信永編第15話〜慶二と里美と兼次〜
「あの人…。燃えてますわよ」
「あれが前田慶次の能力なのかしら…」
遠くで見ている二人も敏雄から感じるオーラに気圧されていた。
そして敏雄は土の山から降りた。
「この素晴らしい力を完全に使いこなせないのが残念だ」
「だろうな…。あんたは元々前田慶次の子孫じゃないからな」
「まあ仕方ないよ。この世には絶対に覆らない物がある。そればかりは諦めるしかない」
「…」
敏雄は忠海の方を見た。
「これは余談だが、その少女は本来あるべき本多忠勝の力を三十パーセントも引き出せていないだろうね。本気の本多忠勝はあんなものじゃない」
「三十パーセントも出せていない?」
敏雄は再び慶二を見た。
「多分慶二君が言っていた精神的なことが原因だろうが」
「…そういうあんたは前田慶次の力をどんだけ引き出せてるんだ?」
「わからない。どこが百パーセントなのかがわからないからね」
「まさかあんた本多と戦ったことが…?」
「無駄話しはここまでだ。里美を迎えに行かなければいけないからね」
「無駄話をしてきたのはあんただろ」
「そうだったね。申し訳ない」
敏雄は軽く笑った。
そして敏雄が纏っていた炎がさらに大きくなる。
「まるで超サイヤ人だな…」
「ハハハ。言われてみればそうだね」
「しかし炎を纏っただけじゃ…」
「俺の風林火山は攻略できない…。かな?」
慶二はもう、この程度のことでは驚かなくなっていた。
「ああ、炎で速くなるわけじゃっ…!」
慶二が気付いた時には、敏雄は後ろにいた。そして彼の剣が慶二の喉元に触れている。
「炎によって私の体温が上昇する」
慶二は剣から視線を外せない。
「それによって筋肉は人間の限界を超えた働きが可能になる」
敏雄は剣を慶二の喉元から離し、再び前の位置に戻った。
「何故今ので…」
「不意打ちは私の美学に反する。それだけだ」
慶二は目線を先程剣があった場所から離せない。
「くそっ!疾風迅雷!」
慶二は一回目のそれよりもさらに速いスピードで敏雄に襲い掛かる。
ガキィン!
しかし、慶二の戟は敏雄の剣に止められる。
「これは反応速度も上がるのさっ!」
敏雄は言うと、剣で戟を止めたまま、体の周りで燃えさかる炎を慶二に当てようとする。
「くそっ!!!」
慶二も体の周りに水を纏い、敏雄の炎にぶつけた。
ドーン!!!
そして慶二と敏雄の目の前でそれらが爆発を起こす。
「爆発…。しましたの…?」
明日香達は爆発の煙で、二人がどこにいるかわからない。
しかし、煙の中から何度も金属音が聞こえてくる。
「あの中で戦ってるの…?」
そして煙が消えた。
そこには息を切らしている慶二と、涼しい顔をする敏雄がいた。
「さすが慶二君だ。ここまでできるとはな」
「はぁっはぁっ…」
「元々、子孫じゃない上杉まで、上手に使いこなせるんだからね」
「それはあんただって同じだろうが…」
「フフッ…。だがもう限界のようだね」
「くそっ…!」
そして敏雄の目付きが鋭くなった。
「さて、そろそろ十時だ。私はこれから、里美を迎えに行かなければならない」
