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第12話〜澪と雪江〜

チュンチュン



…朝だ。今日は火曜日。時間は5時30分。今日も残暑が厳しい。

しかしそんなオレの朝はコレ。あさげ。


そう、おみそ汁だ。いくら私が日本人離れしたカッコよさだからといって決して日本人を捨てたわけでは…




「朝よ朝よ朝よ!!!」

「んぁ…。おはよ…」

「おはよう。早くしないと遅刻しちゃうわよ」


…また変な夢を見た気がする




……



「おはようございます」

「おはよう慶ちゃ〜ん」



綾子さんは今日も朝から美しいです。



「ほら慶二! 早く早く!」

「おう!」



そうして俺は朝ごはんを食べて、素早く準備をした。



「「いってきま〜す」」

「いってらっしゃ〜い」



只今の時刻は8時20分。



「今日もギリギリだなこりゃ」

「誰のせいよ誰の!」

「…すまん」




キーンコーン梶ー原

マーンネーンヒーツー



「ギリギリだったな」

「誰の…せいよ…誰の…はあ…はあ…」

「俺か」

「それに…なんであんたは…息一つ乱して…いないのよ…はあ…」



そりゃあ毎日走ってるからな。嫌でも体力が付くってもんだ。


息が切れ切れの里美を放っておきつつ教室に入ると、ロッカーの前でみんなして喋っていた。



「おはよ〜二人とも」

「「おはよう澪」」



「おはよう二人とも♪」

「「おはよう七美」」



「おはよう」

「おはよう涼子」

「おはよう御堂」


「おはようございますわ」

「おはよう明日香」

「おはようお金」


「慶二さん…。今何か言いましたかしら?」

「いやいや! なーんも言ってないよー!」

「そうですの? 今確かに、おはようお金。って聞こえたような気がしたんですけど…」



合ってる合ってる! もっと自分の耳を信じろ!


と、そこに先生が入ってきたので俺達は席に着いた。



「おはようございます。今日は防災の日ということで防災訓練があります」



ああ防災訓練か…。たしかに必要な訓練だけど誰も真面目に逃げないんだよな…。



「ええ、困ったものです。さて、今日も元気にいきますよ」

「はーい!」



何だ? いったい何が始まるんだ?




「さわやかー」



「は組ー!!!!」



クラス中が叫んだ。

ん? みんなして俺を睨んでいるぞ? これは俺も言えってことなのか? そうなのか? そうなんだな?



「さ…。さんくみ〜」



ウオオオ!!! すべったー!!!



「な、なあ里美…」

「なあに?」

「今のは…。どんな意味があるんだ?」

「特に意味はないわ。先生がその日の気分で適当に言ってくる単語に反応するだけよ」

「そっか…」



そっか…。




キーンコーン梶ー原ー

ブーレーンバースター



「やーっと昼ご飯だな! 兼次、一緒に食べようぜ!」

「慶二、今日も綾子さん特製弁当か?」

「おう!」


「里美はどうする? 一緒に食べるか?」

「うん? 私は七美達と食べるけど…」

「じゃあどうせなら皆で食べようよ〜」

「いいね〜。皆で食べよっか♪」



澪が提案をして、七美がその提案に乗っかる形になる。



「仕方ないですわね」

「まあいいんじゃないか?」



意外にも明日香と涼子の二人はあっさりと了解した。



「でも何処で食べるんだ?」

「屋上は暑いし教室でいいんじゃないか?」

「そうですわね」



涼子の提案により俺達は教室で食べることになった。

それにしても、俺はいつの間にか涼子ともまともな会話ができるようになっている。これはどういうことなんだろうか…。


そして明日香と澪は手ぶらだけど…。これまたどういうことだ?



