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第23話〜慶二の大好物☆二日目前編〜

チュンチュン



「朝か…」



おはようございます慶二です。今回、前田は省略しました。と言うのも、前田という二文字があることによって、文字数が増えてしまい…。


とにかく俺は、時計を見ることにした。しかし…。



「へ?時計は?」



いや、よく見ると時計が見当たらないだけじゃない。俺は知らない部屋にいたのだ。

何故俺は、こんなに甘い香りが漂う部屋で寝ているのだろうか…。






「うーん…。とりあえず記憶を辿っててみるか…」



昨日俺はは夕ご飯を食べた後、帰ろうとしたんだったよな…。

だけど成美さんに、風呂に入ったら。って言われて…。



「断ったんだけど、成美さんに説得された…」



結局風呂に入って…。



「思い出したっ!」



あの後帰ろうとしたんだけど、泊まっていきなさいよって言われたんだ。

もちろん断ったんだけど…。



「こんな時間までいるのも、泊まるのも変わらない…。って言われたんだ」



結局俺は一泊することになったんだよな…。

そして、この部屋で成美さんと話していたら寝ちゃった、と。


その成美さんは隣で寝て…。




「できちゃった婚は嫌ぁぁぁー!!!」




どうして?どうして?どうして?どうして?

まさか、話しながら酒を飲んでしまっていたのか!?



「教師が酒を勧める訳がないじゃないの」



あ、起きたっ!!!



「ああああの…。別の部屋で寝る予定だったんじゃ…」

「そうね。そういう話だったわ」



そうだ。だから俺は安心して、泊まらせてもらうことにしたんだよ。

とにかく、これだけは聞いておかなくちゃいけない。



「あの…。寝ている間に何か…。変なことしませんでしたか…?」



何もないことを祈る…。




「変なことなら、やっちゃったわよ」






うわわわぁぁぁー!!!



「ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願いし…」

「寝ている慶二君の頬を突いたり、鼻を摘んだり♪」

「ます…。え?」






やほほほーい♪

俺にはまだ女房選択の自由があったんだー♪



「そんなことをやっていたら、いつの間にか寝ちゃったのよ」

「そうだったんですか。よかったぁ〜」

「私の精神力も捨てたもんじゃないわねっ♪」

「精神力?」



精神力とは、いかに?



「あらっ!もう十時じゃないのっ!」

「あ、本当ですね。開店は十一時からでしたっけ?」

「そうよ。慶二君、急いで開店の準備をしなきゃいけないから…」

「もちろん手伝いますよ」


「ありがとう」



朝一番の成美さんスマイルは健康に良さそうだな。



「それにしても、父さんはどうして起こしてくれなかったのかしら…」

「そうですね…」



そんなことを言いながら、階段を下りて厨房に向かった。

しかし、厨房に行った俺達は予想だにしなかった光景を目の当たりにした。



「あれ、前田さんじゃないですか」

「昨日、ずーっと寝ていた慶二だな」

「本当に空気が読めない男じゃのう」

「どうして成美殿といるでござるか!?」

「あ、本当だ。先生までいる」



厨房には高政、有次さん、直正さん、四分蔵、兼次がいた。

どうやら開店準備の手伝いをしていたらしい。



「お前が前田慶二だな?」

「はい?」



すると不意に、ホスト系のシェフが話し掛けてきた。

なんだこいつ、バイトのくせに馴れ馴れしい。



「お前、成美と一緒に寝てたな?」

「え、何故それを…」

「成美と一緒に寝るなんて、いい度胸しているじゃねぇか」



まさか成美さんの彼氏?

だとしたら秘技を使うしかない。



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」



秘技、三顧の詫び。

これは土下座と合わせることで、威力が増す技だ。



「父さん、私の生徒をからかうのは止めてくれるかしら」

「はっはっは!わりいわりい!」



え?先生のお父様でいらっしゃいますか?

二十代にしか見えないんですが…。



「自己紹介が遅れたな。俺は石田竜矢、成美の父親だ」

「え、俺は前田慶二です…」

「そんなの知ってるっての。お前さんのことは成美からよく聞いてるからな。噂の美男子転校生君」

「竜矢殿。それは拙者のことでござる」

「うるせえ!テメエな訳がねえだろうが!さっさと働け!」


うっわ…。キツいなこの人。

成美さんと似ているのは、容姿端麗な所だけだろうか。



「あの、失礼かもしれませんが。おいくつですか?」

「俺か?俺は四十二だ」



四十二歳!?



