戦国武術会編第2話〜夜の謀略戦〜
ガチャ
部屋に兼次が入ってくる。俺は兼次と二人でこの部屋を使っている為、部屋には俺しかいなかった。
そしてその部屋に入ってきた兼次は、手に一枚のプリントを持っていた。
「慶二、これが対戦表だ」
「サンキュー」
俺は兼次からプリントを受け取り、そして、その対戦表を見た。
−−−−
チーム上杉
伊勢綾子(上杉謙信)、伊勢里美(上杉謙信・織田信長)、宇佐美定充(宇佐美定満)、北条低広(北条高広)、由里川亜紀・柿崎景明(柿崎景家)
vs
チーム武田
山県昌影(山県昌景)、高坂昌(高坂昌信)、馬場小春(馬場信春)、内藤和豊(内藤昌豊)、山本缶助(山本勘助)
チーム織田
森乱丸(森蘭丸)、柴田負家(柴田勝家)、佐々成正(佐々成政)、滝川二益(滝川一益)、丹羽長英(丹羽長秀)
vs
チーム本願寺
下間雷廉(下間頼廉)、本願寺拳如(本願寺顕如)、下間雷照(下間頼照)、吉川隆景(雑賀孫市)
チーム徳川
本多忠海(本多忠勝)、榊原高政(榊原康政)、井伊直正(井伊直政)、酒井有次(酒井忠次)、服部四分蔵(服部半蔵)
vs
チーム斉藤
斎藤道杉(斉藤道三)、稲葉二鉄(稲葉一鉄)、斎藤駿三(斉藤利三)、安藤森就(安藤守就)、氏家卜然(氏家卜全)
チーム猛将
長野成正(長野業正)、上泉亘綱(上泉信綱)、山中鹿之助(山中鹿之介)、鬼小島太郎(鬼小島弥太郎)、加藤清雅(加藤清正)
vs
チーム豊臣
羽柴猿吉(羽柴秀吉)、蒲生氏里(蒲生氏郷)、竹中全兵衛(竹中半兵衛)、黒田鈍兵衛(黒田官兵衛)、蜂須賀政勝(蜂須賀正勝)
チーム名将
鍋島直重(鍋島直茂)、松永久英(松永久秀)、宇喜多尚家(宇喜多直家)、尼子常久(尼子経久)、陶春賢(陶晴賢)
vs
チーム京都
浅井永政(浅井長政)、細川藤隆(細川藤考)、高山宇近(高山右近)、磯野数昌(磯野員昌)、藤堂鷹虎(藤堂高虎)
チーム西日本
川岸澪(大友宗麟)、立花雪江(立花道雪)、五十嵐沙織里(長宗我部元親)、鬼小島玲奈(毛利元就)、御堂涼子(島津義弘)
vs
チーム東日本
村上梨香(北条氏康)、土江洲里奈(風魔小太郎)、五十嵐詩織里(伊達政宗)、北条院明日香(今川義元)
チーム島津
島津良久(島津義久)、島津伊江久(島津家久)、島津寿久(島津歳久)、新納唯元(新納忠元)、川上久秋(川上久朗)
vs
チーム三成
前田慶二(前田慶次・武田信玄)、直江兼次(直江兼続)、真田幸菜・幸雄(真田幸村)、石田成美(島左近)
チーム歴戦の強者
源由経(源義経)、足利鷹氏(足利高氏)、武蔵坊片慶(武蔵坊弁慶)、北条早運(北条早雲)
−−−−
「こんなに集まったんだな」
「ああ。今大会は異例だそうだ。俺もさっき見たが、驚いたよ」
異例の集まり方…ねぇ。
それにしても一回戦目は島津か…。島津…島津…島津…。
「あーっ!!! 思い出した!!!」
