第四章
グロイので注意してください。
陽が沈み、夜が訪れた。街では、子供達がハロウィン・パーティーを開催している最中だった。街外れにあるブラッディーの館は、ウィリーとヴェンがハロウィンの準備をしていた。二人は黒いフード付きの服を着ていた。
「ヴェン、早く!」
ウィリーがヴェンを急かすように言った。ヴェンは自分の机の上のナイフを慌てて持ち、部屋を出た。バタンッという音が廊下に響いた。
館を出ると、暗い道を歩く二人の影をブラッディーは面白そうに見ていた。そのとき、後ろから声が聞こえた。
「あの子達、楽しそうね」
声をかけたのは、ブラッディーの妻だった。ウィリーとヴェンが二人の友人から拾われてきたというのは嘘。この女性こそ、二人の母親なのだ。
「僕のゲームが気に入ったんだよ。あんなに夢中になっちゃって、可愛いなぁ」
ブラッディーは金糸の髪を揺らしてそう答えた。
「嘘言ったのがおしいくらいね。私は影であの子達を見ているだけなんですもの、悲しいわ。母親らしいことなんて、何一つしてない。」
「そうだね、シェリー」
「ねえ、ブラッディー。いつになったらあの子達の母親になれるのかしら?」
シェリーは少し、熱のこもった声でブラッディーに聞いた。
ブラウンの髪が風に揺れる。
「ハロウィン・パーティーが終わったら、いいよ」
ブラッディーの返事に、シェリーは喜びの笑みを見せた。その笑みは綺麗だけれど、なにか足りないような感じだった。
「思う存分楽しんできて。でも、早く帰ってきてね。私の愛しい子供達―――」
コンコン、と家のドアを叩くと、中から男が出てきた。男は笑顔であいさつをした。
『Trick or Treot!』
ウィリーとヴェンが同時にそう言った。男はその言葉を聞き、待っていてね、というと二人に背を向け、お菓子を取りに行こうとした。だが、その必要ななかった。
月明かりに照らし出された銀色に光るナイフが、シュッっと音をたてた。
ザシュッ
・・・・ピチャッ
男の身体が真っ二つになった。
―――ゴトッ
男の身体は床に倒れた。血が吹き出ている。真っ赤な血が――――
ウィリーとヴェンは不気味な笑みを浮かべた。
「はい、ダメー」
「ダメー」
クスクスと笑っていると、男の妻が現れ、ヒステリックな声をあげていた。
二人は顔を見合わせると、男の妻も同じように身体を真っ二つにして殺した。
「あーあ。死んじゃった。」
ヴェンが呆れた声でそう言った。ウィリーは死体を見つめていた。そして、男と女の目玉を引きずり出して、持ってきたビンに入れた。ビンの中には目玉が四つ入っている。
「目玉なんか取ってどうすんの?」
ヴェンが首をかしげてウィリーに聞いた。ウィリーは嬉しそうにこう言った。
「お土産。ブラッディーに。」
「青い目と黒い目。じゃ、次は何色?」
「そうね。緑なんてどう?」
「いいじゃん」
ウィリーとヴェンは緑の目をもつ者を探した。そして、その人物を見つけた。
そいつは、長い黒髪の女性だった。穏やかな顔をしていた。今は、子供達にお菓子をあげていた。二人はその子供達が去って行くと、その女性の家のベルを鳴らした。
「はい」
カチャッと、ドアが開く音がした。中から先ほどの緑の目をした女性が出てきた。
『Trick or Treot!』
二人はそう言った。女性は微笑むと、籠いっぱいのお菓子を二人の目の前にもっていき、
「どれがいい?好きなものを選んでね」
と優しく言った。二人はお菓子を掴み、袋に入れた。そして――――
ザシュッ
ゴトッ
緑の目をもつ女性の首がなくなった。女性の首は床に落ちた。
血が吹き出ている。まるで、噴水のように・・・・。
グチャッ
ウィリーが彼女の緑の目を二つ取り出して、ビンに入れた。コトン、という音がした。
二人は笑みを浮かべた。
「目ばっかじゃつまんないじゃん。他のは?」
ヴェンが無邪気にそう聞いた。ウィリーは少しの間考えた。
「ウィリー。こいつの手、すっごく綺麗だよ」
ヴェンが彼女の手を見て言った。そして、ウィリーが頷くと彼女の手が切り落とされた。
ドスッ
ザシュッ
グシャッ
切り落とされた手からは、また、どっと血が吹き出た。玄関が血の海に染まっていく。
彼女の手を目とは違うビンに入れた。蓋を閉めて、二人はもう一度、彼女の手を見た。
白い長細い指先が下に向いた形となっている。可愛くネイルアートされていた爪は、血で見えにくくなっていた。二人はクスクスと笑い出した。
「次は、金の目をもつ奴で頭部がいいな」
ヴェンがそう言った。ウィリーは「そうだね」、というと金の目の者を探しはじめた。
まるで、かくれんぼゲームのように――――