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戦国武術会編第6話〜一日目の夜〜

 ここは俺と兼次の部屋。後は寝るだけとなった俺達は、南条院グループについての話をしている。とりあえず俺は先程拓海さんから電話で聞いた事を、一部を除いて兼次に伝えた所だった。


「北条院グループは元々南条院グループの傘下にあった会社が独立してできたって事だったのか」

「そう。明日香の祖父と父親の二代で大財閥にまで成長したって言ってた」


 しかし拓海さんが他に知っていた事は特に無く、ごめん。って言われた。と兼次には言っておく。

 さて、後は寝るだけとなったにしてもまだ九時。こんな早い時間から寝れそうにもない俺は何をしようかと考える。言うまでもなく兼次は部屋を出て行ったが、その事はあまり気にしないようにする。


 話は終わったし、里美の所にでも行くか。


 里美を元気付けてあげよう。そう思い付いた俺は部屋を出、里美の部屋へ向け歩き出す。途中、廊下で缶助とすれ違い少し話をしたのだが、綾子さんと戦っていたら死んでいたかもしれないと、缶助は冗談混じりで言っていた。



コンコン


「は〜い!」


 この声は澪か? どうして澪が里美の部屋に……。

 俺は名を名乗り、ドアを開ける。中に入ると里美をはじめ、澪、明日香、七美、雪江さんが俺を迎えてくれた。俺はその状況に驚きながらも部屋の床に座る。


コンコン


間もなく、再びドアのノック音がした。


「私だ。入ってもいいか?」


 言って涼子が部屋に入ってきた。どうやらみんな、考える事は同じだったらしい。


−−−−−−−−−−



「えーそれではこの愛川七美の十八番。フジータカシでナンダカンダ」

「いいぞ七美〜」

「ピューピュー」


 あの後さらに、詩織里、玲奈さんとバカップルが部屋に来て、皆でワイワイ盛り上がっている。綾子さんや梨香先生など、大人の女性陣も仲良くお喋りをしているとの事だ。

 そして俺は少し騒ぎ疲れたので、窓の外にあるベランダから海を眺めていた。

 夜の海。暗闇に覆われ、見えなくなってしまった水平線、暗闇から聞こえる波の音。里美はあまり好きじゃないと言っていたが、これはこれでいいと思う俺。


ザザーン


「ふぅ……」


 なんかこうやって一人でいると色々な事を思い出すよなぁ。


 里美と一緒に過ごし、兼次、幸菜姉ちゃんと出会った幼稚園時代。あ、一応玲奈さんとも出会っていたのか。

 里美と毎日一緒に登園したなぁ。慶二、手を繋ごう。なんて言ってさ。

 休日には二人で弁当持ってハイキングにも行ったな。持ってきたバウムクーヘンを落っことした里美が大泣きしちゃってさ。


「どうしたら泣き止んだんだっけか……」


 あ、俺が今度作ってあげるよ。って言ったらピタッと泣き止んだんだった。

 今考えると当時の里美は泣き虫で純粋だった。今も一応その名残はあるけど、今は昔みたいに素直じゃないよ。


 そして俺と里美は小学生になった。

 幼稚園の時ほどは、里美と一緒にはいなかったな。里美は空手、俺は町をぶらぶら。これといった目的はなく、ただ一人で遊び回っていた。夏は虫を捕まえたり、冬はかまくらを作ったり。


「初恋もその頃だったっけ」


 顔はすっかり忘れたけど、とにかく綺麗で、泳ぎも綺麗だった事は覚えてる。まあ、結局その人とは何もなかったけどね。


 そして人を殺し、二回も殺されかけた。


 あまりいい思い出じゃないな……。

 まあそんなこんなでじいちゃんの所で生活する様になったんだな。向こうでも色々な人に出会った。外康さん達や小春達。小中高と一緒に生活したクラスメート。


 どれも掛け替えの無い俺の思い出だ。そして今、皆とこうして過ごしているのも。



 思い出の容量に制限なんか無い。



 だから 俺は今までの思い出を大事にして、そしてこれからの思い出を作っていく。



 …………。



 なーんてね。たまにはキザな事を考えたくなるよね。


「慶二く〜ん! おいでよ〜!」


 澪が元気一杯に俺を呼んだ。


「おう! 今行くぞ!」


 俺はとても幸せだ。里美がいて皆がいて。そしてこの幸せはこれからもずっと続く。


 武術会に関係の無い事を考えていたのだが、とにかく、俺達の戦国武術会一日目が終わった。

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