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信永編第9話〜兼次かっ!?〜

チュンチュン



月曜日の朝だー!

みんな久しぶり!医者だよ!

秋風ピューピューのとっても気持ちのいい朝にはこれ!天津甘栗。

そう、栗だ。そうして私はカーテンを開けた



「ジャンボジェットって、近くで見ると人の顔みたいだな」



「逃げろ医者ぁぁ!!!」

「うわぁ!!!」



ん…?朝か…?



「おはよう…。何が逃げろなの?」

「里美か…。いや、ジャンボジェットから逃げろって…」

「ジャンボジェット…?」



里美に可哀相な目で見られてしまった。



「いや、気にするな。寝ぼけていただけだからな」

「そう…。それじゃあもう朝ごはんだから早く来なさいよ。ジャンボ」



だから気にするなって言っただろうが!!!



「わかりましたよ」



俺はベッドを降りて制服に着替えた。



「さて、朝ごはんだな」




……



「おはようございまーす綾子さん!」

「ジャンボ♪」



あれあれあれ?

それは名前?挨拶?



「今朝はジャンボちゃんの大好きな天津甘栗よ〜」

「あれあれあれ?俺って天津甘栗好きでしたっけ?」

「何言ってるのよ!三度の飯より天津甘栗が好きでしょうが」

「なんならわたしがジャンボちゃんの為に天津甘栗の歌を歌っちゃうわ〜」

「いいぞー!お母さーん!」



天津甘栗の歌を…?



「てってて、てってて、てっててってて〜♪中国自慢のホイコ〜ロ〜♪

てってて、てってて、てっててってて〜♪とっても甘い〜角砂糖〜♪

てってて、てってて、てっててってて〜♪イガイガ付いてるヤマアラシ〜♪」

「きゃー!お母さーん!」




……



「天津甘栗関係ねぇ!!!」



え…?朝…?



「慶ちゃん?どうしたの?」

「あれ、綾子さん…。天津甘栗の歌は?」

「天津甘栗の歌?」



夢だったのか…。

たしかに綾子さんにあんな歌を歌われても困る



「大丈夫、慶ちゃん?天津甘栗関係ねぇ〜。って…」

「あぁ…。俺はもう重傷だ…」

「とにかく、朝ごはんにしましょ」

「はい!」



今日は時間に余裕があったので、俺はベッドを降りて着替えずに部屋を出ようとした。

のだが…



「ねぇ…。慶ちゃん?」



綾子さんに呼び止められてしまった



「どうしたんですか?」



綾子さんの方を見たが、とても真剣な表情だった



「涼子ちゃんのお父さんが入院したって言ってたわよね?」

「…はい。でもそれが…?」



「涼子ちゃんのお父さんは…」

「…?」

「子孫よね?」



え!?



