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2 ヒヤリハット
ステーション内で先輩のひとり(中村先輩ではない)とすれ違い会釈し、設置された少ないパソコンの席に腰かける。
「鈴木くん、滴下速度ちゃんと最後に確認した?」
「え」
パソコンに情報を入力しようとして声をかけられ、その手が止まる。
点滴操作の記憶を手繰る途中で、あからさまなため息。
「できてなかったから。あれじゃ三十分は早く終わる」
「すいません! した、と、思ったんですが……」
「したと思った、でこの仕事が務まると思ってんの? いつも詰めが甘い。ヒヤリハット書いといて」
「……はい、すいません気をつけます」
いつの間にか立ち上がって頭を下げている自分に、もはやあまり驚きもしない。
(レポートとか絶対読んでくれてないんだけど……あとやった気がするのにどうやって振り返れと)
読まれなかろうと仕事が終わってからの反省文になろうと、命じられた以上やるしかないのだ。
ゆっくり座り直し、疲労感に目頭を押さえてから天井を見上げる。
(あれ、でも中村先輩も確認してくれたような……まぁいいや)
ただの嫌がらせかもしれない。
が、休んでいる暇はなかった。