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第31話〜文化祭二日目・中編〜

後書きに、ちょっと重要な事柄を書いています。

「タイムリミットは七時まで。それでは始めます!」



女子が一斉に離散する。ついに後夜祭企画第一弾が始まったのだ。

その名も、愛は育む物じゃねえ! 奪い取る物だ! だそうです。


ルールは簡単。

好きな男子の唇をなんとかして奪うだけ。

そうして奪った人とは、付き合えるというジンクスが。ジンクスって言うか、既成事実に近いですね。まあ、この機会に好きな人をゲットしてしまおうと、そういう事ですね。そして何故女子ではなく男子が逃げるかというと、これがもし逆だった場合、男子は力ずくで唇を奪えてしまうので、だそうです。それは犯罪となってしまうからです。女子なら力ずくはないでしょうし、もし力ずくだとしても大したことにはならないからね。


ちなみに監視カメラが設置されているので、不正はできません。男子が無理矢理唇を奪ったり、とかね。だから男子はひたすら待つしかないんです。


俺ですか? 俺は逃げ回る必要はなさそうなので、保健室、もとい土江洲組でお嬢と話していることにしようかな、と。



「つーことでお世話になりますね」

「構わないってんだ。好きにしていきな」



これで暇は潰せそうだ。なんならスタート地点で立っていてもよかったんだが、目の前で自分がスルーされていくなんて嫌だからな。

ああそうだよ! 俺は現実から目を背けた男だよ!



「しかしあのエロ校長が考えそうな企画だよ、まったく」

「ああ。あの校長ですか…」



あの校長は酷い。それも追い追い分かってくるだろう。



「いた?」

「いないわ…」

「どこにいるのかしらね」



と、廊下から二人の女子の声が聞こえてきた。



「お前を探しているんじゃないのか?」

「俺をですか? そんなわけないでしょう」


「ねえ、この中から声が聞こえてこなかった?」

「うん、私も聞こえた」



二人の女子に俺達の声が聞こえたようだった。



「なんならそこで突っ立ってな。今に分かるからな」

「いいですよ。何か賭けましょうか?」

「よしきた。負けた方は勝った方に一日言いなり、でどうだ!」

「つまり人権を賭けるわけですか。いいでしょう、憲法に逆らってあげますよ」

「それじゃあ決定だな。そろそろ開くぞ」

「来ましたね」



そして土江洲組の扉が、コンコン。と叩かれた。



「勝負だっ!」

「俺の勝ちは目に見えてますけどね」



ガラガラ



「失礼し前田君だ!?」

「見つけたわ!!!」



土江洲組に入ってきたのは三年生の二人組だった。

見つけたって、もしかして俺をだろうか…?



