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信永編第13話〜反省と後悔〜

「気持ち悪ーい!」

「「気持ち悪い…?」」


忠海は気持ち悪いからと言って二人の負家から逃げ回る。

彼は彼でそれなりにショックを受けていた。


「もう飛んでっちゃえー!!!」


忠海が叫ぶと、風が巻き起こって負家を吹き飛ばした。そしてそのまま左の負家に狙いを定めた。


「反撃だー!えりゃあ!!!」


しかし忠海が狙いを定めた負家は崩れて土になってしまった。


「あれ?これ人形だったの?」

「ハズレだ」

「えっ?」


右の負家がしてやったとばかりに鼻で笑った。


「区別がつかんだろう…」

「えりゃあ!!!」


忠海は負家の話を無視して槍で突く。が、彼は交わした。


「涼子のお父さんの敵だー!」


そのまま忠海は槍を何度も突く。


「ならばっ…!」

「えっ?」


忠海は負家から危険な感覚を感じ取ったので、突きを止めて彼から距離をとった。


「最終奥義だ…」

「うそー!?」


負家は言うと、先程のように土で自分を作った。


「んぎゃー!何これー!」


しかし、人数が百人くらいいた。

しかも全員が黒尽くめだ。


「奥義、エージェント負家」

「気持ち悪いよー!」


やはり忠海は逃げ回る。


「来ないでー!」

「逃げても無駄だよアンダーソン君…」


百人の大合唱だ。

そしてエージェント負家の一人が拳銃を取り出す。取り出したのがおそらくオリジナル負家だろうか。


「さようならアンダーソン君」


そしてオリジナルは発砲した。

しかし忠海は避けようとせずに、とんできた弾の方に手をかざした。

そして…


「無駄だ」


なんと弾のスピードが落ちていく。

そして最終的に止まった。


「まさか…。お前が救世主か…!」

「そうだ。ボクがネオ忠海アンダーソンだ!」


エージェント負家達は一斉に驚く。


「ならば倒すまでだ…」

「来い!エージェントなんとか!」


先程の、気持ち悪ーい!はどこかへ行ってしまったようだ。

そしてエージェントなんとか達が一斉にネオ忠海目掛けて襲いかかる。


「ハァァ!」

「飛んだ!?」


しかし、ネオ忠海は風を使って飛び上がる。


「全員消えろー!」


ネオ忠海のおこした風がエージェントなんとか達を吹き飛ばす。


「これが予言者…」


エージェントなんとか達は的外れなことを言って全員土になった。


「完全に俺の負けだ…」

「ふぅ…。ボクの勝ちだね」


負家は武器を置き、忠海は降りてきた。


「桁が違ったな…」

「風と地の相性が悪かったからだよ」

「…」

「どうしたの?」

「俺は負けた。煮るなり焼くなり好きにしろ…」

「その前に。どうして涼子のお父さんを襲ったの?」

「たまたま子孫がいたからだ。いいから早く煮ろ!焼け!」

「無理無理!火がないよ!」

「そうだな…」

「キミは何歳?」

「17だ」

「そう。信永の命令だったとはいえ人殺しはよくないよ」

「…だろうな。だから俺を煮ろ!焼け!」

「とりあえず涼子に謝るまでは何もしない」

「…」


負家は一回溜め息をついて。


「お前はあいつを助けなくていいのか?」

「…べつにいいよ」

「何故だ?利上は俺とレベルが違うぞ」

「うん。でも、昔からあの利上との因縁は聞いてたし…」

「そうか…」

「それに慶二なら大丈夫。それより涼子に謝ってよ」

「ああ…」


忠海と負家は涼子の方に向かった。





……


………




「島津か…」

「島津?」

「とりあえず遠くにいな、坊や」

「う、うん」


俺は遠い所まで下がった。


「見た所かなりの使い手だな。名前は?」

「前田利上だ」

「前田利上だと!?」


彰さんの表情が変わった。


「利家の子孫で歴代最強の男か…?」

「ほう、知ってたのか」

「嫌でも知らされるさ」

「そうか。いい気分だな」

「まあ祖先は俺の方が強いし、倒してやるさ」

「確かに祖先武将の質ではお前が勝っているな。だが…」


利上は槍を構えた。


「祖先の質より重用なのは自分自身の経験と才能だ」

「…」

「どうやら俺は前田利家にそっくりらしい」

「そうか…。残念ながら俺には才能がない」

「…」