「…」
敏雄は剣を構える。
「もう終わりにしようか。前田慶二君」
慶二も戟を構えた。
「俺は負けねえよ!」
そして二人同時に動き出した。
…
……
「や〜っと麓に来たよ〜」
「上…。何かが燃えてる…」
「どしたの雪りん?」
丘の麓に来たところで、雪江が何かに気付いた。
「本当だ、燃えてるぞ」
兼次が斜め上を指差して言った。
「あそこに慶二がいるの?」
「明日香もいるのかな♪」
「多分そうだろうな」
「とにかく急いで登るぞ」
兼次が全員に向かって言った。
…
……
「外康殿!」
「あら四分蔵じゃない。どうしたの?」
「四分蔵、大丈夫かい!」
「そんなボロボロティッシュみたいな格好して。ひどくやられたな」
「誰にやられたんです?」
四分蔵は少し考えてから言った。
「忠海が怪我をしたでござる。相手は織田信永、拙者もそいつにやられたでござる」
「織田信永ってそいつじゃなかったんかい!?」
「そいつは影武者でござる。本物は今、慶二殿と戦っているでござる」
「あの忠海が怪我をしたか…」
「なら僕達も行きましょう」
「そうね。有次、剣を伸ばして全員運べるかしら?」
「お安い御用だ」
そうして五人倉庫の外に出た。
「よし、全員柄を掴んだか?」
「有次、上手いのう!」
有次の剣の柄は伸びているので、全員掴むことができている。
「伸びろ!にょいっ…ボー!」
剣は丘に向かってどんどん伸びていく。
そして数秒で丘の中腹にたどり着いた。
「今何か燃えてなかったか?」
「確かに何かが燃えてたわね」
「とにかく急いで上に行きましょう」
と、外康達の後ろから声が聞こえてきたので、外康達は後ろを向いた。
「あら、兼次ちゃん」
「なんじゃい、結局わしらは追い付いてしまったんかい」
「どうやったらそんな早く着くのよ?」
「俺の能力さ、伊勢さん」
「もしかして、にょいっ…ボー!を使ったの?」
「さすが澪さんです」
「えへへ〜♪」
高政が澪を褒める。褒められた澪も嬉しそうにしている。
「そんなことより早く登るでござる」
「そうだ。急いで登ろう」
「たしかにそうだ。緊急事態なのだろう?」
四分蔵と兼次は全員に呼び掛け、涼子がそれに応える。そして全員が丘の頂上にたどり着いた。
「やっと着いたよ〜」
澪は疲れを言葉にして表した。
しかし、そこで繰り広げられている状況を見ると言葉を失った。
「慶二くん…?」
慶二が敏雄に首を掴まれながら持ち上げられている。調度、慶二が丘に来た時の綾子と同じ状況だった。
そして綾子、忠海、明日香はそれぞれ違う場所で倒れている。
「慶二を離せ!!!」
兼次が敏雄目掛けて札を投げ付けた。
敏雄は慶二を横に放り投げて、飛んでくる札を斬った。
「これはこれは。皆さんお揃いで」
「お前が信永かい!」
「その通り。そういう君は、たしか井伊直正だったかな?徳川四天王の」
直正は剣を出した。そして剣が燃えていく。
「正解じゃい!」
「直正っ!危険だ!」
直正は燃える剣を構えて敏雄に斬りかかった。
キィン!
