表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と懸  作者: 下川
1/1

梶音

幕末をイメージした異世界ものです。名前はすべて創作ですので、多少おかしいこともありますが、お気になさらず。

「鉄砲隊、撃ち方用意!」

 後ろに従えた鉄砲隊が、前の暗殺者達にその銃口を向ける。

 私は狙いを指し示すべく、剣の切っ先を暗殺者達を向ける。

「撃て!」

 私のすぐ脇を火縄銃の鉛玉が通っていく。暗殺者達は次々に倒れて、やがて誰も動かなくなった。

 倒れた奴らに近付く。かすかな呻き声が聴こえる。

 私はその声の主の喉を掻っ切って殺した。血が噴き出る。他の、まだ息の根のある者にも同じことをしていく。

 最後の一人の喉を掻っ捌こうとして、私は手をとめた。

「御苦労だったな、天羽てんう

 最後の一人となった青年は、端正な顔を苦し気に歪めながらも笑った。

「戦いは終わらぬ。俺の思想を受け継ぐ者に、この魂は継承されるのだよ」

「ふざけたことを」

 血が滴る刀を、青年——天羽の首に当てる。

「終わりだよ」

 ぐっと力を込めると、天羽の首はあっけなくその体から離れた。吹き出す血が、私の足に付いたのが分かった。少し落ち着いてみれば、掌も顔も、どこも血を浴びているようだった。

 これにて暗殺者討伐は終了。

 満足してその場を離れようとした時だ。

梶音かじおと様」

 呼ばれて振り返ると、提灯を持って佇む少女がいた。はて、誰だったか。

斎院さいいんと申します。帝がお呼びになっておられますので、ご同行願います」

 眼光が鋭い、気丈そうな少女だ。確実に見えているであろう目の前の死体の山にも、一切動じていない。

「帝が?」

「はい。服装を改める必要はないと仰せつかっております」

 改める必要はないといっても、酷い服装である。先程は暗闇で気付かなかったが、衣も血塗れである。

「この恰好で帝のお目にかかるとは……」

「お急ぎの様ですので、気になさらないでくださいませ」

 少し苛立った様子で、斎院が言う。

「分かった」

 良いというのなら、良いだろう。私は斎院の後ろについて、歩き出した。生温かい風が、あの死体の山から鉄臭い臭いを運びながら、私の頬を撫でていった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