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ブルーライトニング  作者: Toy
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ブルーライトニング 第36章 フォルテシティ迎撃作戦

フォルテシティのローウェルインダストリーを武装テロリストの大型ロボット「ドラグーン」が襲う。


リョーカ:ダグラスインダストリーの設計を元にローウェルインダストリーの生産ラインで作られたアンドロイド。

アトス:ダグラスインダストリーが開発した少年型アンドロイド。人を憎み嫌っていたのだが

ポルトス:ダグラスインダストリーが開発した少年型アンドロイド。アトスと同型だが、人なつっこい性格をしている。

アラミス:ダグラスインダストリーが開発した少年型アンドロイド。アトスと同型だが、人なつっこい性格をしている。

リーム:ダグラスインダストリーが開発した少女型アンドロイド。情報分析を得意としている。ブラックタイタンのテストパイロットでもあった。

ルイス:リョーカのマスター。プレスト海軍のパイロット

マトソン:フォルテシティ防衛軍のパイロット。

モルガン:武装テロリストセレクターズの指揮官

ブライト:モルガンの副官。情報収集を担当している。

エドワーズ:プレスト海軍第7艦隊の副司令官。

ウエスト:プレスト海軍第7艦隊の副官。エドワーズの補佐が主任務。

 フォルテシティの南西に位置するローウェルインダストリーは、航空、船舶、ロボット、エネルギーなど主要工業な分野で大きなシェアを握る企業で、フォルテシティ以外にも、ロンドシティ、アルトシティにも主要な生産拠点を置く巨大企業である。そのローウェルインダストリーに、フォルテシティ防衛軍はメーカー点検と称してブラックタイタンと3機のブルータイタンを送り込んでいた。更に、プレスト海軍から試験のため派遣されているロボット部隊「ブルーファントム」の分遣隊も展開している。


 ローウェルインダストリーの会議室の一つを借りて、フォルテシティ防衛軍のマトソン大佐は対策会議を開いていた。

「プレスト海軍からの情報だと、敵の最大戦力は10機のドラグーンということだが、アトス、迎撃の要は君たちブルーファントムになるが、我々が支援できることはないか?」

 アトスはダグラス社がソレイユに次いで開発した少年型アンドロイドの一人で、派遣されているアンドロイドの実質のリーダーだった。アトスは、ポルトス、アラミスとともに三銃士と称されており、ソレイユやソレイユをベースに造られているニーナやノーマなどの少女型アンドロイドに比べると、飛行能力を持つなど、格闘戦能力に秀でているのが特徴である。

「リームのバックアップがあれば十分です。心配ありません」

 同席していたルイスは、人間嫌いで無口なアトスが、マトソンの問いに明瞭に答えるのを意外に思いつつ聞いていた。ルイスの戸惑いをよそに、マトソンは

「アトス、忌憚のない意見を聞かせてくれ。アルトシティの情報では、1機のドラグーンにブラックタイタンは手こずっている。そのあたり、懸念はないのか」

 それに対するアトスの答えは明瞭だった。

「ニーナによれば、ライトランサー(槍)さえ装備していたら、問題はなかったようです。それに、ニーナは僕らと違って接近戦闘が得意とはいえませんので、そのあたりは考慮する必要があるでしょう。今回、ブラックタイタンにはリョーカが乗りますので、戦闘能力は段違いです。リョーカはブラックタイタンの操縦シミュレーションを済ませていますし、こちらのブラックタイタンはリームやリョーカが使うリンク3に対応できるように改修され、運動制御ソフトもバージョンアップしてます」

「プレスト海軍のブラックは改修前か?」

「はい、プレスト海軍のブラックは、実質ニーナ専用機ですからリンク2までの対応です。近いうちにマルスが使えるようにリンク3対応への対応と運動制御ソフトを改修するそうですが・・・」

 リームはニーナと同じ形式のアンドロイドだが、最も新しいリームはデータリンクがリンク3に対応しているので、フォルテシティのブラックタイタンは試験的にバージョンアップしていたのだ。

「明日か・・・」とマトソンはつぶやく。否応なく緊張が高まっていくことを感じていた。

「私も、リームと一緒にドルフィンで出ます。プレスト海軍司令部の許可もとってありますので、よろしいですね」とルイスの申し出に、マトソンは頷く。

「ええ、よろしく頼みます。明朝、0830をもって迎撃作戦を開始する」

 

