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綾子編第1話〜綾子の日常〜

綾子編の構想を練っていたら更新が遅くなってしまいました。

申し訳ありません。

 私の中を見てくれる人は誰もいない。



 私の本当の気持ちに気付いてくれる人は誰もいない。



 私は本心を言えないまま。



 ただただ暴れ回っていた。




 あの人に逢うまでは…。




…。


……。


………。



「「行ってきまーす」」


「いってらっしゃ〜い」


 バタン



 朝八時過ぎにさっちゃんを学校に送り出す。これが私の日課。


 しかし最近、送り出す人間が一人増えた。


 慶ちゃん。


 私に残された唯一の生き甲斐と言っても過言ではない、私の娘。その娘が、娘の唯一の生き甲斐である人、慶ちゃんと一緒にいる。

 そして毎朝、その二人が仲良く登校してくれる事、私はその事が何より嬉しい。


 二人にお弁当を作って、学校に送り出して、疲れて帰って来た二人に夕御飯を作り、休日は慶ちゃんとお買い物。その生き甲斐があるからこそ、私は働ける。


 私は病院に勤めている。私は家庭の状況から、勤務時間を短くしてもらっている。しかし短いとは言え、忙しくて仕方ない。


 更に医者というのは頭を使うので、座っているだけでもカロリーを消費し、疲れてしまう。そんな私が手放せないのがこれ。


 カロリーメートー。


 そんな事、どうでもいいわよね〜。


 私はいくら疲れても、二人がいれば大丈夫。二人がいれば乗り越えていける。



 娘と息子のお陰で、私は頑張れる。



 そうやって私は自分に気合いを入れる。これも日課の一つだ。



 そして私は出掛ける準備をする為、自分の部屋に行く。


 部屋の窓を空けると晩秋の木枯らしが吹き付け、部屋の温度を下げる。


 今日はとても寒い。


 あまりの寒さにすぐに窓を閉めてしまった私は、部屋着から外着へと着替える。


 温かい格好をした後、タンスから厚手のコートを取り出し上に羽織った。

 このコートはお気に入り。さっちゃんにも大好評のコートだ。


 化粧など、女性の身嗜みは既に済ましているので、準備の最終段階として私は鏡を見る。

 後は誕生日プレゼントに貰ったネックレスを首に掛けるだけ。


「フフッ♪」



 さっちゃんと慶ちゃんが汗水流して稼いだお金でのプレゼント。

 親として、保護者として、この上なく嬉しい。


 親として、本来なら娘の交際も心から祝ってあげたいんだれけど、正直に言うと複雑。


 相手が慶ちゃんで良かったと言うべきなんだけれど…。



 さっちゃんが羨ましいな…。



 なんて考えている暇無かったわね〜。

 時間が無いから…さっちゃんに怒られるけど、バイク乗っちゃおうかしら。





…。


……。


………。



「ありがとうございました」


「お大事にして下さいね〜」


 私の勤務先は米沢病院。毎日様々な症状を抱えた人が訪れる、米沢最大の病院。

 そこで私は内科。内臓の病気を診察、治療するのを仕事としている。

 そんなこんなで今日の診察も残す所あと一人。その人の診察が終われば今日の仕事はそれまで、さっちゃんと慶ちゃんが待つ家へと帰れる。



「これが次の患者さんのカルテです。もちろん女性ですよ」


「ありがとうね〜」



 今日も私が診るのは女性のみ。男性を診る事は無い。


 病院には我が儘を言って、女性のみの診察にしてもらっている。

 こんな我が儘を許してもらえるのだから、医院長はよく分からない人だ。

 でも、医院長には本当に感謝している。私には才能があると言って、医者としての私をここまで育ててくれたのは他でも無い、医院長だから。

 医院長は私と同じくらいの年齢の女性。世間一般の医院長平均年齢よりは、大分若いのではないだろうか。



「失礼しまーす」


「あ、は〜い」


 なんてボーっとしていた時、次の患者さんが入って来た。


 私は慌ててカルテを見る。


「綾子さん、何ボーっとしてたんですか?」


「あら、七美ちゃんだったのね〜」



 今私の正面に座っている女の子、愛川七美ちゃん。さっちゃんと慶ちゃんのお友達。


 初めてプライベートで会ったったのはレストラン。私は前に彼女を何度か診た事があったので、勿論彼女の事を知っていた。

 彼女も私の事を覚えていたようだが、その時彼女は初対面の振りをしていた。なのでレストランでは私も彼女に合わせ、知らない振りをしていた。


 慶ちゃんに、私の様子がおかしい事がバレていたけれどね。



 そして後日、知らない振りをした事の理由を聞いた。

七美ちゃんが言うには、その場にさっちゃんがいたから。


 七美ちゃんは、さっちゃんと慶ちゃんに心臓の事を言わないで欲しいと言っている。

 理由は分からないけれど、本人が望むなら私はその通りにするしかない。


 とにかく、私は診察の為、聴診機を彼女の心臓に当てた。



「七美ちゃん、最近動き回ったかしら?」


「ちょっとだけ…。エヘッ♪」



 この子は心臓が弱く、昔から医者に激しい運動は禁じられていたらしい。


 小さい頃、動き過ぎて死にかけた事もあったとか。


 もちろん私も、運動をするな。と言うが、彼女は遊び盛りの高校生。動くなと言う方が無理な話しかもしれない。



「あ。そのネックレス、付けてるんですね」


「これね。もちろんよ〜」


 七美ちゃんは私の首元を見ながら言う。


 先日行われた私の誕生日には、外康さんや、さっちゃんのお友達。皆で祝ってくれた。


 間違いなく、私の今までの人生で最高の誕生日だった。



「とりあえず大丈夫ね〜。動くにしても、あまり激しく動かないでね」


「はい、分かりました♪」


「はい、それじゃあお大事に〜」


「失礼しました♪」



 七美ちゃんが診察室を出ていく。



「疲れたわ〜」


「今日の仕事はこれで終わりです。お疲れ様でした」


 先程私にカルテを渡してくれた、女性の看護士さんが言う。


「慶ちゃんとさっちゃんが待ってるし、早く帰ろうかしら〜」


「そうですか。それではまた明日。お疲れ様です」


「お疲れ様でした〜」



 そうして私は二人が待つ家に帰るべく、病院を後にした。

更新が遅くなったと言っても三日くらいですけどね(笑)

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