もちろん俺は、生まれて初めて彼女らを見た訳だが…。



「アタシの勝ちだな」



お嬢は言って俺の肩に手を乗せた。すると−−。



「キスしてっ…。あれ? 前田君がいない…」

「里奈っちも消えたね」

「幻覚だったのかな?」

「さあ…」

「とにかく出ようか。気味が悪い…」



そうして二人はこの部屋を出ていく。

いったいどうしたのだろうか。二人は俺達のことが見えなくなったようだった。



「ふぅ。一日言いなりだな」

「それよりお嬢、これはどういう事なんですか?」

「ああ、風魔の能力さ。属性は光、自分と自分に直接触れている物が消えるんだ。この前、稲葉二鉄相手に使ったんだが、それ以来だな」

「強っ! 無敵じゃないですか!?」

「ああ。だが信永はもう倒したんだろ? ならもう使う機会はないだろうな」

「なんか、宝の持ち腐れな感じですね。俺としては嬉しいんですが…」



なんて話していたのだが、俺はふと、賭けの事を思い出した。



「しかし俺を狙ってたなんて…。これで一日お嬢の言いなりですね…」

「そうだったそうだった。それじゃあ何時何処で何をしてもらおっかな〜♪」



兼次程の事は言わないだろうが、とにかく無理難題じゃなければいいんだけどね…。



「うーん…。とにかく屋上に行くよ」

「え、どうしてです?」

「屋上の方が話すのに落ち着くからな。せっかくの後夜祭だ、こんな味気無い場所にいてもしょうがないからね」



なるほど、たしかにその通りだ。


俺は同意し、そして二人で屋上に向うことにした。屋上への階段は部屋の近くにあった。

俺達はその階段を上り、そして俺達は屋上に着く。屋上に行くまでの階段では誰とも会わなかった。それに会ったとしても、お嬢の能力でどうにかなる。



「じゃあ入りましょうか」



そして、とりあえず俺は扉を開けたのだが−−。



「明日香!?」



屋上には明日香がいた。



「里奈さん。慶二さんを独り占めしようったって、そうはいきませんわよ」

「チッ」



明日香はよく分からない事を言い出した。お嬢も何故か悔しそうな表情をしている。



「明日香、俺は暇だからお嬢といただけだぞ」

「まあっ! 洗脳までされたんですのね!」



お前洗脳の意味知ってんの?



「どうやらアタシ達は戦う運命にあるようだな」

「なるほど、やはり里奈さんもそれ狙いでしたのね。いいですわやりましょうか」

「おい明日香、お嬢は子孫だぞ。お前に勝てる訳が…」



俺には何故二人が戦うのかは分からない。この二人は因縁があるのだろうか。

そんな事より理由は別にしても、明日香が戦うのは危険だと思ったので、俺は忠告をした。



「慶二の言った通り、アタシは子孫さ。明日香なんかじゃ勝てないってんだ。大人しく引き下がりな」



しかし明日香は引き下がらないどころか、急に高笑いをし始めた。



「里奈さんが子孫だという事は存じていますわ

そうだったのか。



「それなら私だって子孫ですわ」

「え、本当か慶二!?」

「はい、明日香は今川義元の子孫ですよ。でも、能力は目覚めていないはずじゃあ…」

「甘いですわ!」



すると明日香の手が光り出し、小判が出てきた。



「えっ! 明日香はもう使えるようになってたのか!?」

「いいリアクションですわ慶二さん。何を隠そうこの私、あれ以降四分蔵と訓練したんですのよ」



そういえば、最近四分蔵は明日香の魅力ばっかり言ってた気がする。原因がわかったよ。



「なるほど。明日香は最近能力に目覚めたわけか」

「今から調度、七十四時間三十九分二十三びょ…。二十よん…。にじゅ…」



正確な時間は言わなくていいから!



「しかし能力に目覚めるのは簡単だ、どんなに才能がない人間でも目覚めるからな」

「私の父は目覚めていませんわよ」

「うそっ!?」



明日香の発言がお嬢を凍らせた。



「とにかく勝負だ!」

「いきますわよ!」



こうしてお嬢とゴエモ…。じゃなくて明日香が戦いだした。



「逃げよう…」



俺は戦闘を避ける為、屋上を後にした。巻き込まれたらたまったものじゃないからな。

そして階段を降りている途中、クラスメートの男子を見掛けた。



「お、大地じゃねえか」

「ん、慶二か。お前は無事だったんだな」



俺の前にいるのは、サッカー部エースの大空大地。顔はかなりのイケメンだ。



「そうそう、里美ちゃんが慶二のことを探していたぞ」

「里美が? どうしてだろうな…」

「さあ、理由までは聞かなかったが。俺が知らないと言ったら、かわいい顔で、ごめんね大地君。って言われた」

「ふーん」



俺と兼次以外にはいい顔するのな。



「ところで大地は俺と話している暇なんかあるのか?」

「そうだった。やっとファンクラブを撒いた所だったんだ。じゃあお前も頑張れよ」

「ああ。またな」



大地は行ってしまった。

しっかしファンクラブまであるんだから、罪な男だよな。ああはなりたくないと思う。

俺はこれからどうしようかな…。



「里美が探しているんだったかな…」



まあとりあえず階段を降りよっと。




「兼次く〜ん!!!」

「しつこいんだよ!」



数人の女子に追いかけられて数十分。俺は今、校庭を走っている。

俺を追っ掛けてくる女子の体力が物凄い。これが恋の力なのか?