「しかし妹には才能がある。いや、才能があるなんてもんじゃない」

「そうか。ならお前が死ななきゃ駄目だな」


俺はこの時、この発言の意味がわからなかった。


「人間は普通に暮らすのが一番だ。だから俺が死ぬわけにはいかない」

「妹想いな兄貴だな」

「あいつにはいつもベタベタされてるよ」

「しかし躊躇はしないぞ!」

「こい!」


そこからの戦いは凄まじかった。

自分が殺されそうな状況にも関わらず、見入ってしまう程だ。


「何が自分は才能ない、だ。才能の塊じゃないか」

「へぇ…。俺って才能あったんだ」

「妹はこれ以上ってことか」

「そうだ」


この時二人は戦いながら会話をしていた。

そして利上がまた光の槍を出した。


「これは!?」

「三回当たると消えちゃうんだよー!!!」


俺は大声を出して彰さんに教えた。


「消える?どういうことだ?」

「そのまんまさ。消えるんだ」

「そうか…。当たるわけにはいかないな」


言うと剣が光りだした。


「お前の能力を知ってて、俺の能力を知らないのはフェアじゃないよな」

「ハハハ!紳士だな」


そして光っていた剣が二本に分かれた。


「俺の属性は風だ」

「風?」

「そう。風の剣だ」

「…子孫には地水火風雷光闇、それぞれの属性剣というのがある」

「そう、その風が俺ってわけだ。能力は速くなるだけ。後は剣が軽いってことくらいかな」

「…そうか」

「さて、そろそろやるか?」

「そうだな!」

「いくぞっ!」


二人は戦闘を再開した。

まず利上が槍を飛ばす。それを彰さんは全て交わした。俺には動きが見えていなかったが。

そして…


「遅いなあんた」


彰さんはいつの間にか利上の懐に入っていた。


「終わりだ!」


彰さんがアッパーで利上を殴り飛ばした。さらに空中で受け身をとった彼に肘打ちを当てる。

利上は地面に落ちるがすぐに起きて構える。


「いない!?」

「遅いんだってば」


彰さんは後ろにいた。そしてそのまま右肘打ちを利上の左側頭蓋骨に喰らわせる。


「ガァッ!!!」


利上は仰向けになって倒れた。


「さて、動くなよ。動いたら殺さなきゃいけなくなる」


彰さんは仰向けに倒れている利上の首に剣を向けていた。


「ほう…。なかなかやるな」

「おいおい、この状況で何を言ってんだよ?」

「動いたら殺さなきゃいけなくなるか…。フフフ」

「何を笑ってんだよ」

「今殺しとかなかったことを後で後悔するんだな」

「なっ…!?」


彰さんが急に地面に膝を付いた。


「槍は全て交わしたはず…」

「あと二回だな…」


彰さんは背中から槍を抜いた。


「だがお前に捉らえられない速度で動けば槍には当たらない」

「なら…。やってみろ」


利上の周りに何十本もの槍が現れた。


「行くぞ!」


彰さんが消えた。


「遅いな。能力を使っておいてそれか?」

「何!?」


後ろに回り込んだ彰さんだが、そこには槍が飛んできていた。


「うわっ!」


彰さんはジャンプをして交わしたが、さらに槍が飛んできた。


「くそっ!」


彰さんはとてつもない速さで剣を振り、槍を弾いていく。そして利上の方を見たがしかし…


「いない!?」

「残念。上だ」


空中にいる彰さんのさらに上の場所にやつはいた。

そして背中を刺された。


「あと一発だな」

「がぁっ!」


刺された彰さんは顔から地面に落ちた。


「実力差がわかっただろ?もう帰れ。お前に用はない」

「お前は何故あの子を狙う…?」

「お前が知ってどうする」

「ただの好奇心だよ…」

「…理由はやつが前田慶次の子孫だからだ」

「あの子が!?」

「もういいだろ?早く帰れ。さもなければ殺す」

「あの子はどうする…?」

「殺す」

「そうか…」


彰さんは背中から再び槍を抜いて、そして立ち上がった。


「それなら放っておくわけにはいかないな」


彰さんは一気に間合いを詰めた。


「よし!捉らえた!」


その勢いで利上に切り掛かる。しかし、当たる瞬間に利上が消える。


「背中を刺されたのにも関わらずその速さか」

「なにっ!?」


すでに利上は彰さんの右にいて、彰さんを槍で突こうとしていた。


「死ね」



ガキィン



「坊主…?」

「お前…。あの距離からどうやって…?」