しかし敏雄は直正の剣を剣で受け止める。
「落ち着きが足りないね」
言うと敏雄は、直正の内臓をえぐり取るかのように殴った。
「うっ…!!」
直正はそのまま数メートル飛ばされ、気を失った。
殴られた場所は服が焼け焦げていた。
「直正!」
有次が直正に駆け寄った。
「…どうやら気を失っただけみたいだ」
全員が安堵の表情を浮かべる。しかし、この状況に驚き声が出なかった人物が一人いた。
「貴方が織田信永だったの…?」
兼次以外の全員が里美を見た。
「久しぶりだな里美。わざわざ迎えに行く手間が省けたよ」
「…」
「てっきり里美は知っているかと思っていたけれど…」
兼次は里美の隣に立った。
「あんたが信永だったのか」
「そうだっ…。ん、兼次君じゃないか。これまた久しぶりだね」
「…」
「兼次君も里美も、慶二君から聞かされていなかったのか?」
「ああ。能力を奪って消えた、とまでしか聞いていない」
「そうか。どうやら慶二君は何でも一人で背負い込む癖があるみたいだな」
そして涼子が里美に問い掛ける。
「里美と兼次はあの男と知り合いなのか?」
「…私のお父さん」
またもや兼次以外が、今度は里美の発言に衝撃を受けていた。
「いまさら何をしに来たのよ!」
「また説明するのは面倒だな…」
「慶二に酷いことをしといて…。よくもっ…!」
里美は拳を強くにぎりしめて怒りを抑えている。
そこで慶二がゆっくり立ち上がった。そして里美を見る。
「慶二…!」
「里美、来ちゃったのか…」
「ごめん…」
「いや、気にするな。いずれは分かる羽目になっていた…」
「そうだね。慶二君の言う通りだ」
慶二はゆっくり歩いて、里美達がいる場所に近付いた。
「今まで黙ってて悪かった…」
里美と兼次が首を横に振る。
「そんなことより大丈夫なの?」
七美が心配そうに慶二を見ながら言った。
「大丈夫…。と言いたい所だが、体の節々が痛い」
「前田さん…。外康さんに回復してもらえば…」
「残念だが回復している時間は無いんだ…」
そして慶二は七美を見て手招きした。
「七美!」
「何?」
「頼み事がある」
そして七美が近付いたところで何かを話した。
「いいけど…。何に使うの?」
「ということは、本当にあるのか?」
「たしかあったと思うわよ」
「そうか!じゃあ頼んだぞ!」
「わかった、任せて♪」
七美は何処かへ行ってしまった。
慶二は七美が行ったのを見ると、雪江に向かった。
「雪江さんは外康さんを守っていて下さい。怪我人や澪と涼子も一緒に」
「わかりました…」
次に慶二は高政と有次の所に向かった。
「二人は待機していて下さい」
「どうしてだ」
「実は…」
慶二は二人にしか聞こえない声で話した。
「里美さんが…?」
「いずれそうなる。その時になるまで無駄に怪我をしない為だよ高政」
「しかし勝つこと前提で話すとはな」
「じいちゃんがよく言ってました」
「前田さんもよく言ってたやつですね?」
「そうさ」
「そうか。それじゃあ俺達は期待して待ってるとするよ」
そして最後に慶二は里美と兼次の所に行った。
「里美、黙っててわるかった」
「ううん、慶二が私のことを考えてくれた結果でしょ?それに…」
「それに?」
「薄々気付いてたから…」
慶二と兼次が驚きながら里美を見た。
「里美の頭が成長したのか!?」
「うっさいわよ兼次!」
「頭のいい里美はキャベツのないコロッケみたいな物だな」
「べつにそれならいいじゃない!」
そして慶二と兼次は笑いだした。
「いや、パンのないフライパンだ」
「それは違うぞ兼次。飛ばないトビウオだ」
「それを言うなら足が遅いチーターだろ」
二人は馬鹿笑いをする。
「うっさいのよ!!!あんたら後でぶん殴ってやる!!!」