俺も罪な男だ…。フッ。



「慶二よりはマシだがな」



とにかく、これ以上女子を走らせる訳にはいかない。となると、能力を使うのが手っ取り早いかな。



「光れっ!」

「キャー」



光の札で目潰しをして、俺は逃げる。

どうやらうまくいったらしく、女子はもう追ってこない。



「助かっ…。ん、何か聞こえる…」



俺は適当に逃げていたのだが、とある部屋から声が聞こえてきた。



「ってここは、は組じゃねーか」



俺はここがは組である事に気付いた。

そして声の主が気になったので、教室の扉を開けた。


ガラガラ


「沙織里?」

「ひぁっ!」



教室内では、沙織里が一人で中を片付けていた。



「何をやってるんだ? 片付けなら明日がその日だろ?」

「え、えーっと…」



片付けをするのは明日なはずだが…。



「明日の片付けが早く終わるようにと思って…。そうすれば皆の遊べる時間が増えるから…」



沙織里は恥ずかしそうに、もごもご言った。



「だからと言っても、こんな時にやることはないだろう」

「いえ、いいんです…。私にはあまり関係ない企画ですから…」



関係ない企画?



「まあ確かに馬鹿馬鹿しい企画だからな。よし、俺も手伝うよ」

「え、どうしてですか? 島さんは…」

「俺にはあまり関係ない企画だから、な」



言って俺は片付けを始めた。沙織里も暫くしてから片付けを再開した。

俺は文化祭委員の義務感から手伝う気になったわけじゃない。沙織里の心意気に惚れたからだ。それにただ逃げ回っているより、こっちの方がいい。



「そういえば沙織里、詩織里はどこだ?」

「お姉ちゃんは監視をしています。自分から、やりたい。と言ったみたいです」

「あいつの事だ。どうせ、男女の不純な行為を許す訳にはいかない。とか言ってたんだろ?」

「はい。そう言っていました」

「それなら企画自体を潰せばいいのにな」

「フフッ。そうですよね」

「だよ…」



俺はこの時、沙織里の笑った顔に見取れてしまった。



「どうしたんですか?」

「あ、いや。なんでもない」



沙織里は、そうですか。と言って片付けを進める。俺もそれにつられて片付けを再開した。

しかし俺の脳裏に浮かぶのは沙織里の笑顔だった。笑った顔に見取れてしまったのは里美以来だった。



「島さん…」

「ふぁいっ!?」

「どうしたんです?」

「え、いや…。沙織里も可愛かったんだなって」

「えっ!?」

「んなっ! いや、なんでもない。忘れてくれ」



思った事をそのまま口にしてしまった。俺としたことが、慶二みたいな事を…。



「いえ、忘れませんよ。すっごい嬉しかったですから」

「え…? 恥ずかしいから忘れてくれよ…」

「嫌ですっ」



言って沙織里はまた笑った。



「それで、島さん…」

「へっ!?」



そして俺は、再び沙織里の笑顔に見取れ、ぼーっとしてしまっていた。

俺はいったいどうしたのだろうか…。



「それで…。あの…」

「どうしたでやんす?」

「やんす?」

「いや、気にしないでくれでやんす…」



俺は普段からこんな口調だったか? いや、違うような…。駄目だ、頭が回らない。

とにかく俺は沙織里の言葉を待った。


そして−−。



「−−島さんは好きな人いますか?」

「へっ?」



俺はびっくりした。七美が言うならまだしも、沙織里からこのような質問をされるとは思ってもみなかったからだ。



「あ、ごめんなさい。こんな質問は嫌でしたか…?」

「嫌ってわけじゃあ…」



いつものCOOLな俺はどこかに行ってしまったようだった。さっきから、心臓がティンパニーを演奏し、沙織里を見る度に俺のハートに、アイアンクローならぬハートクローをティンパニーが…。わー!頭が回らなーいぜー!