「まぁ、今から俺が朝飯を作ってやるから、成美と二人で食いな」

「あ、ありがとうございます…」

「お、いいねー。俺は遠慮しないやつ好きだよ」



竜矢さんはそう言うと思ったから、俺は素直に御礼を言ったわけだ…。

朝にしてはよく頭が回ったと、自分でも思った。

そして竜矢さんが、おらおら早く座れ。と言ったので、俺達は厨房を出て、レストランのソファー席に座った。



「成美さんに全く似てませんね」

「そうね…。あの人は唯我独尊だから」



俺は正面にいる成美さんに、竜矢さんの第一印象を言った。

正面にいる成美さんは、アハハ。と苦笑いして答える。



「この企画を事前に知っていたとしても、止められなかったんじゃないですかね」

「そうかもね。本当に皆には申し訳ないわ…」



だよな。親が勝手にやったこととは言え…。いや、勝手にやったことだから、か。

成美さんは相当責任を感じているに違いない。



「あの…。ところで、成美さんのお母さんは…?」



俺は話をそらせる為に聞いたのだが。

俺の質問に、成美さんは曇らせた顔を見せる。予想ガイです。



「離婚したのよ。私が中学一年の時にね」



俺は聞いちゃいけない事を聞いてしまったようだった。

俺の親は離婚しているわけじゃない。だから俺には何も言えない。



「今は何処にいるのでしょうね」

「すいません…。聞いちゃいけないことでしたね」



成美さんは優しい顔で、横に首を振った。



「いいのよ。でも、さすがにその時は泣き続けたけれどね」

「…」

「そんな私が立ち直れたのは他でもない、小学生のお陰なのよ」

「小学生の…。ですか」



成美さんは席を俺の隣に移し、窓に顔を向けながらどこか遠くを見た。

俺は後頭部しか見えないが、それでも美しいと思った。



「離婚してから調度一週間経った時、今でもはっきりと覚えているわね。私はその日、公園で泣いていて、それでその公園では三人の小学生が遊んでた。みんな男だったわ」

「三人ですか…」

「それで、その中の一人が泣いている私に気付いて、近寄って来たのよ。お姉さんどうしたの。ってね」

「…」



生意気な小学生だなと思ったが、成美さんを救ったようなので、特別に許してやることにする。



「悲しい事があったの。人に襲われたの。とか色々と聞かれたけれど、当然私は何も答えれなかったわ」

「ですよね…」

「でもその子は諦めずに、何度も聞いてきたの。二人の友達が帰った後もね」

「どうしてそこまでしつこく聞いたんですかね?」



たいていの小学生は、友達が帰ったら無理してでも一緒に帰ろうとするだろうな。



「私もそれが気になったわ。でも、今はそう思わない」

「今は思わない?」



成美さんは俺に向き直した。

元々あまり化粧をしていなかったらしく、すっぴんでもいつもと変わらなかった。



「私が何も答えないから、彼はこう言ったの。僕も最近嫌なことがあったんだよ。でもお姉ちゃんと一緒で、これは誰にも言っちゃいけないことなんだ…」

「誰にも言っちゃいけない事…?」

「私はそれを聞いて始めて口を開いたわ。私は言えないわけじゃないのよ。って」




その小学生は何故誰にも言えなかったんだろうか。

若くしてかなりの苦労をしているみたいだな…。



「なら言っちゃった方が楽になるよ。僕みたいに言えないことじゃないんでしょ。…本当に小学生かどうか疑ったわ」

「…その小学生って何年生くらいでしたか?」

「彼は四年生くらいの体形だったけれど、友達は一、二年くらいだったわね」



二人の友人は一、二年…。本人は四年生くらい…。



「それで私は離婚の事を言ったの。この時は、私の話しを聞いてくれるのなら小学生でも構わなかったのかしらね」

「…」

「それで彼は何て言ったと思うかしら」



俺は記憶を搾り出して言った。



「ごめんなさい。俺の両親は離婚していないから、お姉さんの気持ちは分からない…」

「だけど、俺に出来ることは何でもするから、元気を出して…。なんて、小学生の台詞じゃないわよね」

「…」

「でも私は何故かこの言葉に救われたのよ。多分内容はどうでもよかったののね。悲しみを吐き出せただけで…」

「あの後、夜までずっと泣き続けてましたね」

「フフッ、やっと思い出してくれたのね♪」

「はい…。成美さんはいつ気付いたんですか?」



成美さんは俺の鼻を人差し指で、ピン。と、つっついた。



「名前を見た時からよ♪」



ああ。そういやあの時、名乗ったんだったかな…。



「ありがとう、慶二君」

「いえ、寧ろこのことを忘れていてすいませんでした…」

「本当よ。少しショックだったんだから…」

「あはは…」

「冗談よ、冗談」



間もなく高政が、俺達に朝食を届けてくれた。





……




「よっしゃ!今日もサービスを頼むぜ!」



開店十分前、竜矢さんが里美達に喝を入れる。

俺はやることがないので帰ろうとしたのだが、里美達に、閉店したらここにいて。と、言われた。

俺は、家に帰ってからまたここに来れる自信がなかったので、家には帰らないことにした。

しかし、閉店まで一人で待つなんて暇すぎる。そこで…。



「慶二はあーん。が好きなんだってな!なんならアタシがやってやろうか?」

「お嬢…。静かにしてください…」



成美さんに頼んでがお嬢を呼んでもらった。

多少面倒臭いが、一人よりましだとは思う。



「おい、今失礼なことを考えてただろ」

「え、どうして分かるんです?」

「ぶっ殺す!」



お嬢が俺を追っ掛けてきたので、俺達は店内で走り回る形となったのだが…。



「おいテメエら!俺様の店で暴れるんじゃねぇぞ!」



そりゃ怒られますよね。

お嬢もしょんぼりしてしまいましたし。



「昨日の一番指名は綾子だ!今日は綾子に負けるんじゃねぇぞ!」

「「おー」」



澪と忠海以外は完全に無視をした。




「それじゃあ開店だ!」

後半へ続きます

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