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ブルーライトニング  作者: Toy
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ブルーライトニング 第46章 アリスの一言

玲子の部屋に訪ねてきたアリスは玲子に一つのお願い事をする。

 マイクと別れて玲子はマルスを連れて客用の寝室に入った。鞄をあけてマルスのパジャマを出そうとして気がつく。

「あれ? これ!」

 鞄に詰めてあった荷物の一番上に玲子のTシャツがつっこんであった。マルスが両手でそれを引っ張り出す。

「今日はこれ着るの」

「ちょっと待って、よその家だから、ちゃんとしたパジャマを着ようよ」

「いや! これがいい」

 玲子はあきれ顔で

「いつ入れたの?」

 昨夜、荷物を準備したときには入れてなかったはずだ。

「警察からでたとき、ロビーに頼んだの、データ通信で」とケロッとした顔で答える。

(やられた)と玲子は頭を抱えたくなる。ロボット間通信網を使われたら、周りの人間にはなにを伝えているかわからない。

(ロビーもロビーだわ、マルスの言うとおりにするなんて)

「ロボット間通信をそんなことにつかって」と、マルスを責めるも、マルスはいそいそと服を脱いで、Tシャツに着替えている。

「もう、それを着てこの部屋を出てはだめよ。家じゃないんだから」

「うん」

 元からマルスは部屋から出るつもりはない。

(最近、甘える頻度が多くなってるな)

 玲子はエネルギー補給機を探すが部屋には置いてなかった。

(貸してもらえる話だったけど)

 玲子が困惑していると、ドアをノックされた。

「玲子、エネルギー補充機を持ってきたんだけど、入っていいかしら」と、アリスがドアの外で声をかける。

「はい、どうぞ」と玲子は慌ててドアを開けた。片手に補充機を提げたアリスが部屋に入ってくる。

「ごめんなさいね、持ってくるのが遅れて。ノーマが使っているものだから、マルスにも使えるはずよ」

 玲子は見慣れた補充機をアリスから受け取る。

「ありがとう、おばさん」

「マルスにもご飯をあげないとね。今日は立ち回りをやったから、消耗しているんじゃない?」

 玲子はマルスに。

「マルス、ベッドに寝て、エネルギーを入れるわ」

「はい」といって、マルスはベッドの上に仰向けに寝る。

「マルス、かわいい寝間着を着ているね」とアリスが言う。玲子は気まずさを感じながら、

「あの、これ・・・」

「真奈美から聞いてるわ、玲子のTシャツでしょ」

「ええ・・・」(もう、おばさんたら、何話してるんだか)と上原のおしゃべりを少々責めたくなる。

 玲子はマルスのシャツをめくり、腹部のコネクターに、補充機のケーブルをつなぐ。マルスは自分ではエネルギー補充の操作ができないようにプログラムされているので、ここは玲子にしてもらうしかないのだ。玲子は手慣れた様子で、補充機のスイッチを入れ、エネルギーの補充を始める。補充機のディスプレイを確認すると、いつもより消耗しているのがわかった。昼間の襲撃者との戦いで、エネルギーを使ったのだろう。アリスは手近な椅子を引き寄せて座った。

「最近、真奈美がうれしそうなのよ。玲子がマルスのことを相談しに来るって」

「はい?」

「マルスのことをよく相談するんでしょ?」

「ええ、だって真奈美おばさんがマルスの”心”を作ったんでしょ。真奈美おばさんに聞くのが一番いいと思って」

「でもね、マルスのことだけじゃなくて、いろいろ相談してほしいと思ってるわよ。真奈美はね」

「ええと、でも・・・」

「玲子は真奈美に遠慮しているでしょう。本当の母親じゃないから」

「でも、感謝してるわ」

「それはわかってる。でも、もっと真奈美を頼っていいのよ」

「でも、もう私も16歳だもの。それに私は二人のお邪魔虫でしょ」

 玲子の後ろめたさを感じさせる返事に、アリスは笑顔で答えた。

「すごい勘違いね。敷島さんは真奈美のタイプじゃない。嫌いではないけど、好きという感情を抱いてはいないの。敷島さんも同じ。二人とも玲子と一緒に暮らしているのよ。敷島さんにとっては玲子は妹夫婦の忘れ形見、真奈美は夫と娘をテロで亡くしているから、玲子のこと娘のように思っているの。そのことは玲子もわかってやりなさい」

「そうなの?」

「玲子は自分のこととなると、ほんとに無関心ね」

 玲子は補充機の表示を見て、補充にもう少しかかることを確認した。

「玲子はマルスに頼られるとうれしいでしょ」

「ええ・・・」

「真奈美も同じ、玲子に頼られると母親としてうれしいのよ。だから、遠慮しないこと」

「でも、私・・・」

「まずはマルスのこと、じゃんじゃん相談しなさい。そのあと、玲子自身のことを相談するといいわ。今なら私でもいいわよ。私も玲子のことは娘と思っているからね」

「そうなの」

「真奈美が玲子の面倒を見ると言わなかったら、私が玲子を引き取ってたわ。敷島さんは親としてはちょっと頼りないからね」

「私がおばさんを頼りにしたら、うれしい?」

「そうね、今日の玲子は私を頼ってくれたし、私は玲子のためにいろいろできた。ほんとにうれしかったわ。真奈美や敷島さんがプレストシティにいたら、玲子のために同じことをしたはずよ」

 ブザーが鳴ってマルスのエネルギー補充が終わったことを知らせた。玲子はマルスの腹部からケーブルをはずすと、マルスが上体を起こして、玲子に抱きついてくる。今日はほんとに甘えモード全開である。玲子はベッドに座り、マルスを膝の上に抱く。

「最近はほんとに甘えんぼなんです」と、照れ隠しに玲子が言うと、

「でも、うれしいでしょ。マルスが甘えると・・・」と、言ってアリスは立ち上がった。

「同じ気持ちは私や真奈美も感じるの。じゃあ、お休み」

「おやすみなさい、おばさん」

「おやすみなさい」

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