「危なかった〜」


俺は戟で槍を止めながら利上を見る。


「お前もあと一回だぞ」

「どうせ彰さんがやられたら俺は消える」

「なるほど…」


利上が離れた。


「彰さん、怪我は大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ」

「じゃあいきましょうか」

「待ってくれ。君は前田慶次の子孫か?」

「ええ。でも今は…」

「話している暇などないぞ!!!」


話し途中、不意に槍が飛んできたので俺達は左右に回避した。


「まだまだ!」


さらに槍が二人目掛けて飛ぶ。俺も彰さんもかろうじて交わしているが、当たるのは時間の問題だった。

とにかく俺は利上に接近しようと。


「疾きこと風の如く!」


俺は利上の後ろをとる。利上は俺に気付いていないようだ。これはチャンスと思い、戟を振るった。


「速いな、前田慶二」

「えっ…」


利上を倒したと思ったがしかし、いきなり俺に向かって数本の槍が飛んできた。

俺はもう駄目だと思ったが、彰さんが助けてくれた。

そして彰さんはそのまま利上に切り掛かった。


「喰らえ利上!」

「ぐわっ!」


彰さんが振るった剣が利上を斬った。

そして利上はそのまま倒れる。


「倒したんですか?」

「多分な」

「ふぅ…。よかった〜」


俺は一気に力が抜けた。今思えばこの時、何故とどめを刺さなかったのかと思う。


「とりあえず坊主のことを聞きたいな…」

「俺のことを?」

「前田慶次のとは違う能力を使っていたな?」

「はい」

「それが気になる。もしかして坊主は…」

「特殊継承ですよ。武田信玄と前田慶次の」

「そうか…。聞きたいことはそれだけだ」

「そうですか。それじゃあ利上を…」


俺達は会話のために利上から目を離していた。利上がいた場所を見ると利上はいなかった。


「危ない!」

「え?」


彰さんが大声をだしていたが、俺には何が起こっているかわからなかった。気付いた時には腹を槍で貫かれている彰さんと、槍で貫いている瀕死の利上がいた。


「危なかったな坊主」

「え…」

「邪魔されたか…」



彰さんが槍に貫かれたのはこれで三回目だ。

俺は言葉が出てこなかった。


「今度は…。殺してやる…。前田慶二」


利上は自分の指に槍で傷をつけると、消えてしまった。


「いなくなったか…」

「彰さん…」

「俺はもう消えるか…」


彰さんの体が足からどんどん透けていく。


「なあ坊主」

「はい…」

「小学何年生だ?」

「三年生…」

「そうか…。妹も三年生だ」

「…」

「よしっ!」


彰さんは言うと俺の手を握ってきた。


「坊主にこの能力を預ける」

「えっ?」

「俺の妹に能力が目覚めないようにする為だ。命を助けたんだからそのくらいのことはしてくれ」

「…」


彰さんの手が光った。心なしか力が溢れるような気がした。


「よし、これでいい。もし坊主が妹と知り合ったら仲良くしてくれよ」

「うん…」


俺は泣いていた。

これから消えるのにどうして笑っていられるんだろう。俺はその疑問で頭が一杯だった。


「おいおい、お前が泣くなよ」

「ありがとう彰さん…」

「…ああ。それじゃあ妹を任せたぞ」

「わかった…。絶対に仲良くなる」

「そうか。これで思い残すことは…。そういや名前を言ってなかったな」

「…」

「妹の名前は御堂りょう…」


彰さんは消えてしまった。





……




利上が百本の槍を飛ばしてきたが、慶二は一回も当たらなかった。


「さすがに強くなったか」

「ああ…」


利上はさらに光の槍を出した。


「これならどうだ!」


利上は槍を飛ばすと同時に、自分も慶二に突っ込んだ。


「動かざること山の如し!」


言うと慶二は戟で床を突いた。

すると慶二の周りに土が間欠泉のように噴き出した。


「これがまさか武田の…」


利上は攻撃を止めた。


「なんだ?あの時気付かなかったのか?」

「あの時…?」


慶二は再び戟を同じ場所に突き刺した。


「侵略すること火の如く!」


次は大量の土が利上目掛けて襲い掛かる。

利上はそれを避けるが、土は利上を追い続けた。そしてそれは利上を呑みこんだ。

しかし…


「いい加減真面目にやれよ」

「ばれていたか…」