「知ってたんですか?」

「ええ。わたしこれでも上杉謙信の子孫だから♪」

「家臣がいる…と」

「家臣と言うより…。お友達かしら♪」

「じゃあやっぱり兼次もですか…」

「そうね〜。兼次ちゃんにはさっちゃんのことを隠してもらったり、いろいろと迷惑かけちゃったけれどね」



そうだったのか。だから兼次はしょっちゅう里美の側にいたのか。

まあ、俺もしょっちゅう側にいたけど…



「それで話は変わりますが…。里美はどこまで知っているんですか?」

「ほとんど知ってるわ。あの手紙の内容を教えとかないと、慶ちゃんのこと勘違いしたまんまだったから…」

「勘違い…?」

「慶ちゃんはあの時、お父さんはどうしたの?って聞かれても、何も言わなかったでしょ?」

「はい。怖かったのもありますが…。あの時、俺も知らないって言えばよかったんですけどね」

「だから、さっちゃんは慶ちゃんのせいじゃないか?って」

「まぁ実際関係はありましたけど、小学校二年生の子供が大人をどうこうしようなんて…」

「そうよね。でもさっちゃんも小学二年生だから、そんな考え方はできなかったし…。私も…」

「仕方ないですよ。大事な人を二人も失ったんですから」

「ありがとう慶ちゃん。でもそんなのは言い訳にすぎないわ…。慶ちゃんはもっと酷い目に遭ったんだから…」

「…」



「そして手紙が来たのは次の年の八月十一日…」

「八月十一日…」

「慶ちゃん達がいなくなった一週間後…」



あの日の後すぐに亡くなったのか…



「私達が知らない間に慶ちゃんがいなくなって、そのお隣さんが気付いたら海外に行ってたんですもの。びっくりしたわよ〜」

「二人とも何も言わずに行ったんですか?」

「慶ちゃんならわかるでしょ?あの二人はそういう人達よ♪」

「はい。すっごい分かります」



そして会話が途切れたので、俺は一つの疑問を口にした



「何故今まで上杉であることを黙っていたんですか?」

「それは…」



綾子さんは悲しそうな顔をした



「私達に上杉を名乗る資格なんてなかったから…」

「資格…?」



「私達は慶ちゃんに酷いことをした。でも私達が上杉と聞いたら慶ちゃんは私達に恩義を返す…」

「はい…」

「だから…。とてもじゃないけど、名乗るなんてことは出来なかったわ」

「…」



「だから私達は…」

「でも…」



俺は綾子さんの発言を遮った



「慶ちゃん…?」



「でもやっぱり俺は恩義を返したいです」



「慶ちゃん…」

「もう謙心さんはいない。けれど、天国にいる謙心さんが望むのは子供の幸せだと思います…」



「もし俺が謙心さんの立場ならそう願いますし」



「だから俺に恩義を…」



「ここにいて…」

「え?」



「わたしの側からいなくならないで」



里美と…。同じ…?



「わたしは慶ちゃんと、さっちゃんと一緒にずーっと暮らしたい」



「だから恩義とかを気にしないで、普通にこの家で暮らしてほしいの。それ以外は何もいらないわ。慶ちゃんはこの家にいてくれるだけでいいの」



「フフッ…」

「慶ちゃん?」



俺はおもわず笑みをこぼしてしまった



「里美と同じです」

「え…?」

「里美も全く同じようなことを言ってました」

「そう…」

「親子って似るもんですね」

「さっちゃんはね…」

「…?」



「さっちゃんは、お父さんの手紙の内容を聞いた時、ひどく後悔してたわ…」

「里美が…?」

「その日以来、来る日も来る日も泣き続けて…。ご飯も食べないで…。外にも出ないで…。慶二ごめんね、慶二ごめんね、ってずっと呟いて…」



里美にそんなことが…



「謝りたくても慶ちゃんがいない。そしてどこにいるのかも分からない」



「でも慶ちゃん、引っ越ししてからすぐに手紙を送ってくれたでしょ?」

「はい…。進学期が始まる少し前に…。あの時、俺は黙って出ていきましたからね…」

「さっちゃん、自分の部屋に篭ってその手紙を何度も何度も読み返して…」

「確か…。じいちゃんの家に引っ越したことを教えたのと、絶対また会おうな。くらいしか書かなかったはずですけど…」

「でも、さっちゃんにはそれだけで充分だったの」

「それだけで…?」

「ええ。今でも大事にとってあるはずよ」

「今でも…」



あんな紙切れをか…。

でも、悪い気はしないな…。



「そしてそれ以来さっちゃんはまた、いつも通りのさっちゃんになったわ」

「そうですか…」



綾子さんもその時に立ち直ったのかな?



「それで先月、利勝さんから電話があったのね。慶ちゃんを米沢で一人暮しさせることになった、って」

「それでその時綾子さんがこの家に来てくれって…?」

「ええ。さっちゃんたら慶ちゃんがこの家に住むって聞いた途端、泣きながら大はしゃぎしちゃって」

「ハハハ」

「もちろんわたしも喜んだわ」



そうだったんだ…



「…俺はいつまでここに暮らしていいんですか?」



「慶ちゃんがいたいと言うならいつまでも」



「ありがとう綾子さん…」

「ううん。お礼を言うのはわたしの方よ。さっちゃんがいい子に育ったのも、あんな親だったわたしが変われたのも、みーんな慶ちゃんのお蔭なんだから」

「…俺は何かしましたか?」

「側にいてくれたわ。あの娘の、そしてわたしの」



側にいた…か。

そんなこと当たり前だと思っていたんだけどなぁ…。



「二人がいなくなった時、わたしはいつ死んでもいいと思ってたの。」



嘘っ!?