「嫌なら…」

「い、嫌じゃないが…」



俺は北極を思い浮かべることにより、なんとか体温を一度下げた。



「誰ですか!?」

「正確には、好きだった。かな」

「好きだった…?」

「ああ。この前告白してな、その場で謝られたよ。私は好きな人がいるから、って」



俺が告白したそのすぐ後、里美は、慶二が好きだから。と言って謝った。

付き合う為の告白じゃない、とは言えショックだった。でも言わないより言った方がマシだろう。



「そうですか…」

「ああ。でも、文化祭前辺りからあまり気にならなくなってきたんだ…」

「吹っ切れたんですか?」

「みたいだな。理由までは分からない」



俺は冷静さを装っているが、心の中では四分蔵…。心臓がティンパニー演奏を続けている。俺はどうしたんだろうか…。まさかとは思うが…。



「私も昔から好きな人がいます」

「昔から?」

「はい…」

「誰なんだ?」



俺は何よりも、沙織里の好きな人が気になって仕方なかった。他人の好きな人が気になるのは、生まれて初めての事だった。



「私は小学一年の頃から好きです」




「私、前田さんには感謝してもしきれないくらい感謝してます。里美さん達みたいな素敵な女性が惚れるのも無理はありません。でも、私が好きなのは前田さんじゃありません」

「里美の好きな人に気付いていたのか…」

「島さんが里美さんを好きな事も知っていました。そして島さんが里美さんに告白した、その理由も分かります…」

「…言ってみてくれ」



沙織里は俺の考えと全く同じ事を言った。



「どうして分かったんだ…?」

「なんとなく、です」

「そうか…」

「最近になってようやく島さんと話せるようになって、この前は一緒に遊びに行って…」

「遊びに行くって言っても、俺は金が無いから公園で喋っていただけなんだけどな」

「でも私は嬉しかったです。島さんとここまで仲良くなれるとは思いませんでした」

「ああ、俺も楽しかったよ」

「本当ですか?」

「うん。それで思い出した、というより気付いたよ」

「何にですか?」

「俺が吹っ切れたのは、あのパーティーの日って事にだ…」



そして俺の事をここまで想ってくれている、その人の存在にも。



「さっきから俺の心臓がおかしいんだ…」

「それなら私は小一の時からおかしいです…」



里美に告白をしてよかったかもしれない。結果的に俺は、素敵な女性を見つける事になったんだからな。



「好きです島さん…。昔から…」



俺は返事をせずに、沙織里に近付いた。



「え、え…。島さん…?」

「そういえば、キスは女性からしないといけない企画だったな」



俺は勢いで沙織里の唇を奪ってしまった。





……




「まず、名前は何ですか?」

「よくぞ聞いてくれた!」

「よかったですねアネさん」

「さすが姐御!」



リーダーらしき人物が嬉しそうにし、左ウイングと右ウイングが、よいしょをする。



「アタイの名前は鬼小島玲奈。三年は組さ」

「おにこじまれいな、ですね。それで何の用なんです?」

「テメエ! 姐御に向かって何て事を!」



左ウイングに怒られた。



「アネさんに謝れ!」



右ウイングに怒られた。



「お前達! 呼び方は統一しろってあれほど言っているだろ!」



この人達は三年の不良グループ。俺は大地と別れた後この三人に見つかり、からまれてしまった。



「とにかく、用件は何ですか?」

「暇だから相手をしてもらおうと思ってねぇ〜」

「帰っていいですか?」

「待ちな!」



リーダーが手に持っていた竹刀を俺に向けた。

非常に面倒臭い。ナレーションをする気も失せる。まあそれは元からだが…。



「それで、何ですか…?」

「今何の企画をやっているのか分かってるかい?」

「愛を奪い取れとかいうやつですか?」

「テメエ! どうして言うんだよ! 普通なら分からない振りをするだろ!!!」

「それで姐御が説明をする。そういう流れだろうが!!!」

「まあまあ、許してやりな二人共」



まあ、流れとしてはね…。



「で、その企画が何か…?」

「実はアタイ、意外と面食いでねぇ」

「いや、意外って。初めて会ったのに意外も何も無いでしょう! それに見た目通りだし!」

「ガーン!!!」



リーダーが落ち込んだ。



「テメエ!姐御は本当は純情な乙女なんだぞ!」

「未だに白馬の王子様を信じる姐御に向かって、見た目は面食いだと!?」



いやいやいや!

そういうのを意外、って言うんだよ!



