっとりと幸せそうな様子の玲子を見て上原が言った。

「玲子もアンドロイドが欲しい? いいわよ、リースしても」

 玲子の心がくらっと揺れる。だが・・・

「いいわ。リース料がかかるし、ロビーもいるし・・・・」

「ロビーは会社が私と伯父さんの警護のために置いてるの。だから、リース料は払ってないの。玲子は、年下の子供のアンドロイドが欲しいんじゃないの?」

 玲子は本心を上原に見透かされているとわかったが、

「いいの・・・・」と、小さな声で否定した。

「そう。でもね、欲しいと思ったら遠慮無く言いなさい。私も一人くらいアンドロイドの子がいてもいいかなと思っているんだから・・・」

「ほんとに?」

「ええ、ほんとうよ。私もね、お客さんの話を聞いていると、ちょっと、うらやましくなるのよ。玲子は女の子がいい、それとも男の子?」

「おばさんだったら、女の子がいいんじゃない?」と、玲子に問われて、上原は玲子の真意が理解できなかった。

「どうして、女の子だと思うの?」

「だって、おばさんが開発したスーパーアンドロイドって、ニーナとかノーマとか、みんな女の子でしょう?」

 上原は少し肩をすくめた。玲子はまずい事を聞いたのかと、少し不安になったが、まもなく上原が笑い出したので安心した。

「そういえば、確かに女の子ばかりね・・・・ でも、私が開発したアンドロイドが女の子ばかりなのは、ソレイユの基本構造をそのまま使っているからなの。伯父さんみたいに、ロボットの駆動系の設計ができれば、男の子も作れるんだけどね。私にできるのは人工頭脳の改良だけなの」

「男の子って作りにくいの? 男の子のスーパーアンドロイドって、ほとんどいないでしょ」

「作りにくいというわけじゃないのよ。運動性能を強化したタイプを少年型で開発したんだけど、プレスト海軍が高い情報処理能力を求めていて、ニーナのようなアンドロイドを選択したの。つまり、少年型には需要がなかったのよ。軍以外にスーパーアンドロイドをほしがるところも無いし・・・ だから、少年型は途絶えちゃった」

「性能が良ければ売れるというわけじゃないんだ」

「そういうこと」

「で、おばさんは男の子と女の子のどちらがいいの?」

 上原は玲子が上原の好みを探っているのだと気がついた。

「そうね、女の子だったら、きれいなお洋服を着せられるし・・・ いやいや、男の子だって、かっこいい服があるわね。うーん、悩ましいわー 玲子は?」

「えっ、私? ええとねえ、妹・・・ うーん、マルスもかわいかったから、弟もいいなあ・・・」と、迷うのを見て、上原は玲子が年下の弟か妹が欲しいのだと確信した。次は年格好だが、子供型のアンドロイドは需要が高く、様々な年齢層のモデルがある。こんな探りをいれるより、カタログをみせて、好みのモデルを選ばせてやりたい。そこで、一計を案じる。

「食事が終わったら、カタログをダウンロードして、おばさんと一緒にみてみない。結構、楽しそうじゃない?」

 だが、玲子は少し首をかしげる。

「うーん、でも、今夜はいいわ」

「どうして?」と、てっきり話に乗ってくると思っていた上原には意外だった。なかなか、玲子は手強い。

「だって、今はマルスのことで胸がいっぱいなの」

 玲子の意外な「のろけ」に、上原は一瞬吹き出しそうになる。まあ、今夜はそれでもいい。

「じゃあ、カタログみるのは、別の日にしましょう。楽しみはまた後日、私はいつでもいいから・・・・」

「ええ、お楽しみは、また後日ね! やっぱり、伯父さんの意見も聞いてみないと」

「そうね、聞いてみないとわからないわねえ」と、上原は本音を言った。玲子の伯父「敷島一郎」は、全く、とらえどころのない男である。それは玲子にも同じだったらしい。

「伯父さんの好みは、ほんとにわからないものねえ」と、玲子も上原に同意した。


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