「でも慶ちゃんは…。そんなわたしを励まそうとして…」



ナイスだ俺!!!



「だから…。これからは私達とずっと一緒に生きましょう。もちろんなっちゃん達が許してくれたら♪」

「はい。もちろんです…」



俺は正直嬉しい。

今までの俺は自分が何故生まれてきたか…。という自分に対する問いに、恩義の為と答えていた。

だから俺は上杉に恩義を返して、いつ死んでもいいと思っていた。



「でも今は違う…。里美、綾子さん、兼次、明日香、涼子、澪、雪江さん、七美、忠海、直正さん、高政、有次さん、外康さんに黒豚…」




「みんなといたい…」




「よかったわね…」

「はい」



バン!!



急に窓が開いてミイラが入ってきた



「どうしてあのシリアスな場面で、拙者が黒豚なんでござるか!!!」



口も包帯でぐるぐる巻きのはずだが…。



「器用だなお前」

「当然でござる。拙者は忍たま…グワッ!」

「おいバカ四分蔵!!!せっかく慶二がいい所だったのに邪魔するな!!!」

「忠海!!!苦しいでござる!!!」



今度は窓から忠海が入ってきて、四分蔵の首の部分に巻いている包帯を引っ張っり、連れていってしまった。



「俺がいいところだったのに?」

「たしかにいい所だったのにな〜」

「綾子さん?」

「なんでもないのよ〜」



そうですか。


そして俺は時計を見る


「七時半ですね…」



そういや十分くらい話してたな。俺は腹減ったぞ



「綾子さん、とりあえず大事な話がありますからご飯食べましょう」

「大事な話って何かしら?」

「これからについてです」

「あら〜!慶ちゃん、わたしと結婚してくれるの!?」

「はっ!?」



「な〜んちゃって〜。本当はあの人のことね?」

「…はい、そうです」



な〜んちゃって。だってさ〜。

綾子さんめっちゃかわいいな〜



「織田信永の…」

「…やっぱり綾子さんは知ってたんですか」

「ええ、この町に来ているってこと。それと織田信永のもう一つの名前も…」

「そこまで知ってましたか…。里美は知らないみたいでしたけど…」

「ええ、里美は織田信永が誰かってことは知らないわ」

「…」



里美の性格じゃあ信永とは戦えないだろうな



「とにかく朝ごはんにしましょうか」

「はい」



そうして俺達は二人一緒に部屋を出ようと…



「あっ!綾子さん!」

「何かしら〜?」

「綾子さんの…。名前は?」




「上杉信実。のぶみよ」





……




「つーことだから昨日言った通り、里美も気をつけてくれ」

「私なら戦えるから大丈夫よ。でも涼子達は戦えないんでしょ?」



俺達は朝食を取りながら話している。

ちなみに、すでに里美は涼子達のことを全て話している



「外康さん達も見張ってくれているから大丈夫だ」

「そう…。でも本当に大丈夫?」

「…いや、わからない」

「わからないの…」



里美は不安げな表情をしていた



「慶ちゃん、相手はどのくらい強いの?」

「…俺は一人しか戦ったことがないので、その人しかわかりません」

「慶二は誰と戦ったの?」

「それは…」



あいつは今思い出すだけでも震えが止まらない相手だった



「前田利家の子孫と…」

「え…?」

「槍の名手…。前田利上ね…」

「はい…。そして俺がこの町を出るきっかけとなった男です…」

「きっかけ…?」



ちょっと喋りすぎたかな…



「とにかく、危険ということを頭に入れておいときましょうか」

「そうね。わかったわ」

「は〜い♪」



さてと、それじゃあ雪江さんに知らせに行きますか



「ごちそうさま」

「あっ!早いよ慶二!」

「お前が遅いんだよ。そんじゃちょっくら澪ん家に行ってくる」

「うるさ…。雪江さんね?」

「そうだよん」



俺は滅多に使わない言葉を使った


「そんじゃいってきます」

「いってらっしゃ〜い」

「じゃあ今日は私一人で行くわよ」

「ああ!」



そうして俺は玄関を飛び出し、澪の家へと向かった





……




ピンポーン



「はい…。どちら様でしょうか?」



インターホンに付いているスピーカーから、雪江さんの声が聞こえてきた。

時間は七時五十分。



「前田慶二ですけ…」



バン!