「…できればそうしてほしいよ」
「そうだな。俺も里美に殴られたい」
「そうね…。私も殴りたいわ」
三人は真剣な表情になった。
「折角俺が戻ってきてやったんだ」
「やった、って…」
「それに今は三人だけじゃないしな」
「ああ。皆がいる」
「これで幸雄がいればよかったんだけどな」
「だな。とにかく里美は大丈夫か?」
「うん。私の父親だから、私がけりをつける」
慶二は自分の頭を掻いた。
「…俺の心配は杞憂だったな」
「しかし里美に言わないにしても俺には言っとけよな!」
「そうだったな」
「駄目よそんなの!」
会話が止まり、そして三人は敏雄を見た。
「話しは終わりかな」
「ああ。べつに攻撃してくれてもよかったんだぞ」
「ハハハ。最後の会話を邪魔するなんてできないよ」
「最後の会話だと?随分高い所から物を言うな」
兼次は敏雄を睨み、敏雄は笑みを浮かべる。
「二人共、下がっていてくれ」
「どうして?私も戦…」
兼次が里美の肩を掴んで首を横に振る。
「俺達じゃあ足手まといだ」
「…でも」
兼次はまた首を横に振る。
「わかった…」
「悪いな兼次…」
「慣れたさ。永遠の二番手であることにもな」
兼次は自分を嘲笑うかのような表情をする。
「二番手?よく分かんないが、バントの練習はしとけよ兼次」
「その助言、ありがたく受け取っておくよ」
二人は高政達がいる場所まで下がり、慶二は敏雄を見た。
「また挑むか。どうせ結果はさっきと同じだよ」
「…」
「君が負けて私が勝つ。さっきの戦いで分かったと思うんだけどな」
「俺はそうは思わない…」
敏雄は眼鏡を外して慶二に投げた。
「慶二君の視力は?」
「2、0だ」
「私と同じ。それ、掛けてみなよ」
慶二は眼鏡を掛けた。
「全然見えねぇ!」
「だろ?これにも理由があるんだ」
「…」
「視力を失った人はその器官が無い分、別の器官が発達する。聴力だったり嗅覚だったりね」
「擬似体験か?」
「違うよ。修行さ」
慶二の額に冷や汗が流れた。
「あんたは本格的にやばいやつだな…」
「フフッ。どうも」
慶二は眼鏡を外した。
「疾風迅雷!」
そこからの二人は人間の動きではなかった。
拳、蹴り、戟と剣の応酬だ。
拳を止めた後は蹴りを当てようと、蹴りが止められた後は武器で武器を止める。
そんなことの繰り返しだった。しかし、慶二に疲れが見える。
そこで一旦慶二は離れた。しかし…
「甘いっ!」
すかさず敏雄の炎が慶二を襲う。
「天長地久、富士の如し!」
慶二は戟を地面に突き刺さした。
すると山以上の土が慶二の周りから噴き出し、炎から身を守る。
「怒涛の大地、烈火の如く!」
慶二が再び戟を地面に突き刺すと、今まで噴き出していた土が、敏雄目掛けて襲い掛かる。
「はあっ!」
敏雄が叫ぶと、土は全て重力の餌食となってしまった。
「おしいね」
「はぁっ、はぁっ…。まだだっ!!!」
言うと慶二は水の竜を出現させた。
「なにっ!?」
「上杉の最終奥義だ!」
「なっ…。そんなことまで出来たのか!?」
「じいちゃんの口癖さ。奥の手は最後まで隠しておけってな」
「くっ…。冗談ではない!」
「さっきまでの威勢はどうした?」
敏雄は下を向いた。
「これで終わらせてやるよ伊勢敏雄!!!」
「フフッ…」
急に敏雄が下を向きながら笑い始めた。そして笑いながら顔を上げて慶二を見る。
「ククク…。アハハハハ!」
「どうした?絶望感でおかしくなったか?」
「ハハハハハ!」
「どうした!何か言えよ!」
慶二は苛立つ。そして敏雄は笑うのを止めた。
「私の口癖を教えてあげようか?」
「何だ?」
敏雄はもう一度軽く笑ってから言った。
「奥の手は最後まで取っておけ…」
