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許された頭蓋骨と引いていた手が消えた黒髪
「ちょっと、待ちなさい!そこの小娘!」
私が叫ぶ。
一瞬だけ引きつった顔を浮かべたストーカーは、声から逃れて対向車線を横切る。
…痛っ…
飛んだ体が、自分のものだと分かる。
涙、血、母?
救急車の音が遠ざかる。
佳奈子、----
「ちょっと、待ちなさい!この小娘!」
私が叫ぶ。
…あれ?なんだか見たことがある。
ストーカーを追いかけずに立ち止まると、辺りは真っ暗。
思考が停止して、次の瞬間、明るくなる目の前。
…映像、だ。私が死んだ後の、みんなの。
佳奈子----その涙は、いつまで経っても彼のものなのね。良いわ、もう、苦しまないで。
俊助----あら、心が、3つに別れていた心が1つになってる。もう、遅かったじゃない。
お母さん----ごめんなさい、早く死んでしまって。私のことはもういいから、佳奈子を大切にしてね。
…ストーカー。
どうしてあなたが、そんなに泣いているの?悲しみならもう止めて。悔しさなら持ち続けて。恨みなら、私が買ってあげる。
さぁ、ここからみんな、抜け出して。
悲しみを半分ずつ持っていくから。
大好きな佳奈子。
私はようやく、あなたを忘れられるわ----