「さて、そろそろですわね」

「え? 何がだ?」



すると廊下から足音が聞こえてきた。


ガラガラ



「お嬢様! 昼食をお持ち致しました!」

「ご苦労様ですわ」



教室の扉を開けたのは、黒いグラサンに黒いコートを着た、グロいマッスルマンだった。



「こりゃいったいどういうことだ?」

「食堂から配達させているんですのよ」



あぁ〜。そういえばあの食堂も北条院グループの所有物だったか。



「もしもし〜。うん、今日は教室だよ〜、わかった。じゃあね〜」

「澪は誰に電話したんだ?」

「雪りんだよ〜。お弁当を持ってきてもらうんだ〜」

「そりゃまたどうして?」

「いっつも雪りんは一人でお昼ご飯食べてるから、わたしと学校で一緒に食べよ〜って」

「それにその方が、澪も温かい昼ご飯が食べれますからね…」

「うおっ!」



雪江さんは何の前触れも無しに登場してきた。



「昨日は食堂だったけどね〜」

「食堂の料理はおいしかったです…」

「そりゃあ、あの北条院グループの食堂だからね♪ 一流ホテル並の味だよ♪」



何故か七美が北条院グループの自慢をした。



「そっか。じゃあ俺も弁当食べようかな〜」



さすがに今日の弁当には何も無いよな…。無いよな? 

もしも…。もしもだよ、もしもあったとしても、さすがにツッコミやすいやつだよな? そこら辺は綾子さんも考えてくれてるよな? まぁもしもあったらの話だよ。もしもあったらのな…。



パカッ




「何もねぇ…」





……



キーンコーン梶ー原ー

登ー録ー抹ー消ー



「っしゃあ終わったぜ!」

「そんじゃ慶二、一緒に帰ろうか」

「おう!」



兼次と帰ろうとしたその時、澪がやってきた



「前田く〜ん」

「ん? どうした澪?」

「今日わたしの家に来てくれない? なんか雪りんが前田くんと話したいことあるって」

「へ?」


「じゃあ俺はさっさと帰るとしますか! じゃあまた明日な」

「ばいばい兼次〜」

「じゃあね兼次♪」

「帰るのか!? …じゃあな」



そうして兼次はさっさと帰ってしまった。



「それにしても雪江さんが慶二に話すことがあるなんて、何の用なんだろ」

「わかんない、雪りんも前田くんを呼んでとしか言わなかったもん」

「俺も呼ばれる理由が見当たらないな」



七美が知らないどころか、澪も知らないんじゃ俺が知るはずないのだが…。



「まあとにかく行こうぜ!」

「そうだね。それじゃあばいばい七美〜」

「じゃあな七美」

「じゃあね♪」




「フフッ…。作戦大成功♪」




……



「前田くんはここに来る前、どこに住んでたの?」

「愛知の西の方だよ」

「へぇ〜」



会話終了かよっ!!!



「着いたよ〜」

「ここか…」



澪の家は学校から割と近く、学校から歩いて5分のマンションだった。



「里美の家とそこまで離れていないな」

「そうなんだ〜」



そして澪が扉を開けて、俺たちは家に入る。表札には川岸と書いてあった。



「ただいま〜」

「お邪魔しま〜す」

「お帰りなさい、澪。いらっしゃいませ、前田さん」



出迎えてくれたのは雪江さんだった。それにしても、澪に親はいないのだろうか。



「ふぃー今日もツカレタアルヨ〜」

「なんだよお前は?」

「中国人アルヨ〜」

「澪、中国人はアルヨ〜なんて言いませんよ…」

「ふぇ? そうなの?」

「はい、そして残念なことに昨日も一昨日も言いました…」

「あれ〜。言ったっけ〜?」



もうお前の脳みそを蝋人形にしてやろうか!!!



「それじゃあわたしはシャワー浴びてくるアルヨ〜」

「「…」」


ダメだこいつは…。



「…ところで話ってなんですか?」

「とりあえず座ってください…」



そう言われた俺は、リビングに敷いてあるカーーペットの上に座り、そして雪江さんがちゃぶ台の上に二つのお茶を用意してくれた。



「単刀直入にお聞きします…」

「はい」

「前田さんは前田慶次の子孫ですね…?」

「ええ、そうです」

「そうですか、やっぱり…」

「ということはもしかして雪江さんも」

「はい、私も武将の子孫です…」

「でも何故俺が子孫だと?」

「名前を聞いた時点で何となくわかっていましたが、実は…。これです…」



そう言って、雪江さんはメイド服のポケットから、ペンライトを取り出した。



「これは子孫が近くにいると反応する機械です」



これか…。



「これはつい先日手に入りました…」

「へぇ…」

「そして申し遅れましたが、私は戦国武将、立花道雪の子孫で本名は立花雪江といいます。鬼道雪と呼ばれた武将の子孫です…」

「あの鬼道雪の子孫なんですか!?」

「ええ、貴方には勝てませんが一応Sの上級クラスです…」



なんだよ。じゃあ俺もうここにいる必要ないじゃんか。

ちなみに道雪は立花ギン千代の父親だぞ。



「ところで前田さんは何故この地へ…?」

「ああ、そのことですか…」



俺はここに戻ってきた理由と、兼次も子孫だということを雪江さんに話した。



「そうだったんですか…」

「ええ、まあとりあえず一人めは見つかりましたね」

「いえ…。二人です…」

「二人…?」



いったいどういうことだ?



