第50話〜サンタクロース・イズ・カム・イントゥー・タウン〜
お、ようやく50話目ですね。
これからもカブけよカブけをよろしくお願いしますm(._.)m
「クリスマスイブという大事な日に、わざわざすみませんわ」
「いや、俺も一度でいいからサンタクロースになってみたかったんだよ」
「ならよかったですわっ!」
今日はクリスマスイブ。日本はキリスト教の国という訳でも無いのに、何故俺達はキリストの誕生日を祝わなければならないのか。
そして何が聖なる夜だ。俺達は関係ないっての。
でもまぁ楽しいからいいや。
そんで今、俺と明日香はサンタクロースの格好をしている。
というのも今日俺は、皆にクリスマスプレゼントをあげよう。という、明日香が提案した企画に付き合うこととなったのだ。
「燃えてくるわね♪」
今回は七美にも手伝ってもらうらしく、トナカイの姿をした彼女はやる気満々だった。
「それではサンタクロースイズカムイントゥータウン作戦開始ですわ!」
「「おー!」」
もうすぐクリスマスイブから、クリスマスになろうとしていた時の事だった。
−−涼子の部屋。
「なんか最近、涼子も女の子らしくなったよね♪」
「そうですわね。性格も多少丸くなりましたわね」
「それは明日香もよ♪」
涼子の部屋に入るなり二人が話し出した。
ちなみに俺は、様々なプレゼントを詰め込んだ白い袋を持っている。言わば荷物持ちの役だ。
そして俺が涼子の部屋に入るのはこれが初めてだった。家が家なので、木の匂いしかしない。
本棚を見ると、所狭しと少女漫画が並んでいた。
「ありましたわ♪」
「どれどれ…」
皆には事前に、欲しいプレゼントを書いた紙を枕元に置いてくれ。と、言ってある。明日香が見つけたのはその紙なのだろう。
そして七美がその紙を読み上げる。
「〇月×日。私は剣道をして勝った。×月〇日。新しい少女漫画を買った。読んだら胸が締め付けられるような感覚に襲われた」
「詰まらない日記ですわね〜」
「日記かよ!!!」
こいつら、サンタクロースという特権を利用して、人のプライバシーを侵害しやがったぞ!!!
「あったあった♪」
と、七美がその紙を見つけた様だった。
「読んで下さるかしら」
七美は真っ赤な鼻に搭載されたペンライトのスイッチを入れ、読んだ。
「全国V2がしたいって書いてある…」
「そうですの」
そして明日香は少し考えた後−−。
「次行きますわよ」
「おう」
「分かった♪」
−−兼次の家。
「お金が欲しいです。だってさ♪」
「次行きますわよ」
「おう」
「分かった♪」
−−五十嵐姉妹の部屋。
「この二人は仲がいいんだね♪」
「そうですわね」
というのも、二人はダブルベッドで寝ていたからだ。
部屋は至って普通で、これと言って目立つ物は置いていなかった。
「それじゃあ沙織里から読むね♪」
「お願いしますわ」
「私は何も要りません。私の分をお姉ちゃんにあげてください」
「沙織里はなんていい子なんだ…。グスン…」
「いいお話ですわ…。グスッ…」
「詩織里のを読むね♪」
「これで私の分を妹になんて書いてあったら…」
「駄目ですわ慶二さんっ…! 想像するだけで涙がっ…」
俺達二人は涙ながらに、七美の言葉を待った。
「男が欲しい。あとお金も欲しい。あと化粧品にネックレスに指輪に鞄に…」
……。
「もう、沙織里にそれら全部あげようぜ」
「賛成ですわ」
「さんせー♪」
−−澪、雪江の家。
「雪江さんって本当に綺麗だな〜♪」
「七美。雪江さんの寝顔ばかり見てないで、早く読んでくださるかしら?」
「はーい♪」
次は澪と雪江さんの家。
二人は和室に布団を敷いて、二人仲良く寝ていた。
「まず澪から読むね♪」
「お願いしますわ」
「キャンディーをいっぱいちょうだーい」
「かっ…」
かっ…。
「「かわいいっ!」」
「澪はなんて可愛いらしいのかしらっ!」
そして明日香は眠る澪を抱きしめた。
「もうキャンディーを、沢山あげちゃおうよ♪」
「「さんせー」」
俺達は澪にキャンディー一年分を贈呈した。
そして次は雪江さんだ。
「読むね♪」
「お願いしますわ」
「一度でいいから前楽園遊園地で僕と握手がしたいです…。だって」
俺達は、前楽園遊園地の入場券を雪江さんの枕元に置いた。
−−四分蔵の部屋。
「拙者は女の子にモテた−−」
「次行きますわよ」
「「はーい」」
−−忠海の部屋。
「それじゃあ読むね♪」
「お願いしますわ」
「君の瞳にかんぱい。って言われたいなぁ。だってさ♪」
「慶二さんっ」
「任せろ」
「君の瞳にかんぱいっ…」
「それじゃあ次ですわね」
−−綾子さんの部屋。
「はぁ〜。女の私でも見取れちゃうくらい綺麗だな〜♪」
「そうですわね〜。世界三大美女でさえ、文字通り顔負けの美しさですわ」
お、明日香に座布団一つだな。
「それじゃあ早速読むね♪」
「お願いしますわ」
「私はさっちゃん、慶ちゃんと暮らせるなら、他に何もいらないです。強いて言うなら、さっちゃんに女の子らしさが欲しいかな♪」
しばらく俺達は沈黙する。
そして明日香が口を開いた。
「しんみりしちゃいましたわね…」
「うん。なんだかしんみりしちゃうね♪」
「ああ。綾子さんはいい母親だよ、うん」
と、そこでトナカイの七美が明日香の方を向いて言った。
「ねぇ明日香。綾子さんにプレゼントをあげようよ」
「そうですわね」
明日香は七美の案に賛成をした。勿論俺も賛成だ。
「よしっ。早速行くぞ」
そして俺達は綾子さんを見ながら元気よく言った。
「「「メリークリスマス綾子さんっ!」」」
…。
……。
………。
チュンチュン
朝。私は目を覚まし布団から起き上がった。
まずおかしいと感じたのは、自分の服装。
寝る前はパジャマを着ていた筈だった。
ドレスを着ていた。
何、これ…。
次に私は頭に違和感を感じた。
カチューシャが付いていた。
そのまま鏡を見た。
鏡の向こうにはお姫様がいた。
枕元を見た。
本と手紙が置いてあった。
私はまず初めに本を見た。
『女の子らしくなるには』
『現代クローズアップ。増える男女』
『脱・男女』
私は三枚ある手紙を読んだ。
『もう少し考えて生きたらどうですの!? BY明日香』
『この親不孝者が! BY慶二』
『それ見て少しは勉強しなさいよね! BY七美』
「何よ、これ…」