第16話〜部長を決めよう〜
「さて、部長を決めるとしましょうか」
放課後の部室。今日初めて部員全員が集合した。
そして成美先生が緊張の面持ちで、部員に呼び掛ける。
「これは決戦だ。関ヶ原だ」
「有次さん、その例えは素晴らしいです」
「私もそう思うよ、兼次…」
「七美さんもですか…?私もです…」
「僕も思いました。これは関ヶ原の再来です…」
「そうね高政ちゃん」
「外康殿もでござるか」
「足が竦み上がっただよ…」
「大丈夫か、忠海?」
「心配御無用だよ、直正」
「そうか…」
場に緊張が走る。
そこで俺は口を開いた。
「たかだか部長を決めるだけでしょ?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「チッ…!マジ空気読めよ…」
俺なんか間違ったこと言った?
全員で俺を睨み付けてくるんだけど。
それにしても、この兼次マジ腹立つな。
「空気が読めない前田君は放っておいて、どうやって部長を決めましょうか?」
いいもんいいもん!どうせ俺は空気読めない男ですよ!
そこで有次さんが、全員になあ、と呼びかけて言った。
「じゃんけんじゃあ味がないな…」
「じゃあ有次さんはどうしたいの?」
七美は有次さんに問い掛ける。
そして有次さんは少し考えてから…。
「四分蔵でよくね?」
満場一致で賛成だった。
「ちょっと待つでござる!どうして拙者が部長なんでござるか!?」
「だって面倒臭いじゃ〜ん」
澪が面倒臭そうに、面倒臭いじゃ〜んと言った。
たしかに、部長は会議があったりと、いろいろ面倒臭い。
「拙者はクーリング・オフを申し立てるでござる!」
「うっせーな。おめーがやれよ!」
クーリング・オフしてどうするんだよ…。
それにしても今日の兼次はブラックブラックだな…。
「ふんっ!ブラック兼次殿の言う事を聞く気はござらん!」
おっ、四分蔵が対抗したぞ。
「四分蔵、腹を見てみろよ」
「腹?」
四分蔵は兼次に言われ、自分の腹を見た。
「これが火札でござるか〜」
ドッカーン!
…
……
「さて、部長をどうやって決めましょうか?」
四分蔵は爆発損だった。
「多数決なら絶対に拙者になってしまうでござるな。そこで部長は兼次ど…」
「ぁんだとこの野郎?」
四分蔵は黙った。
「じゃあ、じゃんけんにしましょうか」
またもや満場一致で賛成だった。
それに結局、じゃんけんになるんじゃん。
「それじゃあ二人組になって、じゃんけんをしてね」
成美先生が言うと、部員は一斉に二人組を作り始めた。
「四分蔵ちゃーん!」
「かっ兼次殿!?」
「俺とぉ、じゃぁんけんしようぜぇ?」
「ひっ!ひぃー!」
可哀相な四分蔵…。
そういう俺は七美とじゃんけんをして負けた。
「さて、残ったのが…」
「雪りんに負けちゃった〜」
「七美に負けた〜」
「兼次殿に脅されたでござる…」
「有次に負けてしまったわい!」
「高政ちゃんと忠海ちゃんに負けちゃったわ…」
外康さん、忠海、高政は三人組だったらしい。
「それじゃあいくわよ!」
成美先生が合図を出した。
「じゃーんけーんぽん!」
「俺はグーだ!」
「わたしもグーだよ」
「拙者もグーでござる」
「わしもグーじゃい」
「アタシもグーよ」
「ふふふふふふ…」
「みんなやるね…」
「それでこそ万部でござる…」
「関ヶ原の再来じゃい」
「気が抜けないわね…」
「あーいこーでしょっ!」
「俺はパーだ…」
「わたしもパー」
「拙者も同じく」
「わしもパー」
「アタシもパー…」
「ふふふふふふ…」
「みんなやるね…」
「それでこそ万部でござる…」
「関ヶ原の再来じゃい」
「気が抜けないわね…」
