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フランカーレ  作者: 銭田さん
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 都医者ヨグリとその娘 前編

 ヴェルフィン国の東の端にある街ヨコハマは思っていた以上に人通りの少ない街だった。昔は発展していたらしいが戦争で全て焼けてそれから三百年もの間ほとんど発展していない。だからこそ、ここに追放させられたヴェルフィン国の都医者がいても不思議ではなかった。

 ヨグリがいるということが分かったのは偶然だった。伝道士仲間が魔獣をつれた一団にリンチを受け道端で死にかけているところをこの都医者に発見され治療を受けて2週間で完全回復したらしい。魔獣の攻撃で死にかけているのを治療するだけでもただの町医者にできないのにさらに2週間で完全回復させるというのはいったいと思い尋ねると彼はあっさり昔、自分が都医者であったことを明かしたらしい。今回、彼を訪ねたのは仲間を治療してくれたことへの感謝と旅で使う薬を買うためという名目だ。



 しかし若者をまるで見ない。出会うのは涼んでいる老人と物乞いの中年ばかりだ。街に出稼ぎに若者全員行ったとでもいうのか。とりあえず彼はノートに「ヨコハマは若者がいない。」とメモをした。そのうち報告書にしてまとめて委員会に提出しなければ・・。

伝道士仲間から居場所は聞いている。



 ×月○日

 若者たちが次々に病で死んでいく。若者の流行り病だろうか。

 ×月○○日

 いくら何でも減りすぎだ。しかしどの若者も違う病で死んでいる 。どういうことだろう。

 ×月×○日

 やっと、対策がみつかった。やはりあの娘だ。しかし・・・

 



 なんだろうドアを叩く音がする。私は注意深くドアを開く


 「失礼、私は伝道士のゲルニカともうします。あなたがヨグリ様でよろしいのでしょうか?」


 久しぶりの客は再び伝道士だった。

 

 「ああ、」


 私は声を低くして答える。 

 

 「よかった。仲間に聞いていた場所が間違いだったらしく。探していました。」 


 伝道士が相手なので一応丁寧な口調にかえる。

 

「それはさぞ大変だったでしょう。伝道士殿をお迎えするのに十分なもてなしはできないがあがってください。」






 都医者ことヨグリの家は普通の民家だった。ヨグリは几帳面なのか資料が整理整頓されていた。

 ヨグリに最初会ったとき彼は怯えの表情をしていた。ヨコハマのような場所に住んでいるなら普通の反応といえるだろう。ヨグリは30か40くらいの男でこれといって何か特別な感じはしなかった。いすに座っていると16歳くらいの女の子がお茶を運んできた。こんなところではお茶でも高級品だろうにな。


「ありがとう」

 

 お礼を言うと女の子は恥ずかしそうに

 

 「どういたしまして」

 

 と答えた。

  

 「その娘は私の娘なんだよ」


 突然ドアが開きヨグリが出てきたので少し驚いたがそれを悟られないようにすぐに返事をする。そして仲間を助けてくれたことへのお礼と薬の件を伝えた。

 

 「ふむ、何が入り用なのかな?」


 「メルシンが最近きれてきたのでその補充を」


 「そうですか。ならすぐにでも用意できる。少々お待ちください」



 ヨグリが席を立った瞬間、外から男達のウォーーーという叫び声が聞こえた。


 「あいつら、また来たのか」


 「いったいこれは?」


 「隣の街の不良グループだよ、あいつら私が自分達のボスを殺したと思ってるんだよ」

  

 そう言うとヨグリは娘を抱きしめ「大丈夫」と繰り返していた。

男達は何かををこの家に投げつけているようだ。


 「大丈夫。この家には私が許可した者以外入れないようにしてある」

 


 しばらくすると音は止み男達もどこかへ消えて言った。


 「ユキ部屋に戻っていなさい」

  

