第13話〜慶二と剣道〜
分からない武将はWikiで検索してみて下さい。それを見るだけでもかなり面白いですよ
チュンチュン
朝だ…。涼しい木曜日。
耳障りだったセミの鳴き声も減ってきた、そんな朝にはコレ。バーモント。
そう、カレー…
「ほら! いつまで寝てるのよ!」
「んぁ…? バーモントカレーは…?」
「はぁ?」
「今何時だ?」
「もう四時間目よ」
「うそ!?」
「本当だ。お前は一時間目からずっと寝てるぞ」
里美から時間を聞いた俺はびっくりした。
俺の左隣にいる涼子が言うには、一時間目からずっと寝ていたとの事。確かに一時間目からの記憶がまるでなかった。
キーンコーン梶ー原
水ー力ー発ー電ー
「それじゃあ授業を終わります」
「よっしゃー」
「あんたも弁当の時は本当に元気ね…」
そりゃあ貴方様の母上が作ってくれた料理ですからね!
そしてお馴染みとなってしまった昼食メンバーが集まってくる。
「それにしても慶二は部活やんないの? 運動神経よさそうなのに♪」
「ん〜? ここに来る前は剣道部に入ってたけどなぁ〜」
「なら剣道をやればいいのではないですの?」
「でもあんた地区三回戦敗退だったんでしょ?」
「え?お前向こうではそんな成績だったのか?」
「里美も兼次もうっせえ!地区三回戦敗退の何が悪い!」
「それなら涼子ちゃんに鍛えてもらったら〜?」
「私が鍛えるのか?」
「いいじゃんそれ♪」
涼子はびっくりしていた。が、一瞬難しい顔をした後
「構わない」
「だってさ〜よかったね前田くん!」
「おめでとうございますわ」
「よかったじゃん慶二♪」
「何がだよ?」
「「「何が?って言われると…」」」
澪も七美も明日香も適当な奴らだな!
「それなら前田は仮入部という形にするが…」
「なあ、俺も行きたいんだが構わないよな?」
兼次が急に行きたいと言い出した。
「もちろん構わないが…またどうしてだ?」
「まあ…ちょっとな…」
「ならわたしも行くわ♪」
「じゃあわたしも見に行きた〜い」
「澪、ダメです。今日はやることがあるでしょう…」
「はぅ…そうだったよ…」
七美と兼次が一緒に来るらしい。面倒なことにならなきゃいいけどな…
…
……
キーンコーン梶ー原
葛ー飾ー亀ー有ー
「じゃあ剣道場に行くぞ」
「オッケー♪」
「待ってくれよ涼子。剣道着と手ぬぐいはあるか?」
「ああ。剣道着は部活の予備が。手ぬぐいは私の予備があるから心配するな」
「予備があるなら大丈夫…」
って御堂の予備!?
「どうした前田?」
「い、いや…なんでもない!」
「あっ、もしかして涼子の手ぬぐいを使うからドキドキしてるんだ♪」
「興奮しているのか…」
「してねぇよ!!!」
「とにかく早くついてきてくれ…」
「「「はーい」」」
…
……
「慶二は剣道着似合うね♪」
「ん、ありがとうな」
七美も嬉しいことを言ってくれる。それにしても剣道着は久しぶりだなぁ…つっても10日くらいしか経ってないが…
「お前が御堂の言っていた前田慶二か」
「はい」
この剣道部顧問は"は組"と"に組"担当の体育教師だ。名前は知らん。
「今日は仮入部ってことか?」
「はい。そうです」
「よし、それじゃあ俺と勝負だ」
まじすか?地区三回戦敗退の男に対して酷い洗礼ですね…
「ちょっと先生」
「どうした前田?」
「俺がなんで先生と戦わなきゃいけないんですか?」
「なんでってそりゃあイケメンを潰…実力を知りたいからだ。イケメンを手っ取り早く潰すには…実力を知るには試合が一番だからな。この世のイケメンは全て叩き潰してやるよ!ハハハハハハ!」
なんかもう最低だな!この体育教師は!今完全にイケメン潰し宣言したし!!!