敏雄は、慶二の水の竜より一回り大きい炎の竜を出現させた。
「なっ…!!!」
その場にいた全員が驚いた。
「フフフ。これで終わりだよ慶二君…」
そこで里美が慶二の隣に来た。
「お父さん!もうやめて!」
「残念だがそれはできない」
「どうして!?目的は何なの!?」
敏雄は面倒臭そうに言った。
「里美、君だよ」
「私…?」
「やめろ敏雄!!!」
里美に言った敏雄に慶二が怒鳴る。
しかし、里美はその慶二を見て言った。
「本当なの?」
慶二は里美から目線をそらして言った。
「ああ…」
「そうなの…」
そうして里美は再び敏雄を見た。
「なら私がお父さんに付いていくから慶二は見逃して!」
「里美!?」
慶二は驚いて里美を見る。
「おい里美!!!」
「里美さん…!」
「里美…!」
「本気か!?」
遠くで見ていた兼次、雪江、澪、涼子が里美に叫ぶ。
「うん、理由は分からないけど私を連れに来たんでしょ?」
「里美、駄目…!」
里美は慶二を抱きしめた。
「いいの。慶二の役に立つなら私は何でもするから…」
「あなたに…。死んでほしくないの…」
里美は泣いていた。
「今回も私のせいで慶二は傷ついて…。いつもいつも私ばかり助けられて…」
「ごめんね…。私、こんな形でしかあなたを助けられない…」
「私は本当に何もできない女だから…。料理も、勉強も…」
「だから…。もう私の為に何もしないで…。私のせいで慶二が傷つくのは嫌なの…。だから…」
里美は慶二を離した。慶二は全く動くことができない。
「いいでしょお父さん!」
「いいでしょとは?」
敏雄は里美に尋ねた。
「私がお父さんに付いていくからここにいる全員を見逃して!」
「里美さん!」
「やめて里美!」
「駄目だ里美!」
「駄目です里美さん!!」
雪江、澪、涼子、高政が叫ぶ。
有次と兼次は目をつむっていた。
「みんな!ありがとう!」
里美は笑って言った。
「たしかに私の目的は里美だ。ここにいる人間を殺す必要は無い」
「だったらこの交換条件は…」
そして敏雄はゆっくりと口を開いた。
「残念だがその条件は呑めない」
「え…?」
「いずれ里美は私の元へ来る。本来の計画通りなら、慶二君達を殺す必要はなかった」
全員が敏雄の一言一句、聞き逃さないかのように聞いていた。
「もちろん今の状況でもそれは言える。つまり慶二君を殺す必要はないんじゃないかということだ」
「そうだな…。俺を殺さなくても里美は行くからな…」
「なら!私が素直に行けば…」
「でもそれじゃあ駄目だ」
場の時が止まる。
「慶二君は里美を奪還しに来る。これは百パーセントそうだと言える」
敏雄は再び炎の竜を動かし始めた。
「他の人は生かしておいても支障ない。しかし慶二君は別だ」
「くそっ…!!!」
「予定変更ってわけさ」
慶二は里美の肩を掴んだ。
「逃げろ!巻き込まれるぞ!」
「嫌っ!」
里美は慶二の手を振り払う。
「言ったでしょ!慶二が死ぬなら私も死ぬって!」
「そんなこと言ってる場合か!!!早く逃げろ!!!」
「嫌っ!絶対に嫌っ!」
「里美!!!」
そして炎の竜が二人目掛けて襲い掛かった。
「慶二!!!里美!!!」
「キャー!!!」
「早く逃げろ!!!」
「慶二さん…!」
兼次と澪、涼子が叫ぶ。雪江はただ呆然としていた。
「逃げろって言ってるだろ!!!」
「だから嫌だって…」
慶二は戟を地面に突き刺さした。
「兼次!!!」
「何するの慶二!!!」
土が里美を一気に兼次の所に運び、兼次は里美を受け止めた。
「ばかやろう…」
兼次は唇を噛み締める。
そして慶二は水竜を動かした。
「行け!!!水竜!!!」
そして水竜が敏雄の炎竜とぶつかる。