 ヨグリは娘に指示した。


 「ヨグリさん。あいつらが勘違いしている理由教えてください」


 数分後ようやくヨグリは口を開いた。


 「今、この街で若者が病死するということが相次いでいる。彼らのボスも病気になってね。彼らは金を出し合って私のところに来たがもうそのときは手遅れでね、どうにもならなかった。」


 「しかし、ここまでするなんて・・・」


 「伝道士さん。仲間に聞いていた場所と違うところに我が家があったと言っていたね。これが原因さ。空き家を勝手に使わせてもらっている。しかしこれでは医者家業が出来なくてね。困っているんだよ。いやしかし伝道士さんのメルシンはすぐに作れますから安心してください。」

 

 「ヨグリさん。引っ越しませんか?」

 

 「えっ?」

 

 「人の困りごとを解決してこそ伝道士です。ぜひ手をかさせてください。」


 「しかし、移ってもすぐにばれるから、意味がないと思うが」

 

 「任せてください。それについては俺に考えがあります。」


 とりあえず、一晩この家に泊まることになった。夕食はユキがつくってくれた。 


 「うん、すごくおいしいよ」


 「そっ、そうですか。よかったです。正直、伝道士さんがすきなものってよく分からなくて、なのでとりあえずお父さんの好きなものを作ったんですけどお口にあってうれしいです。」


 必要な物があるので隣街に行ってくると言ったら、ユキもほしい物があるので行きたいと言ってきた。どうやらあの不良グループがいるので一人で外に出ることを禁止されていたらしく「伝道士さんと一緒ならいいでしょ」というのが彼女の主張だった。もちろん止めたがヨグリからも連れて行ってやってくれと頼まれてしまいしょうがなく明日は二人で買い物に行くことになった。



 魔信機という伝道士が連絡を取り合う用につくられた物をヨグリに渡しユキと隣街に出発した。


 隣街のオオクボはヨコハマとはうってかわって若者が多い。どちらかというと老人の方が少ない印象を受けた。とりあえず先にユキの買い物を済まそうと思いユキに買う物を尋ねるとユキは恥ずかしそうに「一人で買うので大丈夫です。」と言うのでしょうがなく別行動をすることになった。集合場所と時間をユキに伝えてこちらも契約のための準備品を買う為に店に入ろうとした時店の鏡にユキを見つめる人間がいるのを見つけた。不良グループがつけていたのかと思ったがそうではないあれはもっと危険なものだ。まずヨグリに連絡を入れる。その後すぐにユキを追った。幸いユキは店から出てきた直後だったのですぐにユキの手をとり走って逃げた。人通りの多い道を使うがだんだんと人が少なくなっていき最後には人がいなくなっていた。ヨコハマに続く道は男達によってふさがれていた。男達は魔獣をつれていた。後ろを振り返るとそこにも魔獣をつれている男達

  

 「ユキ、オオクボに戻るぞ」


 返事を聞く前にユキを連れオオクボに続く道に突っ込む。


 男達がつれている魔獣はユニムという魔獣だ。鼻がよく効く、そして主人の命令には確実に従う。

  

 俺は煙幕を男に投げる。しかし煙幕は人の視界を防げてもユニムの鼻は騙せない。煙幕には第二の効果がある。それは魔獣にとっての激臭を放つ効果である。男達を突破して、オオクボに戻る。すぐに男達はユニムに命令をだす。「殺せ」と。そして、ユニムは男達に噛みつき嚙み殺した。とっさの判断だったんだろう。ユニムはほとんど視力がないつまり匂いで判断する。その臭覚は激臭によって弱らせられている。ユニムは1番近い、人間の匂いに襲いかかったのだ。

 


 あくまで倒したのはオオクボのみちを塞いでいた方だ。急いで逃げる。 


 オオクボに近づくと叫び声が聞こえた。悲しい声だった。オオクボに着くと理由が分かった。



 

 若者達が皆、死んでいた。











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