僕はフラン、ただのゴミ拾いです!
やぁ!初めまして!
ちょっと今忙しいんだけど後からじゃダメかな?!
僕の名はフラン!
この青い瞳!かっこいいでしょ!
髪は少しだけ長いから女の子によく間違われるけど、れっきとした男の子だよ!
なんでそんな走ってるのかって?
今日僕は寝坊したんだ!
1軒目の回収に遅れてしまう!
あの角を曲がれば1軒目さ!
フランは鉄の匂いと水蒸気が立ち込める街の中を猛ダッシュでかけていく。
彼の仕事は街のゴミ拾い。
幼い時、街に攻め入ってきたモンスターに両親の命を奪われた彼は、齢16にしてこの過酷な仕事のベテランである。
やぁおはよう、待っていたよフラン、もう少し遅れると危なかったかもしれない、皆の命に関わることだ、気をつけてくれよ?
1軒目の店主はそう言うと、こぶし大の濃い紫色した石を手渡した。
フランは少しばかり熱くなった石を受け取り、お札を貼り肩にかけた革製のカバンに放り込んだ。
ごめんおじさん!と、そして感謝の言葉を告げ二軒目へと駆けていく。
気をつけてな、フラン。
おじさんは、命がけの仕事をするフランを毎日見送っている。
フランは階段を何段も飛ばし軽々と駆け上がる。
15階建ての建物に入るお店や住居を周り、紫の石を集める。
この紫の石は魔石と呼ばれる。
全ての動力源となる生活必需品。
使用期間は丸一日、朝使うと翌朝捨てられる。
つまり休日はない。
ここは周囲を山に囲まれている、人々は高い鋼鉄の塀を作り、街を作った。
出入り口は南北二カ所、モンスターの襲撃が常に起こるため騎士団が常駐し警備している。
フランはパンパンになったカバンを抱え挨拶をしながら騎士達の頭を飛び越えていく。
騎士達はフランが今日は遅い事に気がついている。
気をつけろ!魔石にもしもの事があったら花火を打ち上げるんだ!すぐに誰か向かわせる!
騎士達は駆けていくフランに各々声をかける。
門を抜けフランは山頂を目指し駆けていく。
寝坊をしたフランは焦っていた。
徐々に熱くなっていく魔石が、貼り付けられた札を焦がしている事に気が付いていない。
腕を振り駆けていくフラン、その腕がカバンに触れ、火傷を負った時にはもう遅かった。
急ぎカバンを開け、問題の魔石をとり、できるだけ遠くへと投げる。
ポケットからマッチを取り出し、火をつけ花火を打ち上げる。
下では騎士達5名が待機していた。
そらみろと言わんばかりに馬に飛び乗りフランの後を追う。
先頭の騎士が吠える!
死なせはしない…!
フランは震えながら残った魔石に札を貼り直していく。
あぁ、父さん母さん、僕は今日死ぬかもしれない。
ごめんなさい…。
遠くへと投げた魔石からモンスターが生まれ出る気配を感じ取る、そして近くへ…近くへと、その気配が迫っている事を感じていた。
震えが止まらない、鼓動が早くなる。
ーーーーン…!
ーーーーーーン!
自らをスッポリと包みこむ、とてつもなく大きな影が現れた時、呼吸は乱れ息が止まった。
もう…駄目だ…。
諦めるなフラン!!
馬がいななく!
先頭の騎士が馬から天高く飛び跳ね延髄を、槍が鋭くつきさす!
巨大なモンスターはフランを見つめ吠え出した。
騎士が刺さった槍を掴んだまま腰から刀をとり背を切り刻んでいく。
痛みに吠え、暴れ狂いだすモンスター。
フランは座り込み動けないままだ。
気絶…しているのか?
後に続く4名の騎士が刀をとり、槍をとり、盾をとり我が身を鼓舞するかのごとく叫びモンスターに襲いかかる!
モンスターはこれまでにないほど吠え出した。
奴らには痛みも恐怖もあるのだという。
まるで小さな赤子のように暴れ狂いだし、奴の振り回した図太い腕の軌道上にはフランが…!
間一髪、隙間に飛び込み防いだ騎士と共にフランは舞い上がり地面に落ちていった。
イーヒン!
落ちた騎士に声をかける。
この世に百戦錬磨の騎士などは存在しないが、先頭を駆けた騎士は手練れである。
槍術、剣術、馬術ともに優れていた彼が、どのようにこの硬い皮膚を斬るか考えていた。
必死に背中に取り付き、考え抜いた彼は行動に出る。
剣を傷口に突き刺さし、槍を抜き背を登る。
頭にしがみつき、タイミングを冷静に見計らう。
次に奴が吠えた時、勝負は決まる!
頼む!皆!
彼がそう言い放った時、他の騎士達の表情が変わる。
覚悟を決めたのだ。
騎士達の一撃、一撃。
斬られ、刺され恐怖に支配され膝をつき天を仰ぐ赤子。
今こそ勝機!!
彼の槍は眼球から脳まで達し、モンスターの体は風に消え、また魔石だけがのこった。
ーー。
後は俺に任せろ。
詰所に戻るよう騎士に言ったのは、とどめを刺したガルツ。
フランも馬に乗せ山頂を目指す。
声をかけるが返事はまだない。
目に力はなく意識のみがここではないどこかにあるようだ。
山頂にたどり着きガルツはタバコに火をつけ一服。
うまいのだろう、清々しい表情をしている。
フランの意識はもどり、ガルツに話を聞き土下座をした。
無事で良かったと挨拶を交わしガルツは帰っていく。
フランには最後の仕事がまだ残っていた。
山頂には大きな縦穴があり、フランはそこにカバンごと魔石を投げ捨てた。
神子さま申し訳ありません…。今日は寝坊をしてしまいました。
下を向き泣き崩れるようにフランは正直に謝った。
僕は今日、悔し涙で枕を濡らすだろう。
山頂の縦穴、それを取り囲む4人の神子は魔石の封印をする。
祈りによる縦穴の封印をし、フランに歩み寄り頭を撫でた。
フラン、あなたの失態は許せるものではありません。
が、あなたからこれ以上何かを奪う事も許せるものではありません。顔を上げなさい。
後ろに続く少し呆れた表情をした神子は言う。
お姉さまはお優しいですね本当に。
神子らは血縁関係ではないが、互いの事を姉と呼ぶ。
あら、お姉さまもわかるでしょう?フランの事は。
えぇ、みな知っています。
ならば、良いではありませんか、私はフランが愛しくてたまらないのです。泣いても苦しくても、何度も立ち上がり、また泣き崩れても立ち上がるこの子が愛おしい。
高嶺の花に思いもよらぬ形で気持ちを伝えられ、悔し涙で溢れる顔が真っ赤に染まる。
ーー!
お姉さま!神子が恋愛感情を持つなどいけません!
私は今日が最後ですから良いでしょう?それにお姉さま方も私のとは違うかもしれませんが、そう思っているはずです。
私は待っています、あなたが大人になり私を迎えに来てくれる事を。
神子は耳元で囁いた。
だめだ、やっぱり僕は今夜枕を濡らしてしまう。
嬉しくて…。
思いつきでやりました。
最後らへん寝ぼけてます。
すいません。