竜同士がぶつかった瞬間、そこから突風が巻き起こった。
「ハハハハハ!ここまで楽しい戦いは初めてだよ、前田慶二!!!」
「くそっ!!!」
突風が巻き起こる中、二人は叫びながら言葉を交わす。
「だが前田慶二!!!これで終わりだ!!!」
炎竜が水竜を飲み込もうとする。
「くっそぉぉ!!!」
慶二は叫ぶ。が…
水竜は飲み込まれた。
「死ねぇ!!!前田慶二!!!」
そして炎竜はその勢いのまま慶二を飲み込んだ。
「ウワァァァァー!!!!!」
「慶二ー!!!」
そして慶二は燃え尽き、倒れた。
敏雄は体を纏っていた炎を消す。
「慶二殿!!!」
「慶二くん!!!」
「くそっ!よくも前田さんをっ!!!」
「よくも慶二を!!!」
「許さない…!!!」
有次、高政、雪江は怒って戦闘体制に入った。
「三人共!駄目だ!」
「雷切…!」
「伸びろ!!!」
「射殺せ!!!」
兼次が止めたが三人は聞き入れなかった。
「さすが兼次君だ。君達は彼の言うことを聞くべきだね」
敏雄は弓を剣で弾き、伸びてくる剣は中指と人差し指で挟んだ。
「君は寝てな」
言って、雪江に重力をかけた。
「キャー!!!」
「雪りん!!!」
「雪江殿!!!」
しかし雪江からの返事はなかった。
「くそっ!!!」
言うと涼子の両手が光り、二本の剣が出てきた。
「一日で武器を出せるまでになったのか!?」
「黙れ!!!」
涼子は物凄い速度で近付き、敏雄の後ろをとった。
「終わりだ!!!」
しかし涼子の剣は空を切った。
「まさかそこまで出来るとはね。本当に驚きだ」
敏雄は自分の後ろに回り込んだ涼子の、その後ろにいた。
「君も殺しておかなきゃ後で面倒かな?」
敏雄は手刀で涼子の首を狙って気絶させた。
「とりあえず今はこれでいいか」
言い終えた後、敏雄は高政と有次の目の前にいた。
「君達は気絶させとけば大丈夫かな」
「いつの間に!?」
「…!?」
敏雄は涼子にやったのと同じように二人を気絶させた。
「さて、残りはいいとして…」
「待つでござる!」
四分蔵が敏雄目掛けてクナイを投げる。が、敏雄いとも簡単にクナイを掴んでみせた。
「返してあげるよ。ほら」
敏雄はそれを四分蔵の足に当てた。
「ぐわあああ!」
「そこはさっき切った場所だから、もう君は動けないはずだ」
そして敏雄は兼次の方に一歩一歩近付いていく。
「さて、里美を渡してもらおうか兼次君」
「…断る」
兼次は気絶している里美を抱えている、手の力を強くした。
「君が断ってもどうせ十時になったら私の元に来る」
「…どういうことだ?」
「説明するのか。こりゃまた面倒だね」
「いいから言え…。何故里美があんたの所に行くんだ」
「里美は十時に私の命令を聞くだけの殺戮兵器となるからだ」
「殺戮兵器…?里美の体に何かしたのか?」
「上杉の強化…。いや、強化と言うより暴走に近いかもしれない」
「上杉の強化だと!?」
「そうさ。だから里美をこっちに渡してくれ」
兼次は里美を思いきり抱える。
「絶対に行かせねえよ…」
「ん、頭のいい君にしては有り得ない発言だね」
「そうかもな…」
「だろう?大人しく里美を渡してくれ。君が持って行った所で意味が無い」
「ごちゃごちゃうるせえな…」
兼次は里美を左の脇に抱え直し、そして札を出した。
「離さねえって言ったら離さねえんだよ!!!」
敏雄はやれやれといった表情をする。
「光れ!!!」
兼次が言うと、札が光った。その間に兼次は距離を取って、札の用意をする。
「絶対に行かせねえぞ里美!」
そして光が消えた。敏雄はその場所から動いていない。
「爆発しろ!!!」
敏雄の足元にあった何枚もの火札が次々と爆発する。
敏雄は爆発を避ける為に高く飛び上がった。