俺が話し終わる前に扉が開いて、雪江さんが姿を表した。



「け…慶二さん…?こんな朝早くに…?」

「ちょっと雪江さんに大事な話がありましてね」

「大事な話が…?」

「ええ、俺達の今後についてです」

「え…。もしかして…」

「はい。そうです」



雪江さんも察しがいい。さすが鬼道雪だ。



「私と結婚を前提としたお付き…」

「合いをする。とかいう話に、どうしたらなるんですか?」



同じようなことが朝にもあったな





……




「と、いうわけですから…」

「わかりました…」



とりあえず俺は、玄関で簡潔な説明をした。



「でも…。お付き合いって…?」

「慶二さんがいけないんですよ…。あんな言い方するから…」

「すいません…」

「期待して損しました…」



俺、そんな変な言い方したかなぁ?

そんな雪江さんを期待させるよ…



「期待?」

「え…。何でもないです!何でもないです!」



雪江さん…。すっごい焦ってるな



「雪り〜ん。誰と話してるの〜?」



と、そこに風呂上がりの澪が現れた



「けっ慶二さんです…」

「どしたの〜雪りん?」



そう言って澪はこっちに来た。

なぁ…澪。男の理性は脆いぜ?



「あっ!慶二く〜ん!」

「頼むからバスタオル姿はやめてくれないか?」

「ああ〜そうだったね〜」



こいつに夜の町を一人で歩かせるわけにはいかないな…。非常に危ない



「じゃあわたしは準備してくるよ〜。どうせだから一緒に学校行こ?」

「おう!じゃあここで待ってるわ」

「澪、羨ましいな…」





……




「いってきまーす」

「お邪魔しました」

「二人ともいってらっしゃい…」



そうして俺達は階段を下りて行く



「慶二くん、あの時はありがとう」

「ん、ああ。あれか」



あの時もここらへんだったかな



「わたし幸せだよ…」

「幸せ?」

「うん。いいお友達に囲まれて、皆で笑い合いながら生活して」

「そうか…」

「そして、生まれて初めて好きな人もできたし」

「ん?今まではいなかったのか?」

「うん。皆に会うまで…。高二になるまでわたしはすっごい暗い子だったんだ…」

「そうだったのか…」



だとしたら劇的な変化だな



「だから皆といる時間が大好きなの」

「そうか。俺もそうだ」

「慶二くんも?」

「ああ。皆でいる時が幸せで、大好きだ」

「そうだったんだ〜」



俺達二人は階段を下り終わって、外に出た



「で、澪の好きな人って誰だ?兼次か?男子Aか?セバスチャンか?」



そう考えると男子層が薄いよなこの小説



「そんなの内緒だよ〜」

「やっぱり?」

「それに誰にも相談できないし…」

「どうして?恋愛経験が豊富そうな七美とかに聞けばいいんじゃないの?」

「七美は今まで誰とも付き合ったことないらしいよ」

「そうなの?」



うっそーん!?

七美は顔も人当たりもスタイルいいのに?

あいつが付き合わないで誰が付き合うんだよ!?



「それでわたし達も理由を聞いたんだけど…」

「理由を…」

「なんでも昔から好きな人がいるって。それも小学生の時から」

「そりゃあ凄い年月の恋だな!」

「だよね?でももう…」

「ん?どうした?」

「慶二くんって昔ここに住んでたんだよね?」

「ああ。小学生の時に」

「そっかぁ…。七美も嬉しいんだろうなぁ…」

「へ?」

「里美も同じみたいだし…。わたしとは重みが違うよ…」

「もしかして…!!!」

「どうしたの慶二くん?」





兼次かっ!?



「あの野郎…!!!」



里美と七美という絶世の美女二人を長年縛り付けてたのかっ…!!!



「絶対に許せんっ!!!」

「ふぇっ!?」



だが、このことが学校中に知れ渡ったら…。ンフ…。ンフフフフ



「ンフフフフフ…。安心しろ兼次。誰にも言わないでおいてやるからな…」

「はぅ…。慶二くんがおかしくなったよ」






まさに真逆の状況であることをこの男は知らなかった…

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