 会議が終わって、マトソンはルイスを夕食に誘った。ルイスとしてはリョーカも誘いたかったのだが、明日の迎撃の準備があるとかで、アトス達と格納庫に行ってしまったので、結局、マトソンと二人で食事をすることにした。ローウェルインダストリーの社員食堂で、二人はテーブルを挟んで座る。

「正直、緊張するな。君は?」とマトソンが聞くと、ルイスも頷きながら

「緊張しますよ。明日、敵が来ることがわかってますからね」

 さほど緊張しているとも思えないルイスの返事を聞いて、ふふっとマトソンは笑った。食事をしながら、ざっくばらんに話をする。食事も終わりに近づき、マトソンは話題を切り替えた。

「しかし、リョーカの模擬戦闘のデータ、アトス達とは桁違いのすごさだな。正直、驚くばかりだ。同じアンドロイドなのに、なぜ、あそこまで違うんだ?」

「アトス達三銃士やリームは家事用ソフトウェアを搭載しています。アンドロイドとして必要な機能だということで搭載しているのですが、それが人工頭脳のリソースを食っているんです。リョーカは家事用ソフトウェアを搭載していません。その分、他のことにリソースを振り向けられるのだそうです。たとえばサブロボットコントロールシステムとか、高機動制御システムとか・・・」

「なるほど、アンドロイドなのに高性能メタロイド並みと言うことか。にしても、リョーカは可愛いね。君に甘えるところなんか、ほんとに小さな子供だ」

「そうですね、ああいうところは可愛いなと思います。でも、大佐もアトスと良い関係なのではありませんか? アトスって結構人間嫌いで無口なんですよ。今日、大佐と話をしているので、ちょっとびっくりしてます」

 カップのスープを飲み干しながら、マトソンはふうと息をつく。

「そうなのか? こっちに派遣されたとき、リームやポルトス、アラミスのことをよく面倒を見ていて、気に入ったんだ。それで、ずいぶんアタックしてね。ああいう男は俺は好きだ」

 その、アトスに対する驚くべき行動力に、ルイスは感心した。

「そうですか。生みの親のスミス博士が知ったら喜びます」

 食事を終え、マトソンはコーヒーカップを手に取る。しかし口を付けず暫く思いにふけりながら言った。

「君、言っていたな、アンドロイドにはマスターが必要だと。俺はアトスのマスターになれると思うか」

 ルイスは驚きとともに、口にした食べ物を飲み込む。

「なれると思いますよ。いえ、もう、アトスは大佐のことをマスターと認証しているのかもしれません。態度が明らかに違いますもの」

「そうか・・・ それなら、明日のことが片付いたら、アトスを家に引き取ることを考えるか。サムもそうしているのだろう? あの、噂のノーマという女の子・・・」

「ええ、妹として接しています。彼の家族も、家族の一員として接してますわ。それはもう、仲むつまじい家族ですよ」

「そうか・・・ うん、そうか・・・」

 マトソンはコーヒーを飲みながら、一人、思いに耽っていた。


 深夜、ラルゴシティ沖で演習に参加していたプレスト海軍第7艦隊は、プレストシティへの帰途、西郷の指示で小型の無人哨戒機を飛ばし、ガバメント社の工場を監視していた。予想どおり、不審な大型貨物車両が50台程、ばらばらに出発するのを確認し、複数の無人哨戒機が監視を続ける。明け方、大型貨物車両が海岸近くで集合し、7機のドラグーン、40台の装甲車、6機の飛行ユニットが下ろされたのを確認する。

 第7艦隊副司令エドワーズ中将は司令官付の少女型アンドロイド「マイア」の報告をうけ、モニターを確認する。エドワーズは西郷と比べ武人的な雰囲気を持つ、名実ともに名称の誉れ高い男である。

「マイア、各車両の行動は全て記録してあるな」

「はい、ガバメント社関連の工場から出てきたところから、モニターできています」

 マイアはエレクトラ同様、専用のシートに腰掛け、巡洋艦ジュピターのコンピューターと直結している。副官のジェーン・ウエスト中佐は

「これで、ガバメント社を追い込むことができますか?」

「いや、無理だろう。でっち上げだと反論されるだろうし、連邦軍司令部の突き崩しがまだだから、握りつぶされるのがおちだ。もう少し、「マフィア」が連邦軍司令部のガバメントシンパの軍人を排除しないとね」