「あーいこーでしょっ!」
「チョキ…」
「また慶二くんと同じだ…」
「拙者もでござるよ…」
「わしの方がチョキじゃい」
「アタシの方がチョキよ」
「ふふふふふふ…」
「みんなやるね…」
「それでこそ万部でござる…」
「関ヶ原の再来じゃい」
「気が抜けないわね…」
「あーいこーでしょっ!」
「俺はパーだっ!」
「甘い慶二くん!わたしはチョキ!」
「それを言うなら澪殿でござる!拙者はグー!」
「甘いのは四分蔵じゃい!わしはパー!」
「直正ちゃん、もっと修行が必要ね…。アタシはチョキ!」
「ふふふふふふ…」
「みんなやるね…」
「それでこそ万部でござる…」
「関ヶ原の再来じゃい」
「気が抜けないわね…」
〜二時間後〜
「ついに三人か…」
「決着をつける時が来たでござるな…」
「負けないわよ…」
ついに俺、四分蔵、外康さんの三人になってしまった…。
澪、七美、雪江さんは雑誌を見ている。
高政と忠海は格ゲー。
有次さん、直正さんは看護婦や巫女さんの…。エロ本を…。
兼次は寝ている。
しかし一時間に一人のペースって…。
「それじゃあいくわよ」
先生もよく二時間もの間、じゃんけんぽんとか言い続けれたよな…。
尊敬するよ。
「おっしゃあ来い!」
「任せろでござる」
「負けないわよ」
緊張の一瞬…。
「じゃーんけーんぽん!」
俺はパーを出した
「拙者はチョキ…」
「アタシは…」
「パー…」
くっ…!四分蔵ごときに負けたのかっ…!
「やったー!勝ったでござるー!」
「うるせえ!」
「おんや〜。慶二殿、逆恨みでござるか〜?」
「……」
「あいたー!」
四分蔵の顔が憎たらしかったので、俺は無言で四分蔵のすねを蹴る。
いい気味だ。
「まさか外康さんと戦うことになるなんて、思いもしませんでしたよ」
「長かったわね…」
「ええ……」
「本当に……」
「長かったですね……」
「長かったわね……」
二時間の思い出が、走馬灯のように駆け巡る。
そこで兼次が起き上がった。
「なあ、最後は普通のじゃんけんだと面白くないと思うんだが」
兼次がそんなことを言うから、全員が集まって来たじゃねえかよ!
余計な事を言いやがって…。
「そうだね〜。最初はグーにするとか?」
ナイス澪!それなら大丈夫だ!
「グーではつまらないでござるよ」
この豚野郎っ!!!
「じゃあ最初は何にしようか?」
兼次が全員に問い掛ける。そして七美が手を挙げた。
「はい、七美」
兼次が七美を指す。
ていうか、本格的な話し合いになってるよ。これ時間の無駄だよな…。
「スクイズとか♪」
スクイズ?
「最低でも三塁ランナーとキャッチャーのエキストラがいないと。ピッチャーとバッターだけじゃできないぞ」
「そっか…」
兼次は七美の案を却下した。
当たり前だよな、スクイズって…。
「わしにいい案があるぞい!」
直正さんが勢いよく立ち上がった。
「最初は巫女さんでどうじゃい!」
この変態親父が!!!
「自重しろ。孤立してるぞ、直正」
「すまんかった…」
有次さんが直正さんを止める。
有次さんは多少良識があるからな。そこら辺は安心だよ。
「だから最初はナースにしよう」
さっきのは取り消しだァァァ!!!
「さすが有次じゃい!」
「だろ?」
「「アーッハッハッハ」」
笑っている二人は、無視することにした。
「アタシに案があるわ♪」
「はい外康さん」
外康さんが手を挙げる。
一応こっちにも発言権はあったんだな。
「言っておくが、慶二に発言権はねーよ」
何だと兼次!!!
「とにかく外康さん、案をどうぞ」
兼次が外康さんに聞いた。
変態二人以外が外康さんに注目する。
「最初はキッスで♪」
「採用」
「俺に部長をやらせて下さい」