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『パンドラの契約者』

はるか昔、世界には悪魔が存在していた。悪魔は人と契約する事で超常的な力を与えた。契約者は悪魔憑きと呼ばれ、時に大火を起こし、時にイカズチを落とし、時に人の精神を狂わせた。

そんな厄災の様な悪魔と悪魔憑きが世に蔓延っていたが、一柱の悪魔が世界を変えた。

悪魔、パンドラ。

彼女は自らも悪魔でありながら悪魔が嫌いだった。

よって、自らの契約者と共に悪魔憑きを打倒して悪魔を一つの箱に封印した。

全ての悪魔を封印したパンドラと契約者は、箱を人の手の届かぬ場所に隠し、パンドラは箱という牢獄の看守となった。

そして、時は流れて現代。古い遺跡から精緻な箱が発掘され、とある日本の博物館に収納されることになった。だが、箱を輸送していた飛行機にトラブルが発生した。奇跡的に人命に被害はなかったものの災厄を抱えた箱は煙のように消えてしまったのだった。

それから程なくして、日本各地で常識では計れない非科学的な事件が発生するようになった。

解き放たれた悪魔が暗躍する世界となったのだ。

それから3年、人々は超常的な力を持つ悪魔の存在を次第に認識し、恐怖する様になっていた。

悪魔と契約した人間は悪魔憑きとよばれ、嫌悪される様になり、 政府による超常現象対策局が設立され、悪魔憑きを取り締まる様になった。

それが、『パンドラの契約者』という作品の世界観だ。

そして、そんな世界の中でどんな組織にも属さない個人で悪魔憑きを追う二人の人間がいた。

大戦黒矢と神坂葵。この作品の主人公とヒロインだ。

大戦黒矢。16歳、黒髪で中肉中背、一見すると地味な黒矢君はまさにテンプレ主人公という風情だ。とある高校に通う彼は、現代の悪魔パンドラの契約者だ。

かつて、悪魔憑きのせいで大切な人を失った彼は、悪魔も悪魔憑きも憎んでおり復讐の為に悪魔付きを追っている。自分もまた悪魔憑きである事を周囲には隠して生活している。

彼の目的は復讐と全ての悪魔を再度箱の牢獄に押し込めることである。

神坂葵。同じく16歳。黒矢と同じ高校に通っているが表向きは無関係を装っている。艶やかな黒髪、類い稀な美貌、スタイル抜群、成績優秀、趣味のピアノはプロレベル、実家が超資産家なお嬢様、一見クールな性格に見えるが実はお人好しの善人と、こちらもありがちとも言える学園アイドルだ。

彼女には親友と呼べる少女、紫歌がいたのだが、数年前、紫歌は悪魔をその身に宿して消えてしまった。

彼女の目的は紫歌を探しだして彼女を悪魔から解放する事である。

そんな、ある意味対極の目的を持つ二人なのだが黒矢にはこの広い日本で悪魔憑きを探し出す能力がない。葵は名探偵の様に悪魔憑きを見つけ出すのだが、いざ悪魔憑きと対峙した時に対抗する手段がない。

お互いがお互いに欠けているものを補う為に二人はコンビを組み悪魔憑き達と対峙して行くのだ。


というのが『パンドラの契約者』のあらましだ。

現代を舞台にした異能バトルといったジャンルだ。

そして、3巻まで読み終えた僕の感想は率直に面白いというものだった。

前半の葵ちゃんが少ない情報から悪魔憑きを探し出す所も後半の黒矢が悪魔憑きと戦うシーンもワクワクした。

そして、僕個人的にはコンビを組みながらも決して一心同体ではない所がいい。悪魔に憑かれて悪事をなす人間を同罪だと断罪しようとする黒矢と、悪魔憑きも悪魔に惑わされた被害者なのだと助けようとする葵ちゃんのギャップがこの作品をより一層面白くしていると思う。

そして、3巻では凶悪な悪魔憑きが国家を揺るがす大事件を起こして、警察も超常現象対策局も後手後手に回る中、二人が事件を解決する。

二人の正体は知られなかったが、その存在は世間にも超常現象対策局も注目される事になっていく。

と、そこでこの物語は終わっている。

確かにここで終わるのはあんまりだと思う。ここからが面白いんじゃないかって言いたくなる。三日無断欠席したという常盤さんの気持ちが少しは分かる。

うん。確かに『パンドラの契約者』と言う物語は面白い。

それが僕の正直な気持ちだ。

でも、同時にこれが、あまり人気が出ず3巻で打ち切りになった事にも納得できた。

なんと言うか、俺つえーー! しないのだ。バトルものでありながら前半はほとんど戦わないしいざ戦っても直情型の黒矢はあっさりと罠に嵌ってピンチになったりする。そこを葵ちゃんの機転で乗り越えるのだし、それがコンビとしての魅力なのだが、何でそんな罠に引っかかるんだよ? お前は馬鹿か? と思う読み手も多いだろうとなと思う。

そしてもう一つ、敵である悪魔憑き達がただの悪人という訳でもないのだ。例えば葵ちゃんの親友紫歌ちゃんは修学旅行中の事故で大勢の同級生が死にそうになっているのを救う為に悪魔と契約した。そして、悪魔を宿して生活する中で徐々に心がねじ曲がり世に災いを振りまく悪魔憑きとなってしまうのだ。

紫歌ちゃんだけじゃない。悪魔と契約を交わす人たちはそれぞれの事情があって契約する。

だからこそ、敵である悪魔憑きに個性が出て面白いと思う。

でも、僕もかつてライトノベルに多少関わったから分かるんだけど、ライトノベルは下手に入り組んだストーリーよりもシンプルな方がいいんだ。

極悪非道な敵が可愛い女の子を苛めて、それを主人公が俺つえーー! してやっつけて女の子から好かれる。

それでいいんだ。

それがいいんだ。

だから、この物語が人気が出なかったのも分かる。

売れない良作、そんな言葉が頭に浮かんできた。

これを漫画にしても売れないんじゃないか? そうも思った。


「・・・・・とりあえず小説は一通り見たから、もう一度常盤さんのネームを見てみるか」



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