 マフィアと呼ばれる連邦軍司令部の革新派は、少しずつ連邦軍司令部に浸透し、ガバメント社の影響を排除しつつあった。憮然とした表情でジェーンは言った。

「悔しいですね」

「焦るな。亡霊作戦の進行は順調だ。今に状況は変わる。情報は切り札だ。切り札は最も効果的なときに使うのがセオリーだよ。それに、我々の情報収集能力を明るみに出すわけにはいかないしね」

 エドワーズはオペレーターにドラグーン部隊の位置と規模をフォルテシティ防衛軍に伝えるように指示する。

「奇襲に不利な昼間を選んだのは、出勤した従業員ごと、工場を破壊するのが目的かもな」

「あと、ブラックタイタンを破壊する映像を撮るのが目的でしょう」

「だろうな。飛行ユニットは撮影隊なんだろう。とりあえず、タイタンのデータを取られないように、最初につぶしておいて欲しいなあ」


 朝、ローウェルインダストリーは工場の生産ラインを停止し、工場従業員の出勤を臨時に取りやめ、設備の維持と保安のための要員のみ警戒に入っていた。フォルテシティ防衛軍の司令部では厳戒態勢をひき、早期警戒機や哨戒機を飛ばして監視を強化していた。第7艦隊から不審情報の提供をうけたフォルテシティ防衛軍の司令部は直ちにローウェルに派遣していた部隊に迎撃を命じる。待機していたマトソンやルイスは無人型ドルフィンを率いて、ローウェルインダストリーの空港から飛び立った。そして、完全装備のメタロイド50体を乗せた輸送機が続き、ブラックタイタンと3機のブルータイタンは背にフライトユニットを着け、ドルフィンの後を追う。フライトユニットはエネルギーをタイタンに供給する機能を持ち、タイタンは自らのフォースジェットエンジンで飛行する。そして、戦闘時はタイタンから分離して、無人戦闘機として攻撃を支援するものだ。

 先行するドルフィンが迫り来るドラグーンに向け、通常の手順に従い警告を発した。むろん、停止するわけもない。ルイスのドルフィンの後席に座るリームが

「マトソン大佐、ドラグーンにミサイルは通用しないので、飛行ユニットを狙います。おそらくカメラを搭載した無人のデータ収集機です」

「よし、真っ先につぶせ!」と、マトソンが指示を下す。


 マトソンとルイスのドルフィンと無人型ドルフィンがミサイルを発射する。リームはミサイルの複雑な機動を制御し、飛行ユニットを狙う。ドラグーンと装甲車が対空レーザーで迎撃するが、リームが制御するミサイルを捉えられなかった。6機の飛行体は回避機動をするが、苦もなく全機撃墜される。

「あの動きはドラグーンも装甲車も無人機です。みんな、遠慮なくやっちゃって!」とリームはアトス等に伝える。アトス、ポルトス、アラミスが操縦するブルータイタンはフライトユニットを切り離して着地し、すぐさま戦闘態勢を整える。

「リョーカ、僕らの3機のフライトユニットのコントロールを任せる。自由に使え!」

「了解、アクティブリレーション起動。メタロイド、フライトユニット全機をあたしの管制下に置きます」

 リョーカが操縦するブラックタイタンもフライトユニットを切り離し着地した。7機のドラグーンが3機のブルータイタンを無視して、ブラックタイタンを狙ってビームを放つ。ブラックタイタンは腕に装備された遮蔽フィールドを展開してビームを防ぎ、リョーカはフライトユニットに攻撃を指示する。フライトユニット4機は連携して大出力ビームを放った。自身の攻撃のため、遮蔽フィールドを無効にした2機のドラグーンはたちまち頭部や上半身を破壊され行動不能となる。ブラックタイタンは肩に装備されている対地ビームを発射し2機のドラグーンにとどめを刺す。半ば存在を無視されていた3機のブルータイタンは、リョーカの指示したドラグーンに襲いかかる。

 アトスのブルータイタンはライトサーベルの二刀流でドラグーンの攻撃をなぎ払い、ドラグーンの上半身を破砕した。ポルトスのブルータイタンは遮蔽フィールドで敵の攻撃をしのぎつつ、手にしたライトランサーでドラグーンのコックピット部を串刺しにし、沈黙させた。アラミスは右腕に装着したビームランチャーで、ブラックタイタンを狙う2機のドラグーンをたてつづけに手傷を負わせ、リームがドルフィンのミサイルでとどめを刺す。