「先生」
「どうした御堂?」
「前田と先生では実力差がありすぎなのでは。先生は高校時代に全国三連覇した程の実力でしょう? もっと地区三回戦と実力の近そうな人とやらせた方が…」
そうだそうだ! 御堂の言う通りだ!
「そうですよ先生! 三回戦さんじゃあ勝てませんよ!」
ナイスだ少女A!
「たしかに三回戦さんじゃあ無理かな…」
そうだ! 男子Aの言う通りだ!
「まぁ当然手加減はするからな」
「なら三回戦さんも大丈夫ですね」
もっと粘れよ女子B!
「先生」
「次はなんだ島?」
「三回戦に手加減は必要ないですよ…。ヘヘヘ」
兼次の野郎!!!
「とにかく防具をつけろイケメン三回戦!」
「わかりましたよ…」
ったく…。俺はただ普通に剣道やりたかっただけなのにな…。
「イケメン三回戦は防具付けたかー?」
「付けましたよー」
「それでは体育教師対三回戦の試合を開始します」
そして俺は一礼をしてしゃがみ、竹刀を構えた。
「ねぇ兼次、三回戦は勝てるのかな」
「ん、そうだな…。おそらくあいつじゃ役不足、って所かな」
「どゆこと?」
「まあ見てろよ」
「三回戦からは威圧感もなにも感じない。所詮三回戦の男ということか…? しかし何かが引っ掛かる…」
「はじめ!」
そして審判が試合開始の合図をした次の瞬間−−。
「面あり一本!」
「今、何が…?」
涼子も状況が全く飲み込めていない。
「え? 今のはどういうこと?」
「だから言っただろ。あいつじゃあ役不足だって。それにしても強いな…。あのじいちゃんの所でずっと剣道してたからか…」
「先生は本当に全国三連覇だったんですか? 隙だらけでしたよ?」
そこには何が起きたか分からずに放心状態の体育教師と、調子に乗っている三回戦がいた。
と、そこに拍手が聞こえてきた。
「はっはっは、さすが三回戦君。その体育教師じゃ相手にならないね」
「あなたは…!」
涼子はその人を見ると、非常に驚いた表情をした。
「お父さん!?」
「「「お父さんだって!?」」」
「やあ涼子。元気に部活やってる?」
「そんなことより…。どうしてここに…?」
「いや、三回戦君が久しぶりに剣道の試合をするって情報が入ったものだからね」
「なんでお父さんが三回戦のことを?」
「まあまあ。それで三回戦君、話しがあるんだ…。付いてきてくれない?」
「俺、前田慶二です」
いままで黙っていたが、俺は慶二だ。
そうして俺達は剣道場を出て屋上へと向かった。屋上は誰もいなく、涼しい秋風が吹いていた。
「頭のいい読者なら僕がこれから何を言うかわかると思うけど…」
「あなたも子孫ですか?」
「その通り。名前は御堂秀秋、本名島津義秋島津義弘の子孫。。涼子の本名は島津弘美だ。涼子には自分が子孫であることをまだ教えてないし、彼女自身も知らないはずだ」
「丁寧な解説ありがとうございます。それで秀秋さんは俺に何を…?」
「親戚を探すのを手伝ってほしいんだ」
「もしかして…。それは島津家久、歳久、義久の子孫ですか?」
「ご名答。どれもS級だ。特に家久は上級に近い中級だから、かなり強い」
「…それで秀秋さんは何故俺が子孫だと?」
一応気になったので聞いてみた
「まあ名前で判断できるけど…。君は小学校の時におじいさんの剣道場に通っていたでしょ?」
「はい…。無理矢理でしたが」
「その剣道場と僕の剣道場が合同合宿したことがあってね」
「あぁ!そういえばありましたね〜!あの人達は秀秋さんの道場の人達だったんですか?」
「そう。そしてその時に君と君のおじいちゃんが子孫だとわかったのさ。まあ以来君のおじいさんとは仲良くさせてもらってるよ」
「そうだったんですか…まあ名前を隠していなかったですからすぐにわかりましたよね」
「うん。それもあったけど君と君のおじいさんが鬼神のごとき強さだったから、これは間違いないなってね」
「鬼神のごとき…ですか?」