「大友宗麟の子孫…」



えー? 立花道雪などの名将が配下にいた、そのことにより勢力を拡大していった、あのキリシタン大名で知られる大友宗麟の?



「澪です」



へぇ〜あの澪がねぇ〜。



「ってえぇー!」



あんなやつが大名だったらすぐに滅んじまうよ!



「本名は大友麟花…」

「両親は…?」

「とある理由で全国を回っています。私は昔からこの大友家に仕えていますから、その間の澪の世話をすることになりました…」

「そっか…」

「はい。澪本人は自分自身が子孫であることを知りません…」

「でもいつかは…」

「ええ…でもまあ気にすることはないでしょう」



そして雪江さんはため息をついて−−。



「−−とりあえず今日の所はここまでにしましょう…」

「その機械はどうするんです?」

「何故かはわかりませんがもう使えません。おそらく何かしらの細工が施されているのではないかと思います…」

「そうですか。それはどこで手に入れたんです?」

「…」



「郵便受けの中です…」



あぁ…。もう他意があるとしか思えませんねこれは…。



「あの…。それで前田さん…」

「どうしたんです…? あと俺のことは慶二でいいですよ」

「わかりました…。それで慶二さんに折り入ってお願いがあるんですが…」

「なんですか?」

「あの…。一緒に…」

「一緒に…?」



どうしたのかな?



「一緒に…。ゲームをしてくれませんか…?」

「はい?」



ゲームでしたか。




「ふぃ〜気持ち良かったアルヨ〜」



未だに中国人を勘違いしている澪。



「ふぁ!?」



そんな澪がリビングの光景を見ると、ビックリ。



「雪りんの話ってゲームを一緒にしようってことだったの〜!?」





……




「すいません遅くまでお邪魔しちゃって」

「いえ…。もう一度やろうと言っていたのは私ですから…」



あの後すっかりゲームにのめり込んだ二人は時間が経つのも澪の存在も忘れていて、気付いたら7時を過ぎていた。



「いや〜。転校前にやったっきりでゲームは久しぶりでしたよ」

「そうなんですか? 私はそれなのに勝てなかったんですか…」

「雪江さんはいつからやってるんです?」

「夏休みからです…」



結構最近じゃないか!?



「夏休み中は澪が家にいてやることが減ったので…」

「それでやってみたらハマッたんですか?」

「はい…」



雪江さんはかなり恥ずかしそうに返事をした。その恥ずかしがっている顔がとてつもなくかわいいことかわいいこと。



「それじゃあ里美が怒るといけないんでここらへんで失礼します」

「前田くんまた明日ね〜」

「さようなら慶二さん…」



バタン



「まったく〜二人だけで楽しんじゃってさ〜」

「ごめんなさい。澪…」

「でもあんなに楽しそうな雪りんも久しぶりに見たよ〜」

「そうでしょうか…?」

「また前田くんを呼ぼっか?」

「慶二さんには慶二さんの用事があります。そんな何回も呼べませんよ…」

「そっか〜」

「でも…」



「できるならもう一度遊びたいですね…」

「そっかぁ〜よかったね雪りん!」

「ええ…」

「それじゃあご飯にしよ〜。二人が遊んでる時に作っといたから」

「すいません、澪。そのかわり明日のお弁当は豪華にしますから…」

「ありがと〜雪りん」



「前田慶次の子孫ですか…」





……



「たっだいまー」

「おかえりなさい慶ちゃん♪」

「おかえり慶二。やけに遅かったじゃない」

「ん、まあな」



言ってもよさそうだけど、言ったらまた面倒なことになりそうだったから理由は言わなかった。


それにしても雪江さんか…

意外と話しやすい人だったな…。おまけにあの鬼道雪の子孫だなんて驚きだ。



「綺麗だったな…」

「ほら慶二! ご飯よ」

「わかった!」



…そうして今日はおしまい。

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