「意外ですね…。本当は純情な乙女なんですか…?」

「うるさいよ! アタイはイケメンを絶対にゲットしてやるんだからな!」

「どうしてそんなにイケメンにこだわるんですか?」

「それは…」

「テメエ! 姐御は米沢第二の奴らに言われたんだよ! お前はイケメンの彼氏一つ作れねーのか。ってな!!!」

「米沢第二の奴とは幼稚園からの因縁の相手! そんな奴らに負ける訳にはいかないんだよ!!!」



マジ面倒臭ぇ……。



「そうだ! だからアタイの彼氏になりな!」

「まあ、玲奈さんみたいに綺麗な人だったら付き合いたいですけど。性格とか、よく分かりませんし…」

「そんな事はどうでもいいんだよ! イケメンの彼氏さえいれば奴らを見返せるしな!」

「俺は構いませんが、玲奈さんはそれでいいんですか? たかだか見返す為だけに」

「いいに…。決まっているじゃないかい…」

「本当ですか? もしそれで付き合ったとして、その人と楽しい時間が過ごせますか?」

「それは…」

「白馬の王子様が来るって信じているんでしょう? それを待つか、探した方がよっぽど有意義ですよ」

「うっ…」

「玲奈さんみたいな美人なら、王子様も喜んで付き合うでしょうね。それじゃあ頑張って下さい」



俺は面倒臭かったので適当に綺麗事を並べた。そのまま昇降口を後にしようとする。なに、間違った事を言ってるわけではないから、気にすることは無い。



「待ちな!」

「…何でしょうか」

「その程度のざれ言に振り回されるアタイじゃないよ! 分かったらさっさと彼氏になりな!」

「いえ、ですから、まだ玲奈さんの事はよく分かりませんから。それに俺はイケメンじゃないですから」

「待ちなって言ってるんだ!」



仕方なく俺は振り向いて、玲奈さんを見た。

そしてその玲奈さんは手に持っていた竹刀を構えていた。



「力ずくでも頂くよっ!」

「玲奈さん、剣を構えましたね?」

「それがどうしたんだい!?」



俺は一瞬で竹刀を奪い、元の場所に戻った。



「構えが素人のそれじゃなかった。剣道かなんかやってましたか?」

「えっ!?」

「姐御! 竹刀が無いです」

「本当だ姐御! 竹刀が無い!」



フフフ。三人共驚いてる。



「まあ剣を構えている以上、手は抜きませんからね」

「…っ!!」



何故か玲奈さんは今の言葉に反応した。



「今…。何て言ったんだい?」

「剣を構えている以上、手は抜きませんからね。って言ったんですが、それが…」

「もう一度…」

「剣を構えている以上、手は抜きませんからね…」

「ついに見つけた…」



何故か玲奈さんは俺の言葉に驚いていた。おまけに目をキラキラさせている。



「私の王子様…」

「王子様!?」

「姐御! まさかこいつが姐御の言っていた…?」

「幼稚園の時に出会った王子様ですか!?」

「俺が!? どうしてです!?」

「説明が必要か。あれはアタイが幼稚園の時…」




「わーん!」

「大丈夫か鬼小島?」

「だからチャンバラごっこは危ないよって言ったのに〜」



アタイは幼稚園の友人二人にいじめられていたんだ。泣き崩れるアタイにあの二人は酷い仕打ちを…。

でもそんな時、一つ下の男の子がやってきたんだ。そう、アタイ…。いや、私の王子様が…



「お前ら何やってんだ! 泣いてるじゃないか!」

「え、チャンバラごっこをやってるだけだよ」

「ああ、チャンバラごっこでたまたま鬼小島の頭に当たっただけだよ」

「違うよ! この二人が砂の目潰しとか、ずるい事をしてきたんだよ!」

「なんだと!? 本当かお前ら!」


「おい鬼小島! どうして嘘をつくんだよ!」

「目潰しどころか、本気も出してないっての!」


「しかしお前達は剣を構えている。剣を構えている以上、俺は手を抜かないぞ!」




「あのまま二人をボッコボコにしてくれたのさ」



あの時の女の子だったのか!?

