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ゆびきり  作者: sugarl
4/6

4 端的な印象

 コンビニに寄り夕飯を買い、自室に着いてひとまずベッドに腰かけ、左に倒れる。


「あー……腹減った。飯、食わないと……」


 二、三度繰り返したまばたきが、まどろみに変わる直前、心臓が早鐘を打ち始めた。

 明日がちらついてしまった。


「気管切開、喀痰吸引、四肢麻痺、経管栄養、パソコンでの意思疎通……」


 喀痰吸引は何度か先輩がやっているのを見たことがある。


「それを自分でやるって……どんな無理ゲーだよ」


 部屋のそこかしこに積まれたゲームや漫画などの未開封のオタクグッズを、横になったまま薄目で眺める。

 しばらく遊んでない。


「……帰ったら食って寝るだけとか、人生クソゲーすぎるな」


 明日なんて、来なければいい。




 ピピピピッ、ピピピピッ――ベチン。


「……飯食うの忘れてた」


 至ってシンプルな置き時計の目覚まし音に起こされ、ムクリと起き上がる。何も考えずシャワーを浴び、着替え、菓子パンひとつ口に突っ込んで部屋を出た。

 ワンルームの寮から数十秒で職場の更衣室前に到着すると、一足先に更衣を済ませた同期の伊藤さんと目があった。おはようございます、と固く会釈。


「おはよ、いつも以上に猟奇殺人犯みたいな目ね」

「いつも猟奇殺人犯の目で更に今ヤバいのか……ひとつ聞いていい?」

「?」

「武沢さんって、どんな人?」

「あー、今日がそうなんだ――しんどいよ」

「……そう、ありがと」

「どういたしまして」


 伊藤さんのざっくりと端的な、しかし重みのある返答に小さくうなずく。それ以上の答はないらしく、階段に向かう伊藤さんを横目にドアノブを捻った。

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