「終わりだ伊勢敏雄!!!」
兼次はすかさず数枚の火札と水札を敏雄目掛けて投げた。
「これは!?」
「火だけの爆発より凄いぞ」
「くっ…!」
札が敏雄に当たり、大爆発を起こした。
「…」
そして煙が消えた。
「だよな…」
そこには何事も無かったかのように平然と立っている敏雄がいた。
「終わりか?」
次の瞬間、兼次は腹に拳の感触を感じた。
「がぁっ!!!」
兼次はそのまま吹き飛ばされ、岩に背中をぶつける。しかし里美を離してはいない。
「いい加減里美をわたしてくれないか?」
敏雄はそのまま兼次を何度も蹴る。その度、兼次は岩に背中を強く打つ。
「ぐわぁぁ!!!」
兼次はこの世のものとは思えない悲鳴をあげる。
そして敏雄の足が止まる。
「気を失ったかな?それじゃあ里美を…」
しかし、兼次は火札を出して敏雄に当てた。
「ぐっ…!」
敏雄は下がった。そして兼次がゆっくり、確実に立ち上がった。
「里美は絶対離さねえよ!!!」
敏雄は一瞬驚きの表情を見せたが、また元の冷静な表情に戻った。
「君も殺す必要があるみたいだね」
「…」
兼次は立つだけで精一杯だった。
そして敏雄は剣を構え、一歩一歩兼次に近寄る。
「直江兼次。名前はしっかりと覚えておくよ」
「くっ…!」
敏雄は兼次の目の前で止まった。
「何か言い残すことはあるかい?」
そこで何故か兼次は笑みを浮かべた。そしてこう言った。
「馬鹿野郎…。遅いんだよ…」
兼次は気を失って倒れた。
「今のが最期の言葉か…?」
そこで敏雄は背中の方が暑いことに気付く。
「この暑さは何だ…」
敏雄は後ろを振り返った。
そして敏雄は衝撃の光景を目にした。
「な…。何故…?」
敏雄の冷静な顔は完全に失われた。
「何故あの炎を喰らって生きている!?何故お前が炎を纏っている!?」
敏雄が見た先には前田慶二、その人が炎を纏って立っていた。
「わかんねえか?」
敏雄は混乱して頭が回らなかった。
「俺がわざわざじいちゃんの場所に行って何をしてたと思う?」
「…!」
「前田慶次の能力を使いこなせるようにする為だ」
「しかしお前の能力は私が…」
敏雄は口調まで変わるほど驚いていた。
「なにも前田慶次の能力を持つのは俺だけじゃない」
「そうかっ…!!!」
「そう。じいちゃんから貰ったんだよ。前田慶次の力をな…」
「くそっ…!何故今まで気付かなかったっ…!」
そして慶二は自分の手を見た。
「まあ流石にさっきは死にかけていたけどな」
「…ならどうして立ち上がれた!?」
慶二は笑った。
「兼次と外康さんのお蔭さ」
「…!?」
敏雄は一歩後ずさった。
「外康さんが回復してくれている間、兼次が時間を稼いでくれてたんだってな」
「なっ…!」
そして慶二は戟を構えた。
「そうか…。あの直江が策も無しにあんな無謀なことをするはずがなかった…」
「そういうこったな」
「くそっ!くそっ!くそっ!!!」
「それでまだ戦うのかな?敏雄さんよ」
「畜生っ!!!私は負けんぞ!!!」
言うと敏雄は再び炎の竜を作り出した。
「芸がないな。竜だけか?」
「竜だけか…。だと?」
言った慶二は竜と同じくらい大きい炎の虎を作り出した。
「虎!?」
「奥の手は最後まで隠しておけ。これが俺の最後の奥の手だ」
「奥の手…」
「他にもいろいろできるぞ。ハムスターだったり河童だったり」
慶二は、虎の姿をハムスターや河童に変えた後、また虎に戻した。
「これで終わらせてやるよ伊勢敏雄!!!」
「前田慶二!!!お前だけは許さんぞ!!!」
「「ウォォォー!!!」」
そして敏雄の竜と慶二の虎がぶつかった。
携帯投稿で二日連続一万文字以上ってのは指がキツいですね〜。パソコン使えって話ですね。