つーかボコボコにしてないよ。ちゃんと泣いてる理由も聞いたし。



「もう米沢第二の奴は関係ない! 私と付き合ってください!」

「ていうかその二人は謝ってたじゃ…。ちょっと! 顔がっ近っ!」



玲奈さんは抱き着いてキスを求めてくる。間近で見るとすっごい美人。



「ちょっと…。離れてください…」

「どうしてなんですか? やっと見つけた王子様なんだから離す訳に…。そうか、なるほど…」



お、玲奈さんが離れてくれた。



「お前らはどこかに行け! 慶二様は二人っきりがいいんだよ! そのくらい気を利かせろ!」



ちっげぇんだよ!!!



「すいません姐御。行くぞ左川!」

「待ってよ右川!」

「待ってよ二人と…」

「どこに行くんですか慶二様!」

「いや、ちょっと離して…。ちょっ!」

「ん〜」



チュ〜



「好き好き大好きです。結婚して下さい慶二様」



おもいっきりキスをされた。でも玲奈さんの顔が顔だから悪い気はしなかった…。しかし、問題なのはそこに立っている人物…。



「ちょっとあんた…。私の慶二に何をしてるのよ…」



里美はどうして…。こんなタイミングで…。



「なんだいあんたは」

「私は伊勢里美。慶二の妻よ」



ちっげぇんだよ!!!



「ハハハ! 遅かったね奥さん、慶二様の唇はアタイが頂いたよ」

「何ですって! 本当なの慶二!?」

「はい。無理矢理」



不可抗力ってやつね。



「それは本当か慶二!?」



奥から何者かが現れた。



「あんたは誰だい」

「御堂涼子、慶二の愛人だ!」



ちっげぇんだよ!!!



「本当なの慶二くん!?」



また奥から誰かがやってきた。



「そういうあんたは誰だい」

「川岸澪、慶二くんのペットだよ!」



勘違いされるからやめてぇぇぇー!!!



「ペットだって!?」

「ペットはないわよ澪」

「ペットはおかしいぞ」

「へへ〜」



「もう逃げよ…」



俺は面倒臭かったのでその場を退避した。

そして俺は何をしようかと考える。と、汗をかいている事に気付いたので、風呂に入る為に食堂二階に行った。食堂に行く為に廊下を歩いたのだがその途中、倒れて気を失っているいる女子が何人もいた。



「あれは里美だろうな…」



里美が何故やったのか、その理由は分からない。まあとにかく風呂に入って、汗でベタベタなワイシャツ洗っちゃおう。

そして俺は二階に行く為に階段を上がろうと…。



「兼次さん♪」

「何、さおりん♪」

「呼んでみただけです♪」

「そっかそっか♪」






………。






風呂に入ったら何もかも忘れるだろう。うんうん。俺は何も見ていないぞ。


俺は今さっきすれ違った二人の存在を…。とにかく風呂に入ろう…。




「ふぅ…。気持ちいいな」



俺はワイシャツとパンツを別の洗濯乾燥機に入れ、その後大浴場に入った。そしてまず始めに頭を洗う。次に体、顔と洗い、そして大浴場内にある、大きな風呂に入った。

風呂はいい。時間がゆっくり動く、何もかもが空しくなっていく…。



そう、どんなに忘れたい現実があったとしても…。



「どうしてあんなにラブラブだったの!? どうして手ぇ繋いでんの!?」



…おっと、俺としたことが取り乱してしまったようだ。すまない。

こういう時は歌でも歌うか。



「ドーはどうしてラブラブなのーのドー」

「レーは恋愛って奥が深いんだなーのレー」

「ミーはみーんな忘れたいーのミー」

「ファーはファ〇ク兼次のファー」

「ソーはそういえばさおりんって呼んでたなー」

「ラーはLOVE涙色ー」

「シーは死ね兼次ー」

「さあわっすっれっまっしょー」



……。



「現実逃避したいな…」



…とりあえず頭も体も洗ったし、風呂を出ますか。


そうして俺は風呂を出ようとしたのだが…。


ガラガラ




「け、慶二。お、女風呂で何やってるの…?」




七美と出くわしてしまった。

作者は三大忍者を服部、百地、風魔と言いましたが、調べてみたら違ったみたいです。

正確には、服部、百地、藤林でした。藤林は山本勘助に忍術を教えたとかなんとか。

とにもかくにも、この作品中の三大忍者は服部、百地、風魔という事にしておいて下さい。

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