「ん、何をだ?」
島津兄弟って、秀秋さんが言ってた人達じゃん。秀秋さんに知らせないと。
…って秀秋さんに連絡しようにも、圏外。とりあえず俺だけでも会ってみるか、どうするか…。
偵察と思われたりは…。それは説明すりゃ大丈夫か。
しかし今は夜の一時。時間が時間だから会うのは明日にしよう。
今日は久しぶりにあいつらと会ったから、はしゃいで疲れちゃったし。早く寝るか。
「じゃあ俺は寝るけど、お前はどうする?」
「さおりんの所に行ってくる」
はいはいそうですか。いってらっしゃーい。
…行ってしまった。
「明日か…。なんだかワクワクしてきたな…」
殺し合いじゃ無くて、純粋な力比べ。俺はこういう機会を望んでいたのかもしれない。
それは外康さんも同じ気持ちなんだろうか。多分そうなんだろうな…。
まっ、今すべき事は明日に備えて寝るって事かな。
俺はベッドに寝転んだ。高級感溢れるベッドで、とてもフカフカだ。
「つってもやっぱり、我が家が一番だよなぁ」
と、そこで俺の意識は途絶えた。
…。
……。
………。
コンコン
「お、起きてる…?」
反応が無い。やはり慶二は寝ているのだろうか。私はもう一度慶二の部屋の扉を叩く。
反応無し。どうやら寝ているみたいだ。慶二が寝ていると、下手に緊張しなくて済むので、助かった。
私は扉を開けて、慶二の部屋に入った。暖房が効いているので、廊下の寒さとは大違いだった。私は浴衣の上に羽織っていたセーターを取る。
私は兼次に部屋を追い出された詩織里に部屋を追い出された為、仕方なくこの部屋に来ているだけ。変な事をする為に、部屋に入った訳じゃ無いのに、何故か緊張する。
って変な事って何よ!
とにかく、慶二の寝顔だけでも見ておこう。寝顔をみるくらいだったら怒られないし。
私はそう思って慶二の布団に近づいた。
あれ?
慶二の他にもう一人、慶二と一緒に寝ている人がいる。
「むにゃむにゃ、お館様…。どこまでもお供させて頂きます…」
さてこの馬場小春とかいう女、いかにすべきか。
いや、彼女は慶二と私がアレな関係だという事を知らない可能性が有る。となると、問題はやはりこの男か…。
「この浮気者ー!!!」
ボゴァ!!!
「のふっぁ!!!」
え? 何? なんでこんなに顔が痛いの?
誰が俺の顔を殴ったの? 誰が俺の寝込みを襲ったの?
「やっと起きたわねこの浮気者!」
里美? 浮気?
小春さんが俺の布団にいる?
「むにゃむにゃ…。お館様ぁ…」
何で? どうして?
「あんた…。小春さんと寝たわね…?」
「は?」
まぁ結果的には里美の言った、寝たわね。な訳だが…。
「むにゃむにゃ…。お館様って大きいんですのね…」
うわぁ…この状況でそれを言っちゃ…。
「け、慶二…! まさかあんた本当にっ…!」
「むにゃむにゃ…。中学生の時は私より小さ…」
身長の話かよ! 紛らわしいんだよ!
