第33話〜雪江の努力〜
「べ、べつにあんたの為に呼んだ訳じゃないからねっ…」
「じゃあ誰の為に呼んだんですか?」
「…」
今日の雪江さんは何かが違う。と、言うよりおかしい。
とりあえずこんにちは、慶二です。
今日は月曜日、文化祭の振り替え休日一日目です。午前中は文化祭の片付けをやっていました。そして今、俺は澪の家にいます。昼ご飯を雪江さんが食べさせてくれるとの事だからです。
それなのに、今さっきの発言はいったい何でしょうか。俺は招待された方の人間ですよ。ていうか招待したのは貴女でしょう。
「雪り〜ん、早くご飯食べたいよ〜」
「あ、すいません澪…」
「どうして今日は俺を呼んでくれたんですか?」
「べ、べつにあんたの為に呼んだんじゃないからねっ…」
「じゃあ俺は帰ります…」
「待ちなさいよ…。折角私が作ってあげるって言ってるのに…。その行為を無駄にする気…?」
「あ、すいません。俺の分もあるんですか?」
「材料が余ったから仕方なく作ってあげたのよ…。感謝しなさい…」
「すいません、わざわざ俺の為に」
「だから、材料が余ったから仕方なくって言ってるでしょ…。あんたに感謝される覚えはないわ…」
どうしてさっきから片言なんだろう…。
…
……
「はい澪、今日の昼ご飯はカップラーメンです…」
「わーい♪」
「俺の分は…?」
「はいっ…。あんたはこれよ…」
手づくり料理のオンパレード。
「あの、材料が余ったからって言ってましたよね?」
「言ってたわよ…。まさか食べたくないの…?」
「いやいや食べますよ。物凄く美味しそうですから」
「私の作った料理なのよ…。美味しそうで当然じゃない…」
「それで、材料が余ったからって言ってましたよね?」
「言ったわよ…」
「じゃあ澪はどうしてカップ麺なんですか?」
「…」
「澪はどうしてカップ麺−−」
「−−食べたくないなら、そうだと言えばいいじゃない…」
「食べます」
「食べさせて下さい…。でしょ…?」
「食べさせて下さい」
「そんなに食べたいのなら仕方ないわね…。好きに食べていいわよ…」
「美味しい…?」
「めちゃめちゃ上手いです」
「ふんっ…。お世辞を言われても嬉しくなんかないわよ…」
「いや、お世辞じゃなくて本当に」
「そんな嘘に騙されるわけないじゃない…」
「いやいや、そんな嘘はつきませんから」
「本当に…?」
「はい」
「嬉し…当然よね…。私の作った料理が美味しくないわけないじゃない…」
「あ、口元にご飯粒がついてるわよ…」
「え?」
「取ってあげる。はい…」
「ありがとうございます」
「べ、べつにあんたの為に取ったわけじゃないからね…。私が…その…ご飯粒が気になるからよ…。気になるから…」
………。
…
……
「また来ますね」
「うん、じゃあね」
「もう二度と来ないで…」
「じゃあもう来ません…」
「ちょっと待ちなさいよ…」
「はい?」
「もう一回だけなら…。その…」
「来てもいいわよ…」
……。
「それじゃあ俺は帰ります…。ごちそうさまでした…」
バタンッ
「雪りん、慶二くん嫌な顔してたよ」
「いえ、私はあの本通りにやったんですが…」
「雪りんがあの本と違う事をやったんじゃないの?」
「そうかもしれませんね…」
「ツンデレって奥が深いんだね〜」
「はい…。デフォルトで会得している里美さんがうらやましいです…」
「それで雪りん、あの本どうする?」
「今女性に求められる性格、その名もツンデレ。ですか…?」
「うん」
「捨てましょう…」
「そうだね」