戦国武術会編第4話〜川中島の再来・1〜
遅れてしまい、申し訳ありませんでしたっ!
『一回戦目は山県対宇佐美ー!!!』
上杉、武田両チームがリングを挟んで向かい合う。そこから山県と宇佐美が前に出、リング上に上った。
会場が揺れる。この盛り上がりは、まるで震度七の地震が起こったかのようだ。
試合形式は剣道、卓球、テニスなどの団体戦と同じく、総当たり戦。先に三勝したチームの勝利との事。その対戦表が超巨大テレビ……超巨大パネルに、映った。
上杉先鋒・宇佐美定充
武田先鋒・山県昌影
上杉次鋒・北条低広
武田次鋒・内藤和豊
上杉中堅・由里川亜紀(柿崎)
武田中堅・高坂昌
上杉副将・伊勢里美
武田副将・馬場小春
上杉大将・伊勢綾子
武田大将・山本缶助
ドンマイ缶助。首の骨だけは守っておけよ。
それはさておき、里美と綾子さんはそれぞれ名前を脳内変換してお伝えしました。
俺はなんて読者に優しい主人公なんだろうね。主人公の鏡だよね。
今のはそっと流しておいて下さい。
『それでは試合開始ー!!!』
「薙ぎ払え!!! 猛虎双爪!!!」
試合開始と同時に、昌影が武器を出した。身の丈程ある大きな二本の双戟、名前は猛虎双爪。山県はあんなにでかい武器をよく使えるよな。
「かっさばけ!!! 割砕斬馬!!!」
今度は宇佐美が叫びと共に自分の身の丈程有る大きな刀、斬馬刀を出現させた。その《斬馬刀》については、あとがきで詳しく説明する事にしよう。
名前は割砕斬馬だそうだ。
−−昌影が動いた。
「オラァァァ!!!」
右手に持っていた戟を上から思い切り振り下ろす。常人には見えない程速い一撃。それを宇佐美は右に交わした。山県が放った一撃は、リングの一部を破壊した。そして昌影は、すかさず左手の戟を横に薙ぎ払うように、彼目掛けた。それを宇佐美は、武器を地面に突き刺すかのような構えで止めた。
その間一秒とちょっと。
アホだよアホ。能力無しでそれって、彼らは超人だよね。
「超人ね。あの二人は」
「……キモい」
キモい…ですか…。とにかくこの二人も同じ事を思っていたようだった。
「慶二君、ポップコーン買ってきてくれないかしら?」
「えっ……」
「はいお金」
と、俺が何かを言う前に成美さんはお金を俺に渡した。
拒否する前にお金を渡すなんて卑怯だ。拒否権無いし。
「分かりました。行ってきますよ」
「ありがとうね〜♪」
「……頑張れパシリ」
そのパシリこと俺は、売店に向かうべく観客席を立った。
たしか売店は闘技場入り口近くにあったよな…。競技場と同じような構造だから、入り口以外にも有るとは思うけど……俺達の席から一番近いゲートはB-2。ゲートから右に二つ目の階段を下りて、下から五番目の列。よし覚えたぞ。
早く買って早く試合を見たい。山県と宇佐美の戦いが見たい。当然俺の歩みは自然と早足になる。
しっかし他の皆は何処で見てるんだろうな。なんて思いながら歩いていると、四分蔵がいた。
「そこの彼女〜。拙者と二人で愛の武術会を開催するでござるよ〜」
「キャー! 近寄らないで黒豚ー!」
……ん、売店見っけ。うわっ、すっごい並んでるな。良くても二十分くらいは待たされそうだ。
正直並ぶのって好きじゃないんだよ。暇だし、トイレに行きたくなるし。でも、並ぶしかないよね。他の人も並んでるんだし。
そして俺は渋々列の最後尾に並ぶ。そして、辺りを見渡した。すると、サッカーを見に行った時のような感覚を覚える。盛り上がる観客席と、その声援が聞こえてくるこの通路。野球場には行った事が無いから分からないが、球場もこんな感じなのだろうか。
サッカーと言えば、オリンピック出場しましたね。柏木上手かったですよねー。頑張れオシム!!! 頑張れ反町!!!
