第五章
グロイです。
『Trick or Treot!』
その呪文を唱えるごとに、二人は街の住民を殺していった。
必ず目と身体の一部を貰って、ビンに摘める。その繰り返しだった。
ウィリーとヴェンはビンが尽きたことに気がついた。そろそろハロウィンも終わりだろう。
街中ではあちこちに警官がいるのだから、これ以上は騒ぎを起こせなかった。けど、二人は犯罪を犯
して、指紋を残したとしても捕まらなかった。
二人は戸籍上は存在しない人物だったのだから。もちろん、ブラッディーとシェリーもだ。
つまり、存在しない者だった。それに、外に出るのは夜だけで、朝と昼はめったに外にでないため
街の人達が知らないのも無理はない。
だから、捕まえようもないのだ。
「随分と早くに終わったな・・・」
「本当ね。もっと殺りたかったのに。残念よ。でも、ブラッディーもシェリーも待ってるし。早く帰らなくちゃね。行くわよ、ヴェン」
「カバンが、重い・・・。」
「お土産に文句をつけないで。これ、朝食になるかもしれないんだから」
「あ。そっか。ブラッディー、人肉好きだったな」
「そうよ。カニバリズムだもの。得に目が好物よね〜」
「俺は人肉は嫌いだ」
「私も・・・」
「人肉のオンパレード料理・・・」
「うっ!!」
「さ、帰るわよ!」
「・・・・・あぁ」
二人はそういうと、ブラッディーの館に向かって歩き出した。
ウィリーとヴェンの小さな背中は、まるで、二人の死神を連想させた。
黒い服を身にまとい、大きなカマを持ち、人の死を待ち望んでいる、死神という名の人物に―――。