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第47話〜兼次を追え〜

「ぶらーんぶらーん」


 忠海が俺にしがみついて、ブラブラしている。


「もう五時でござるな〜」


 そうして今日も部活動はダラダラしているだけ。特に何かが起こる訳じゃなく、ただただ時間が過ぎていく。


「そんじゃ、俺は帰るわ」


 ガラガラピシャン


 兼次が部室を出る。これで部室にいるのは俺、忠海、四分蔵の三人になった。



「ねえ、兼次って謎が多くない?」


 とそんな時、俺から離れた忠海がこう言った。


「確かに、謎が多い人物だな」


「そうでござるな」


 俺も前々から思っていた事だ。

 あいつが何処でどういった生活をしているかは俺も、おそらく里美も知らないだろう。


「それじゃあ兼次の後を追跡してみようよ」


 この忠海の意見に、四分蔵が賛成をした。

 俺も兼次については前々から気になっていたので、同じく賛成をする。


 こうして第一次、兼次追跡隊が任務を開始した。



…。


……。


………。



「君が好きだ〜と〜叫び〜たい♪」


 歌を歌いながら廊下を歩く兼次。そしてその兼次を追跡、観察する俺達。


「しかし…どうして兼次はペットボトルを持ってるんだ?」


「二リットルのを二つ持ってるでござるな」


「ねえ、兼次が水道に向かったよ」


 忠海が言ったので、俺は視点を三人から兼次へと移した。

 そして隠れながら、兼次の様子を観察する。


「ペットボトルに水を入れ始めたでござるな」


「うん。生活用水とかかな?」


「忠海、それはさすがに無いって」



「ふぅ…」


 と、水を入れ終わった兼次が一息ついた。

 そしてその水を大事そうに抱えて、そしてこう言った。




「これで麦茶が作れるぞ」


 生活用水だったぁぁぁ!!!


「何あいつ、水道止められてんの!?」


「そうみたいでござるな」


「なんかかわいそうだね」


 かわいそうってレベルじゃないから!同情する事さえ出来ないレベルだから!


「洗濯も学校でしているでござるからな」


「トイレも公共トイレしか使わないらしいよ」


「………」


 うわぁ…。


「お、兼次殿が動いたでござる」


「後をつけようよ」



…。


……。


………。



「食堂に着いたでござるな」


 食堂に着いた俺達は、兼次の観察を開始する。


「何か注文したよ」


 早速兼次は、例のマイクに注文を告げたようだ。


「海老チャーハンと、ライス大をお持ち帰りで注文したよ」


「よく分かったな忠海。読唇術使えたのか?」


「うん、さっきね。ピピピッて何かが降りてきたんだ」


「なるほど。それで忠海は読唇術を使えるようになったんでござるな」


「うん。今なら視界に入ってない人の唇でも読めるよ」


 ツッコミ所満載だが、今はツッコんでる場合じゃない。


 兼次の頼んだメニュー。チャーハンに大盛ライス。


 全く意味が分からない。チャーハンをおかずにご飯を食べるつもりなのか?

 果たしてそのような事が可能なのか?


「あ、兼次が何か言ってる」


「何て言ってるでござるか?」


 そして忠海は、例の読唇術で兼次の唇を読み取り、こう言った。




「支払いは北条院拓海で。住所、電話番号、口座番号は……」


 あいつ何やってんの!?


「何?あいつ他人に払わせる気!?」


「口座番号まで知っていたでござるな」


「人間のクズとしか言いようがないね」


「バレなきゃ何してもいい、って思っているパターンでござるな」


「まさにダメ人間の鏡だよ」


「貧乏だから仕方ない、と言ってしまえばそれまででござるが…」


「銀行強盗は許されないのに、あんな暴挙が許されるのか!?」


「仕方ないよ。兼次はダメ人間だもん。ああいうダメな人間は大盛ライスなダメにダメしてダメがダメチャーハンとダメの麦茶なんだよ」


「忠海の言う通り、あのダメ男は仕方ないでござる」


 俺はお前らに、ダメ人間なんて絶対言われたくない…。


「あ、チャーハンと大盛ライスを持った兼次が帰るみたいだよ」


「よし。早速、追跡するでござる」



…。


……。


………。



「うわぁっ」


 これで十回目。


「あのクズ、う〇こ踏みすぎだよ」


「今ので調度十回目でござる」


「まだ学校出てないのに十回って…。かわいそうな男だな…」


「でもどっちかって言うと、学校にう〇こが十個あった事の方が凄いよね」


「そうでござるな。学校に侵入した犬は、さぞかし大腸が活発だったのでござろう」


 今言った通り。兼次は校内で十回もヒットした。

 かわいそうかもしれないが、先程の行動を考えれば、当然と言える天罰だろう。


「あ、やっと校内から出たよ」


 ようやく兼次は校内のう〇こ地獄から開放されたようだった。


 しかし−−。



 ベチャッ



「鳥のフンが顔に当たったよ」


「クリーンヒットしたでござるな」


「うわぁ…」


 しかし兼次は何事も無かったかのように、ティッシュで拭き取ってそのまま帰路につく。


「……日常茶飯事なんだね」


「そうでござるな。常人に出来る落ち着きではござらん」


「………」


 沙織里、別れるなら今のうちだぞ。


「あ、自販機の前で止まったよ」


 兼次は忠海の言った通り、自販機の前で止まっていた。

 そしてそのまま…。


「釣り銭チェックをしているでござるな」


 ……。



「あ、小銭を見つけたみたいだよ」



「ヤッホーイ!!!」


 兼次はそれなりに離れている俺達にも、はっきりと聞こえるくらいの大声で喜ぶ。



 しかし−−。




「これで三日は俺の……ん?」


 兼次は何かに気付いた。






「これゲーセンのコインじゃねぇかぁぁぁ!!!ふざけんなどちくしょぉぉぉ!!!」


 兼次はコインを地面にたたき付けて、コインを踏む踏む。


「誰のイタズラだぁぁぁ!!!俺の希望がぁぁぁ!!!」




「はぁ…はぁ…」




「帰るか…」



 一通り怒った兼次はそのまま帰って行った。






「今日は何も見なかった事にしようか」






「だね」

「そうでござるな」

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