なんて話をしてたら並んでいる人数が減ってきた。この様子だとあと二、三分って所かな。
「そこの彼女〜。拙者とリング上で愛の−−」
「キャー!!!」
俺は他人。俺はポップコーンを買いに来たただの高校生。奴は知らない黒豚。一切合切面識は無い。よしっ。
「いらっしゃいませー」
「ポップコーン大を三つと、オレンジジュースLを三つ下さい。あと、俺は他人ですから」
「畏まりま……え? た、他人が…どうかなされましたか?」
「いえ、気にしないで下さい」
売店の人は不思議そうな顔をして、ポップコーンとジュースそれぞれ三つづつを用意してくれた。それを代金と引き換えに受け取る。
と、そこで俺は彼女にすべき質問を思い出した。それは、彼女が誰に雇われているのか、という事。俺は子孫同士が戦うこの大会。その大会に何かしらの関わりを持つ企業、団体の事が気になったのだ。
それは何故か。
そもそも俺達子孫は力を持ちながら、決して歴史の表に出る事は無い。敏雄さんのように、世界を手中に治めるという子孫は世界にごまんと居る筈。なのに、何故誰も歴史の表に出ないのか。この問いに対する答えは小学生の時、既に導いている。それは何らかの組織が子孫を抑圧、抑止しているから。
そして問題はここからだ。
俺達を抑圧している組織は何処か。
聞いてみると彼女は不思議そうな顔をしてから言った。
「よくわからないですが、南条院グループの会社です」
「南条院グループ?」
「はい。とても有名なグループですよ」
「有名…ですか……」
後ろがつかえているので、それ以上の会話は出来なかった。
北条院グループに対して、南条院グループ。しかも有名ときたか……。子孫を抑圧する団体が南条院グループだろうと、そうで無かろうといずれにしろ、この南条院にヒントは隠されていることは確かだ。この組織を調べるとして、里美に手伝えって言っても、あいつ馬鹿だからな。頼りの兼次は沙織里にべったりだから、小春や缶助にでも……。明日香なら南条院グループの事を知ってるかな。今日の夜にでも聞いてみるか。
そして俺は両手にポップコーンとジュースを持って歩き出した。
しっかし人がまだ入ってくるんだな。もう満席どころの話じゃないぞ。俺が戦う時もこのくらいの人達に見られるのかな。
だが、何故こんなに沢山の人達が見に来るんだ? そんなに俺達を見たいのか?
「前田慶二さん、ですか?」
と、後方から可愛らしい声が聞こえてきた。俺は少し期待をしながら後ろを見る。口元のにやけを直す時間は無かった。
「そうですけ−−」
振り向いた先には俺と同じか一つ下くらいの美少女が立っていた。全員そうなんですが、容貌は皆さんのご想像にお任せします。
「やっぱりそうでしたか。はじめまして、私は磯崎絵麻といいます」
「は、はじめまして……」
え、これって逆ナンパ? やっべー、俺やっべー。緊張シマクリーノだぜ。
「それで用件は何です?」
俺はウキウキ気分で聞いた。
しかし彼女の口から放たれた言葉は、俺の想像とは掛け離れていた−−。
「死んで下さい」
大太刀(斬馬刀)
150cmから最大は200cmを越える程大きな剣を大太刀と言います。重さは2kgを越え、使用方法としては、馬の足を斬る・馬の上から歩兵を斬るの二通りが考えられています。
現代のフィクションにおいては、敵将を馬ごと斬ることができる武器として表現し、大太刀を「斬馬刀」と呼ぶ例もあります。
今回はるろうに剣心に習い、大太刀を斬馬刀と表現しましたが、るろ剣の斬馬刀と、大太刀は異なる刀です。