第25話〜犬語翻訳機〜
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい皆さん♪」
こんにちは、慶二です。
今は放課後、場所は外康さん宅です。
どうして来たかと言うと、それは昼食の時間まで遡ります。
〜昼休み〜
「そうそう、昨日外康が捨て犬を拾ってきたんだよ」
「まじかよ!?」
「まじでござるよ」
「うっそー! 私、そのワンちゃを見に行きたいっ!」
里美が、物凄い勢いで話題に食らいついてきた。
「私も行きたいですわ」
「明日香も犬好きか?」
「いえ、実は私の知り合いがとある機械を発明しましたの」
「機械を?」
「明日香! ワンちゃんに何をする気!」
「里美、うるさいですわ。えーっと、それでその発明品というのが…」
…
……
「犬語翻訳機を試させてほしいのかしら?」
「はい。申し訳ありませんわ」
そう。この犬翻訳機のテストをしたかったらしい。
「いいわよ。なんだか楽しそうじゃない♪」
「たしかに楽しそうでござるな」
「犬の言葉が分かるなんて、世の中も進んだねー」
「すいません、いきなり全員で押しかけちゃって」
結局昼食メンバー全員で押しかける形となってしまった。
「それでそのワンちゃんはどこです?」
「この子よ」
里美が外康さんに尋ねると、外康さんは台所の方から一匹のチワワを連れて来た。
「かわいー♪」
里美が早速チワワに抱き着く。
チワワも里美の胸に顔を擦り付ける。
しかし、チワワの表情は、駄目だこいつ。といった感じに見える。
「次は私に抱かせて下さるかしら?」
「いいわよ。はい」
そして、里美が明日香にチワワを手渡した。
明日香はチワワを抱いて、チワワは明日香の胸に顔を擦り付ける。
チワワの表情は、駄目だこいつ。といった感じに見える。
「次はわたしー」
「はい、澪」
明日香は澪にチワワを手渡した。
澪はチワワを抱いて、チワワは澪の胸に顔を擦り付ける。
チワワはかなり喜んでいた。
「次は私に抱かせてくれ」
「いいよー」
以下略。
チワワは涼子の胸に顔を擦り付ける。
チワワの表情は、駄目だこいつ。といった感じに見える。
「私も…」
チワワは雪江さんの胸に顔を擦り付ける。
チワワの表情は普通だった。
「ボクもー」
チワワは忠海の胸に顔を擦り付ける。
チワワの表情は、駄目だこいつ。といった感じに見える。
「なぁ兼次…」
「ああ。慶二も気付いたか」
「僕も気付きました」
兼次も高政も、チワワの表情が変化することに気付いたらしい。
「とりあえず、このマイク付きの首輪を付けましょうか」
言って明日香は、首輪をチワワに付けようとしたのだが…。
「あれ?わたしに付けてほしいのかな?」
澪の所に逃げてしまう。
このチワワは黒だ…。
そして明日香は、仕方ないといった表情で澪に首輪を渡し、澪が首輪を付けた。
ちなみに翻訳された言葉は、今俺が持っているディスプレイに表示される。
よって必然的に、俺が読み上げる役になる。
「ワンッ」
チワワが早速何かを言った。
「何て言ったの、慶二?」
「遊ぼうよお姉ちゃん達ー。だとよ」
「なんてかわいいのかしら!」
「本当だな。私の家に欲しいくらいだ」
「私の家にも欲しいですわ」
「駄目だよ! ボクの家で飼うんだから」
「キューン…」
「澪お姉さんと遊びたいよ…」
「そんなこと言わないで」
「私達と遊びましょう」
「そうだ。私達と遊ぼう」
「昨日だって遊んだじゃんっ!」
「わんわんっ!」
「洗濯板に俺を飼い慣らす資格はねぇ、少し黙ってろ」
「こんのクソチワワがぁぁぁ!!!」
「切り刻んでやる!!!」
「地獄に落としますわ!!!」
「覚悟しろー!!!」
「四人共、落ち着くでござる!!!」
四分蔵が怒涛の四人をなんとか宥めた。
そしてこう言った。
「チワワを飼うには愛情が必要でござる」
「愛情が必要?」
「そうでござる里美殿。拙者のチワワ術を刮目せよっ」
四分蔵はチワワに近寄っていく。
「ほーらチワワ殿。拙者と遊ぶでござるよ」
「わんっ」
「わーい、遊ぼうよー」
「おぉー。凄いな」
「どうでござるか皆の者。これが愛情でござる」
四分蔵はなかなかやるな。
みんなも四分蔵を見直したようだ。
「ほーらチワワ殿」
言って四分蔵は、チワワを抱き抱えようとするのだが…。
「わんっ!」
「お前臭いんだよ」
