表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/83

第46話〜里美の殺人兵器〜

キーンコーンカーンコーン



「昼飯か…」


「どうした慶二、いつもならもっとはしゃぐじゃないか」


左隣りの涼子に言われる。確かに涼子の言う通り、俺は昼食の時間が大好きだ。

 それはただ単に、休憩時間がやってきた喜びのみで、はしゃぎ回っている訳ではない。綾子さんの弁当を食べられるからこそ、俺は喜びを表現するんだ。


 しかし今日は…。 



 里美が弁当を持ちながら、俺をじーっと見てるんですけど…。



「慶二ー!弁当のじ…か……。何この…くしゃい臭いは…」


 忠海もようやく気付いた。里美の持つ弁当箱から放たれる悪臭に…。

 そして忠海はたまらず鼻をつまんだ。


「里美…もしかしてお前…」


 涼子は悟った。



「慶二……」


「何だい里美ちゃんっ!?」


 俺はとにかく明るく振る舞った。

 そして−−。



「食べて♪」


 そう。今日は里美が弁当を作ってきたのだ。

 俺は里美の料理がどれだけやばいのかは分からない。しかし、綾子さんは今朝、ごめん。をひたすら、傷だらけのCDのように繰り返してきた。

 つまりそれほどやばいのだろう。


 どうするの俺…。

 だって、臭いがおかしいもん。授業中も異臭が漂ってたし。

 何を入れたら、こんな臭いがするのだろう。くさやとかでも入れたのだろうか。とにかく臭い。非常に臭い。


 でも、里美が一生懸命作ってくれた弁当だ。食べたい。でも、臭い。でも、食べたい。だが、非常に臭い。


「そう…やっぱり食べたくないんだ…。ごめんね慶二…」


「うっ……」



 俺は思った。里美を泣かせる訳にはいかない。そして何より、里美の努力を無駄にする訳にはいかない、と。


「里美が作ってくれた弁当だ。食べるに決まってんだろ」


「ほ、本当に!?」


「ああ。当たり前だ」


「慶二…」


 しかし俺は数秒後に後悔する。この時断っておけばよかった、と。


「はい、召し上がれ」


 カパッ


「うわっ……」


 あの沙織里がこのリアクションをした。里美の弁当はそれほどやばいのだ。


「まず…だな…」


「何、慶二?」




「どうして卵焼きが灰色なんだ…?」


「え…。私にも分からない…」


 分からないって、卵焼きってのは普通、黄色だろ。白身だけを使ったら白だろ。焦がしても黒。

 どうやったら灰色になるんだよ。


「やっぱり食べたくないのね…」



 食べればいいんだろ!!!食べれば!!!


 パクリ




 ……………。






「ゲホァァァー!!!」


 何じゃこりゃあぁぁぁー!!!


「どう慶二…おいしい…?」


 クソマズイんだよ!!!

 気付けよ!今、俺吐いただろ!気付けよ!


「お…おいし…いよ」


「本当ー!?」


 嘘。


「じゃあこのミニハンバーグは?」


「ミニハンバーグ?どれだ?」


「ほら、これよ」


 里美が指差したのは、ミニハンバーグなどではなく、青色の何かだった。


「なあ、さっきもそうなんだけどさ…。どうやったらこんな色を表現できるの?」


「え、何が?」


「どう料理したら卵焼きが灰色になるのか、ハンバーグが青色になるのか。って聞いてるんだよ」


「分からない。私は料理本の通りに作ったんだから」


「だったらこんな色になるはず無いだろうがぁぁぁ!!!」


「やっぱり食べたくないんだね…。ごめん…今すぐ−−」


「捨てちゃ駄目ー!!!」


 食べればいいんだろぉぉぉ!!!食べればぁぁぁ!!!


パクリ




…………。






「グハァァァー!!!」


 何じゃこりゃぁぁぁ!!!


「どう慶二、おいしい?」


 青色っぽい味がしたよ!何とも表現しにくいけど、青色っぽい味がした!!!


「うん、この世の物とは思えないくらいだったよ」


「本当に!?」


 この世の物とは思えないくらい、美味しくなかったよ。


 つーか今、吐いたじゃん。ちゃんと見とけよ。そしてその光景を率直に受け止めて、反省しろよ。


「それじゃあこの豚肉の生姜焼きは?」


 ああ。この、緑の段ボールの事か。

 しっかし、どうやったら豚肉が緑色になるんだよ…。錬金術か?


パクリ




…………。






「ゴボァァァー!!!」


 何じゃこりゃあー!!!


「どう慶二、おいしい?」


 だから今吐いたっての!!!ちゃんと見とけよ!!!


「お、お前はこれ食べたのか…?」


「ううん。食べてないわよ」


「なら食べてみないか?」


 こういうのは作った人が食べないパターンが多い。

 しかし俺はそんな常識を覆してやる。里美にも地獄を見せてやる…。


さあ食べるんだ里美!!!地獄への入口はすぐそこだぞ!!!


 そして−−。






「嫌よ。そんな気持ち悪い料理、食べる訳ないでしょ」




 ぬおぉぉぉぉぉー!!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