「能力を使わないであの強さだったからね。まさに鬼だったよ。それに今の君には僕でも勝てないだろうね」
「そして高校一年の時の地区大会。君が三回戦を棄権するって聞いた時はショックだったよ。なんたって二回戦で全国二連覇した3年生を倒した男が棄権したんだからね」
「見に来てたんですか?」
「うん、はるばる愛知までね。親戚探しも兼ねて。棄権の理由はおおかた、君のおじいさんが女遊びで作った借金を、返す為にバイトをしなければいけなくなった。とかでしょ?」
「はい…そうです」
わざわざ俺を見に来てくれてたんだ…。
それにしても、俺は実際あのじいちゃんには何回も泣かされた。女遊びばかりするのも前田慶次の子孫だからだろうか…。
「ところでじいちゃんと知り合いってことはあのことを…?」
「もちろん知ってるよ」
「涼子は知らないんですよね? 大丈夫なんですか?」
「ああ、常に僕や僕の知り合いが目を光らせているからね。それに涼子は強いから」
「ああ、だから俺が試合するってわかったんですか」
「そう。でも僕も常に涼子のことを見ているわけにはいかなくてね。慶二君が常に涼子と一緒にいてくれると安心なんだけどな。僕も君が彼氏なら認めるけどね」
「涼子はそんなのに興味ないですって」
「どうかな? 一昨日から君の話ばっかりしてるけど」
「え?」
「まあとにかくその気になったらうちの道場にいつでも来てもいいよ。もちろん剣を振りに来るだけでも構わない」
「わかりました! ありがとうございます」
「うん。それじゃあまたね」
「さようなら」
そういえば合同合宿とかやったなぁ…。もしかしたら御堂と会っていたりしてな。
たしか、その門下生は鬼石曼子って呼ばれてた気がする。
まあいいや、戻ろう…。
…
……
「ちょっと慶二凄かったじゃない♪」
「何言ってるんだ。ラッキーだよラッキー」
俺が戻るなり、七美が飛びついてきた。
「だよな! ラッキーじゃなければこの全国三連覇の俺がやられるわけないからな!」
「当たり前じゃないですか! 先生は俺なんかが勝てる相手じゃないですよ!」
「だろだろ!」
単純な先生だ…。
「それじゃあ俺はもう帰るよ」
「慶二もう帰るの? 部活は? 剣道は?」
「いや、御堂の道場で剣道をいつでもできるから大丈夫だ」
「そうなんだ? よかったね慶二♪」
「それじゃあさっさと着替えてこいよ慶二」
ちなみに御堂は、部活を既に始めている。
俺たちはその御堂に、頑張れよ。と言って剣道場を出た。
…
……
「ただいま〜」
「おかえり慶ちゃん」
まだ5時だけど綾子さんは帰ってきていた。というか綾子さんは、何時に家を出て何処で働いて何時に帰ってくるのだろう?
「あ、そうそう。慶ちゃん宛に葉書よ〜。切手がなかったから直接入れたみたいね〜」
「ありがとうございます」
そういって俺は葉書を受け取った。
「なになに、御堂流剣術道場はココ」
そっか、俺は明日香の車からじゃ場所は分からかったから、御堂の家の場所を知らなかったんだよな…。
…
……
「「「いただきま〜す」」」
「そういえば慶二、あの体育教師を倒したんだって?」
「あら慶ちゃん先生をを殴り倒してボッコボコにしてお金を巻き上げたの? 慶ちゃん…。非行少年になっちゃったのね…。しくしく」
「ちがうわよお母さん。剣道よ」
「あらまあ〜ウフッ♪」
綾子さん、わざとじゃないんですか?
「とにかくそれは本当なの?」
「ん? ああ。偶然な偶然」
「偶然ねぇ…。まあたしかに三回戦が三連覇に勝てるわけないしねぇ…」
もう! みんなして三回戦三回戦うるさいんだよ!
「バカ里美…」
「え? 今なにか言った?」
「ったく三回戦三回戦ばっかり言いやがって…。そんなに全国優勝は偉いのかってんだよ! このバウムクーヘン太りやろ…う……?」
しまった! 心の声が本当の声になっ…。うわっ鬼人だ! 鬼人がいるぞ!!!!
「目指せモスクワー!!!」
「オンギャー」
そうして今日はおしまい。