利上が土の山を吹き飛ばして中から現れた。


「俺は信永を倒さなきゃいけないんだ。早くしろ」

「そう焦るなよ!!!」


二人はお互いに突っ込んだ。





……




「おう高政!そっちはどうだった?」

「あっ有次。僕は佐々成正と戦った。有次は?」

「滝川二益だ。…直正は?」

「たしか外康さんの護衛をしてたかな」


ここは米沢港の第一倉庫内。高政と有次がそこにいた。


「おう二人共!」

「二人共大丈夫だった?」

「あっ、外康さんに直正だ!」

「俺達は大丈夫だよ。そっちは?」

「わしらは大丈夫じゃい!ついでに森乱丸を倒したしな!」


直正が意気揚々と現れた。


「お前らも聞いたのか?」

「信永は港にいるって聞いたわよ…」

「どこにいるんでしょうね?」

「見た感じは何処にもおらんのう」

「いたわ…」


全員が外康の見ている方向を向いた。


「君達は徳川か…?」


明かりが点いて、そこに一人の高校生が椅子に座っていた。


「…そうよ」

「あいつが信永…?」

「まだまだ若いのう。わしより若いぞ」

「強そうですね…」


一同に緊張が走った。


「ここに来たということは私の部下を倒したのか。流石徳川四天王だ」

「あまり歯ごたえが無かったがのう」

「うそつけよ。疲れた顔してんじゃねーか」

「僕も有次さんに同意します」

「ぐぬぬ…」


ぐぬぬなんて普通の人は言わないだろう。



「そう。俺が伸長だ」



「やはりやつが信永か…」

「有次、高政、いくぞ!」

「わかったよ!」

「おう!」


三人は織田伸長に襲い掛かった。





……




「まさかここまで強くなっるとはな…」

「とりあえず武田の能力は全て使えるようになったしな」

「地最強の武田か…」

「これを使いこなすまで二年かかったよ」

「二年…」


利上は驚きを隠せないようだった。

それもそのはず。能力をマスターできるようになるには普通でも五年以上かかる。それを慶二は二年で熟したというからだ。


「天才と言うやつか…」

「まあ指導者があれだからな」


利上は頭上にあった槍を全て消した。


「もうあんな小細工は通用しないだろう」

「…」


刹那、慶二と利上の武器がぶつかる音が何度も聞こえてくる。

利上は槍で何度も突き刺そうとして、慶二は避けながら戟を器用に振り回して利上を狙う。しかし…


「ぐっ!」

「残り一回だ!」


慶二は利上に右足を突き刺され、今度は左肩を突き刺された。



「はあ…。はあ…」

「お前は充分に速かったが、その速度に体がついてこれてない。もう骨も筋肉も限界なんだよ」


利上の言った通り、慶二はもう動けなかった。


「それに、俺とお前の間には経験以上に決定的な差がある」

「…」


利上が慶二に突っ込んでいく。


「敵を殺す覚悟だ!」

「敵を殺す覚悟…?」

「そうだ。お前にはそれがないから攻撃があまっちょろいんだよ!」

「人を殺す覚悟だと…?」


利上は慶二の腹目掛けて槍を突いた。

しかし、慶二に突き刺さるかと思っていた槍は慶二に掴まれていた。


「たしかにそうだな…」

「何っ!?」

「だがっ…!」


慶二は槍を離して戟を構えた。


「そんな物はいらない!」


言うと、先程のように戟を地面に突き刺した。


「静かなること林の如く!」


「何だこれは!?」


急に土が音もなく利上の下から次々と出てきて、利上の手足を押さえた。

利上は逃げようとしたが、すでに土に捕まっていて逃げることができない。


「お前の負けだ」

「やったー!」


すると俺の所に叫びながらの忠海と涼子がやってきた。


「やったね慶二!」

「涼子に忠海。二人共大丈夫だったか?」

「うん」

「ああ」


そこで俺はある人物の存在に気付く。


「お前は負家だったか?どうしてここにいるんだ?」

「この女に生きて償えと言われたからだ」

「そうなのか涼子?」

「ああ。こいつは悪人ってわけでもなさそうだったしな」



そうか。まあ秀秋さんは生きてたしな。

だか負家はいいとして、とにかくこいつは…


「殺せよ前田慶二」

「おじさん!?」

「おじさんではない。前田利上だ」


俺が決めることじゃないかもしれないが…


「そうさせてもらうよ」

「慶二!?」

「何を言ってるんだよ!」