まぁいいや。眠いから寝るとしよう。その前に小春さんを起こさないとな。
「小春さーん起きてくださーい」
「さっさと起きなさいよ!」
「んっ…」
俺の声ではびくともしなかった小春さんが、里美の怒声で目を覚ました。
「お、お館様っ! もしかして私、寝坊をしてしまったのですか!? も、申し訳ありません!」
小春さんはとても焦って、時計を見た。と同時に安心をしていた。
ちなみに俺のナレーションからも分かると思うが、とても眠い。
「じゃあ小春さん、里美。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ、お館様」
「ちょっ!慶二!」
慶二は一秒で寝てしまった。これはこれである意味天才なのかもしれない。
しかしそんな事より、問題なのは−−。
「上杉がこの部屋に何の用です?」
この、馬場小春とかいう人の事。何故この人が慶二のベッドで寄り添って寝ていたのか。
「あんたこそ、慶二に何の用よ」
「私はお館様が寝込みを襲われないように、と。お館様の為に、ご一緒させて頂いたんですのよ」
「ならどうして寝てんのよ」
「そ、それは…。ついうっかり…」
そういえばこの人はドジばかりするって慶二が言ってた気がする。そのドジが発揮されたのかな…。
「とにかく、この部屋はもう大丈夫だから。自分の部屋で寝なさいよ」
「それはできません」
きっぱりと言われた。私は冷えた頭に、再び血が上ってきた。
「何でよ。訳を言いなさいよ」
「私は貴女が許せないからです」
私が許せないから? 何を言っているんだこの人は。昨日会ったばかりのこの人に、そう言われる意味が分からない。
「何であんたにそんな事を言われなくちゃいけないのよ」
「身に覚えはありませんか?」
「無いわ。あんたに言われるような事は何も」
彼女は、そうですか。と言ってベッドから出てきた。
次の瞬間−−。
「なら言いましょうか」
「えっ!?」
いつの間にか彼女は私の背後に回っていた。
「貴女達親子がお館様に行った仕打ちの数々…。と言えば分かりますか?」
私は後ろを向けなかった。彼女が言った事に動揺したのもそうだが、彼女の動きが見えなかった事。そして彼女から放たれる殺気。
私はまさに、蛇に睨まれた蛙だった。
「いくらお館様が許そうと、私は貴女達を絶対に許しません。トイレに付いて行った時、お館様に殺すなと言われなかったら、私は確実に貴女を殺していました」
慶二が言った? まさか、この人とトイレに行ったのはその為なの?
「お察しの通りですわ。それにしても今頃気付くなんて、貴女はお館様をまるで理解なさっていないんですのね」
彼女の言葉はまるで槍のように、私の心臓を性格に貫いてくる。
彼女は間違った事を言ってない。全て正論。
「貴女を殺すのは簡単です。しかし、それはお館様の意に背くので、止めておきます」
そして彼女から放たれていた殺気が消えた。
しかし私はまだ振り向く事が出来ない。
「それではまた明日」
バタン
私達は確かに慶二を傷付けた。でもその分、私に出来る事なら何でもやろうと思っていた。
でも私は、結局何も出来てなかったんだ…。
でも…。
「絶対に負けないんだから!」
彼女にも、そして自分にも。
今日はもう眠いから寝よっと。
そして私は一秒で寝た。
「まったく…。私としたことが…」
ここは集会場。時間が時間なので、その場にいるのは小春一人だけだった。
「確かに。敵に塩を送るなんて、お前らしく無いな」
と、小春の独り言を聞いていたらしい一人の男が、笑いながらやって来た。
男は左目に眼帯を付けていて、それがとても似合っていた。
「うるさいわ。で、何か分かったの?」
「んにゃ、なーんも分からなかった。まー、二人で調べられるような代物じゃ無いってこったな」
「そう…」
が、男はそのまま小春に近付く。そして、小春にしか聞こえないような声で言った。
「この大会、政府が絡んでいる可能性が高い…」
「そう。やっぱり…」
小春は予想通りといった風に相槌を打つ。
「分かったのはそれくらいだ。近藤らが何を企んでいるかは分からん」
「この事はお館様に…?」
男は首を横に振る。
「知らないに越した事は無い」
「そうね…」
そして一通り伝えるべき事を伝えたのだろうか。男は小春から離れた。
そして何かを思い出したかのように言う。
「あ、そうそう。あの二人、付き合ってるらしいぞ。残念だったな」
「その事だったら気付いてるわよ。私にはお館様が誰かと付き合っていようが関係ない。私はただ、お館様を守るだけよ」
「そっか。じゃあおやすみ小春ちゃん」
「おやすみ缶助」
小春も缶助がいなくなったのを見た後、自分の部屋へと戻って行った。
そして海の上。子孫達の夜が更けていく。
−−大会開幕は明日。