「コノヤロー! 犬のくせに!!!」
「ワンッ」
「言っておくが、俺はお前らより上だ。勘違いするな。クズ共が」
「こんのクソチワワがぁぁぁ!!!」
「切り刻んでやる!!!」
「地獄に落としますわ!!!」
「覚悟しろー!!!」
「コノヤロー! 犬のくせに!!!」
「待て待て」
「落ち着いて下さい…」
兼次と雪江さんが五人を止める。
しかし、このチワワは黒いな…。
「お前ら、相手は犬だぞ」
「ワンッ」
「黙れよ貧乏人」
「この野郎…」
「兼次さん…。ここは堪えて下さい」
兼次は怒りを堪えている。
「相手はたかだか犬…。そんなに怒る必要はありません…」
「わんっ」
「彼氏いない暦が年齢と同じ奴に言われたくねーよ」
「この犬…! 私が気にしていることを…」
「雪江さん、俺も我慢したんですから…」
「わんっ」
「なあ兼次、お前最近いいことあったか?どうせお前のことだから、無いんだろ。バーカ」
「このゲスがぁぁぁ!!!」
「兼次さんっ…!」
「わんっ」
「おい雪江。そろそろメイド服で街を歩くのは止めろよ。みんな引いてるぜ〜」
「黙って聞いていればっ…!!!」
ついに雪江さんと兼次の怒りも爆発した。
「わんわんわんわんわんわんわん」
「おい里美、風呂場で慶二と付き合う妄想をして、独り言ばかり言うな。イタイんだよバーカ」
「おい涼子、今時剣道少女なんて流行らないんだよ。バーカ」
「おい明日香、好い加減その口調止めろよ。バーカ」
「忠海はいい加減、身長150を越えろよ。お前は小学生か。バーカ」
「四分蔵は臭いんだよ」
「おい兼次、昨日ウ〇コ踏んだだろ。バーカ」
「おい雪江、肉屋のおっちゃんが、お前を秋葉系だと勘違いしていたぞ。バーカ」
「どうして知ってるのよぉぉぉ!!!」
「癖になってしまったんですのよぉぉぉ!!!」
「そんなことは薄々気付いていたんだっ!!!」
「だって伸びないんだもん!!!」
「これは元々でござる!!!」
「あの後、鳥のフンが頭に落ちたんだよ、コンチクショー!!!」
「私この前魚屋の人に、君どこの店の人?よかったら教えてよ、指名するからさ。って言われたんです…!!!」
「わんっ」
「ダサッ」
七人の怒りが爆発した。
「みなさーん、お茶を入れ…。て…」
「高政、こっちだ」
「あ、前田さん…。これはいったい」
「わたしにもわからないや」
「一種のスキンシップよ。それよりお茶にしましょ♪」
「そうですね」
「前田さん、今日のお菓子は、とおりもんです」
「マジ!? 博多名物の!?」
「わたし大好き〜」
「喜んで貰えてよかったわ♪」
そうして俺達はお茶を飲み始めた。
あいつらはチワワと追い掛けっこを続けている。
「待ちなさいよ!!!」
「わんっ」
「嫌よそんな所…。でも慶二ならいいよ…。とか、お前病気だろ。だってさー!」
「お待ちなさーい!」
「わんっ」
「お前はとっとこ公太郎のリボンちゃんかよ。だってさー!」
「待てっ!!!」
「わんっ」
「恋愛に興味がなさそうな振りをしてるのに、少女マンガ持ちすぎなんだよ。だってさー!」
「待てー!」
「わんっ」
「この前小学生に、お前牛乳飲んでるの? とか、小学生にまで身長の心配をされたんだってな。だってさー!」
「待てでござる!!!」
「わんっ」
「お前臭いんだよ」
「待ちやがれっ!!!」
「わんっ」
「お前が小学生だった時のあだ名は、ウ〇コウ〇コレボリューションだったんだってな。だってさー!」
「許しません…!!!」
「わんっ」
「この前職務質問された時に、この服装は趣味ですって正直に言ったんだってな。ですってー!」
七人【このクソチワワがー!!!】
俺は一仕事終え、とおりもんを食べた。
「おいしいですね」
「これは高政が、慶二ちゃんの為にって言ったから買ったのよ」
「そうなのか!?ありがとうな高政」
「高政は何かある度に、前田さん前田さんだからね♪」
「へぇ〜。高政くんは本当に慶二くんの事が大好きなんだねっ♪」
「はいっ!」
「くぅ〜。嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
俺は高政の頭を撫でてあげた。
「なんか、平和ですね」
「そうね♪」
「いつまでもこんな時間が過ぎればいいね〜」
「僕もそう思います」
七人【待てー!!!】
「わんっ」
「今日はおしまい。だとさ」