「ハハハ!そうだろうな」

「ああ。お前を許すわけにはいかない…」

「どうしてだよ慶二!」

「何故そこまでしなくてはならない?」


これは涼子にいずれ言わなきゃいけないことだしな…


「こいつは彰さんを消した」

「彰さん?」

「お兄さんを!?」


涼子が利上の胸倉につかみ掛かった。


「お前が兄を殺したのか!」

「ああ。そこにいる前田慶二を守ろうとしてな」

「慶二を守って死んだ…?」

「そうだ…」

「くそっ…!!!」

「殺せよ。憎いだろ?」


しかし涼子は利上から手を放した。


「慶二…。とりあえずこいつを降ろしてやれ」

「いいのか…?」

「いいんだ…」


俺は利上を解放してやった。

利上はそのままの場所で立っている。


「ならば俺をどうする?人殺しだぞ?」

「お前が私の兄を消したからといって、私はお前を殺したりはしない」

「そうか…。ならば自分で死ぬまでだ」

「駄目ー!!!」


忠海が物凄い勢いで叫んだ。


「自分から死ぬなんて駄目だよ!」

「何故だ?もう俺に生きる意味など無い」

「意味無くない!それに世の中には生きたくても生きれない人だっているんだよ!」

「綺麗ごとを…」

「綺麗ごとの何が悪いんだよ!本当のことでしょ!」


忠海はこんなに怒るような人だったのか…?


「綺麗ごとを言うな。なんて現実から逃げてる人が使う言葉だよ!」

「うるせえな!だいたいお前に俺の気持ちが…」

「分かるわけないよ!キミがどれだけ不幸かわからないけど、自分次第でどうにでもなるでしょ!」

「…」

「とにかく自殺は駄目!」

「そうだな。自殺は非常に愚かな行為だ。お父さんもよく言っている」


そういや俺も上杉に恩義を返したら死のう、とか思ってたんだっけ…。

皆には感謝してもしきれないな。


「とにかく自殺はやめてくれ」

「…だそうだ利上。どうする?」


負家が利上に問い掛けた。


「フッ…。まさか兄を殺した張本人に生きろだなんてな…」


涼子は唇を噛み締めていた。


「だが本当はお前を殺したいほど憎い。だからといってお前をを殺したら自分も同じだ」


忠海も涼子も俺より大人だなと思った。


「そうか…。じゃあ俺は行くぞ」

「俺も行く…」


利上と負家はシェルターを消して行ってしまった。

利上は謝罪をしなかったが、あれもあいつなりに考えた結果なのだろう。

だけど俺は謝らなきゃな


「涼子」

「どうした慶二?」

「すまん!」

「何がだ?」

「あの時俺が強ければこんなことには…」

「…」

「だからごめ…。イタッ!」


涼子にデコピンされた。ものすごく痛いデコピンだった。


「痛い…」

「勘違いをするな」

「勘違い…?」

「あの時自分が強ければなんて意味のないことを考えるな」

「だけど…」

「過去は反省するものだ。後悔するものではない」


反省するもの…?


「慶二は反省して稽古を重ねてきたんだろ?」

「ああ…」

「ならそれでいいじゃないか」

「…涼子」

「だから私もあの時兄を止めていればなんて後悔するのはとっくの昔にやめた」


「それに兄が行かなければ慶二が死んでいたしな…」

「…ありがとう」

「礼を言われるほどのことではない」


後悔するのに意味はない、か。確かにそうかもな。


「まあとりあえずあの日のことを話すよ」

「たのむ…」





……




「そうだったのか…」

「そんな大変な目に遭ってたんだね」


とりあえず俺はあの日の事や子孫の事などを話した。


「俺が彰さんに似てるのもそれが関係してるのかもな」

「それはどうだろうな」


と、俺は涼子に頼まれて渡さなきゃいけないのを思い出した。


「涼子、手を出してくれ」

「はい」


そして俺は涼子の手を握った。


「慶二…。なにをして…」


二人の手が光る。


「本来一番上が死んだりすると自動的に二番目の人に移るんだけどな」

「これが?」

「ああ」


そして手の輝きが消えた。


「でも本当にいいのか?もう後には引けないぞ」

「いいんだ。兄が私の中にいると思えるからな」

「そうだな。…ん?」


俺の携帯にメールがきていた。


「七美からだ」

「七美から?」

「何の用だろうね?」


あいつとはよく夜にメールするしな。いつも通りの内容かな…?