「ブラックタイタンだけをねらうなんて、単純な奴らだ」とアラミスはあきれるしかなかった。ニーナから提供されたデータではもう少しましな動きをすると思っていたのが、まったく、連携ができていないのである。

 一方、輸送機から展開したメタロイドは人間サイズの火器しか扱えないので、ドラグーンを撃破することは無理だった。しかし、半数のメタロイドが残りの1機に集中攻撃をかけ、遮蔽シールドの中に足止めすることには成功していた。半数のメタロイドは後方に展開する装甲車の群れに遅いかかる。例えるならば戦車に歩兵が挑むようなものだが、その歩兵が戦車並みの火力を持ち、想像を絶するスピードで装甲車に襲いかかるのだ。これも1台、また1台と確実に仕留められていく。

 2機のドラグーンを完全に破壊したリョーカの指示を受け、メタロイド達はドラグーンへの攻撃をやめ、後方に展開する装甲車に攻撃目標を切り替える。遮蔽フィールドを解いたドラグーンは、格下のメタロイドを無視して、迫るブラックタイタンにビームを浴びせた、しかし、これもブラックタイタンの遮蔽フィールドに阻まれ、接近したブラックタイタンに対し、ライフルを捨てライトサーベルで迎えうつ。だがリョーカの敵ではなかった。ライトサーベルを持つ腕を切断され、無防備になったドラグーンはあっけなく真っ二つにされてしまった。残された装甲車は、4機のタイタンとメタロイド達の攻撃ですべて撃破され戦闘は10分足らずで終了した。


 最初にミサイルを撃っただけで何も出番がなかったマトソンは

「もっと、手こずるかと思ったが・・・」

「セレクターズも無人兵器を使うようになってきたんですね。でも、連携行動がとれない単純な人工頭脳なので、かえって対処は楽でした」とリームが状況を報告する。

「まあ、自立ロボットがあれば、テロリストを養成する必要もないのだろうが、こうも相手にならんものを出してきて、何を考えているんだ?」

「そのうち、バージョンアップして、手に負えなくなるかもしれません。油断は禁物です」とルイスは率直な意見を述べる。「もっともだ」とマトソンは返事をし、リョーカのブラックタイタンを改めて見る。

「それにしてもアクティブリレーションか、リョーカの撃破数がすごいな。プレストシティに引き渡すのが惜しくなる」

「だめですよ大佐、リョーカは私の妹なんですから。これから何人も生産されるのですから、それを待って下さい」


 セレクターズの指揮官モルガンは、潜水母艦の中で、攻撃部隊のドラグーンをモニターしていた。データ収集用の無人航空機が先に撃破されてしまい、期待していたデータを得ることはできなかったが、7機のドラグーンからのデータはかろうじてとれた。しかし、7機の改良型ドラグーンと自爆装甲車群があっという間に撃破されてしまい、司令室は重苦しい雰囲気に包まれていた。

「全く、相手にもならんな」とモルガンは憮然としながら言い放つ。

「アルトシティではブラックタイタンと良い勝負をしていたと思いましたが、今回、全く敵わなかったですね」とブライトが相づちをうつ。

「おそらく、操縦しているロボットが違うのだろう。タイタンシリーズは人サイズのロボットがコントロールしている。全く、どうしてそういう無駄な設計をするのかと思っていたが、あながち、意味もないことでもなさそうだ。操縦するロボットが変わるだけで、これだけ性能が変わるんだ。ライトサーベルでの勝負も全く相手にならなかった」

「ファントムのロボットはライトサーベルの使い手ですから、ライトサーベルを無効化しないと、全く敵いませんね」

「ライトサーベルはフォースフィールドの応用兵器だ。どんな装甲でも紙細工のように切り刻むし、防ぐ手立ては同じフォースフィールドの応用である遮蔽フィールドか、ライトサーベルしかない。しかし、遮蔽フィールドを張ってしまえば、自身の攻撃ができなくなってしまう」

「ファントムはその攻守の切り替えが見事ですね」

「カタリナのバックにいる奴らに、そのことを知らしめないといけないな。あと、まともに戦って敵う相手ではない」

 モルガンはプレストシティ攻撃のことを考えずにはいられなかった。

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