プロローグ パンドラの契約者
『パンドラの契約者』という作品は、しばしば古参のファンからはゾンビ作品と呼ばれる事がある。
だがもちろん、『パンドラの契約者』にはゾンビが出演する、いわゆるパンデミック要素は皆無である。
では、何故そう呼ばれるかといえば、原作である小説が当時、あまり人気が出なかった事がその理由だ。
小説版『パンドラの契約者』は8年前、1巻販売部数が1万部少々と、現在、漫画版が4巻で520万部、1巻100万部以上を売り上げる、いわゆるモンスター漫画と呼ばれる作品の原作とは思えぬ低空飛行だったのだ。
その後、1年の間に2巻、3巻と発売されたがいずれも1万部を下回り、率直にいえばそこで打ち切りになったのだ。
更に2年も経った頃にはどこの本屋からも消え去り、発売部数の低さから古本屋でもまず見かけることはなかっただろう。
そう、『パンドラの契約者』という作品はその時に一度死んだのだ。
おそらく、この作品を知る全ての人が終わった。作者も含めてそう思っていただろう。
ただ一人を除いては……。
だが1年前『パンドラの契約者』は突如蘇った。
そして、まるでゾンビのように魅了する者を増やし続けている。
〜とある雑誌のコラムより一部抜粋〜