「えーっと。米沢港の第一倉庫に来て、はあと。ばい世紀の美少女七美」

「米沢港の倉庫に来い?」

「どーゆーことかな?」

「わからん。とにかく行くぞ」

「え、いいのか?」

「わかったー!」


俺達は港に向かった。





……




「そうだったんだ…?」

「ええ。母は不明ですが…」


澪と雪江は家の中で子孫についての話をしている。

雪江は澪の両親が出ていった理由は伏せることにした。


「慶二くんも子孫なの?」

「はい。しかも澪と同じ特殊継承です」

「そんな!」


澪はショックを受け…


「やったぁ〜!慶二くんとおんなじ〜」

「…」

「雪りんもまだまだだね〜」

「…」

「そっかぁ〜♪ウフフ〜♪」

「あの…」

「なに、雪りん?」

「私の携帯が…」

「あっほんとだ」


雪江は携帯を見た。


「七美さんからメールです…」

「雪りんって七美のアドレス知ってたんだ」

「ええ。それで港の第一倉庫に来て下さいと…」


「え…。今八時近いよ…」

「とりあえず私は行ってきます…」

「じゃあ私も行くよ」

「しかし澪…」

「いーのいーの♪」


すでに澪は玄関へと向かっていた。


「今日は外食ですね…」


そして二人は港へと向かった。





……




「え…?」

「…」


食堂前。里美は驚いた、兼次は真剣な表情をしている。


「どうして…」

「その様子だと気付いていなかったか」

「え…。だって…」

「返事はもうわかってる。ただこのことが言いたかっただけだ」

「兼次…」


しばらく沈黙が続いていたが、里美の携帯が沈黙を破った。


「…」

「携帯が鳴ってるぞ?」

「うん…」


里美は携帯を見た。


「七美から。港の第一倉庫に来て、兼次も一緒にだって」

「…」

「それじゃあ港に行こうか…」

「これはおかしいだろ」

「え、どうして…?」

「何故七美は俺達が一緒にいることを知っている?」

「言われてみれば…。どうして知っているんだろう」

「七美は俺達が戦ったことを知っているな」

「じゃあどうするの…?」

「とりあえず行かなきゃどうしようもない。港に行くか」

「うん」


二人も港に向かっていった。





……




「であるからして…」

「Zzz〜」

「故に明日香殿は狙われたでござる」

「Zzz〜」


ここは体育館。四分蔵は明日香が襲われた理由やその他もろもろを説明をしているのだが…


「明日香殿〜。聞いているでござるか〜?」

「Zzz〜」

「明日香殿〜」

「Zzz〜」

「明日香殿!」

「Zzz〜」

「金持ちが調子に乗りやがって!」

「今何ておっしゃいましたか?」

「うわっ!」


明日香は起きた。


「とにかく明日香殿。今、拙者の話しを聞いていたでござるか?」

「もちろん聞いていましたわよ」

「今寝てたではござらんか」

「いえ、寝ていませんわよ」

「では拙者は何て言ってたでござるか?」

「いちいちうるさいですわね!」

「逆ギレでござるか〜?ンフフフ…」

「やつらは子孫潰しを行っていて、私が今川義元の子孫だから襲われたのでしょう!」

「フフフフ…。なんだ、聞いていたでござるか…」

「それで他の皆さんはどこにいますの?」


四分蔵は携帯を取り出して何かを確認している。


「どうやら全員港へ向かっているでござる。」

「どうして分かりますの?」

「今日こうなることを予感して発信機を全員に付けていたでござる。七美殿に付けることはできなかったでござるが」

「ああ、そうですの」


明日香は興味が無かったみたいだ。


「しかし明日香殿は危険故…」

「私に帰れと?」

「そうでござる。おそらく港にはそいつのボスがいるでござる」


四分蔵は床で寝ている猿吉を指差し言った。


「危険でござるから…」

「慶二さんも涼子も澪も全員港へ?」

「そうでござる」

「なら私も行きますわ」

「しかし危ないで…。言っても無駄でござるな」

「何かあったら貴方が守ってくださるでしょ?」

「できるかぎりは…」

「なら行きましょうか」

「わかったでござる」



そうして全員が港へ集まっていった。

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