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俺が正義

掲載日:2026/04/16

俺の名前は、蓑部 泰蔵。

まあ、名前なんてどうでもいい。

君に聞きたい。

何をした?

浮気。

詐欺。

ひったくり。

強盗。

……いいね。

思わず、笑う。

その言葉には“重み”がある。

人を裏切った音。

人から奪った音。

ちゃんと、“悪いことをした音”がする。

分かりやすい。

だから好きだ。

安心しろ。

弱いやつは襲わない。

泣いてるやつからは盗らない。

趣味じゃない。

甘い蜜を吸ってきたやつ。

誰かの上で笑ってきたやつ。

そういうやつだけを——

「裁く」

……ああ、勘違いするなよ。

俺は泥棒だ。

ただの泥棒。

だけどな。

悪を裁くのは、悪じゃない。

悪の反対は正義だ。

だったら俺は——

「正しい側」だろ?

少し考えて、頷く。

うん。

間違ってない。

今までだってそうだった。

裁いたやつは皆、同じ顔をする。

最初は喚く。

命乞いもする。

でもな。

最後には、静かになる。

ああ、そういうことか。

そんな顔だ。

……今のお前みたいに。

いい目だ。

分かってきたな。

さて、と。

そろそろ行くか。

衛兵が来る。

面倒だ。

強いし、数もいる。

……いや、勝てないわけじゃない。

ただな。

「あいつらは正義だ」

だから殺さない。

正義を殺すのは、正しくない。

線引きってやつだ。

俺は、間違えない。

これまでも。

これからも。

大丈夫だ。

すぐ終わる。

「正しいこと」だからな。

――――――――――

その後、現場を見た者は口を揃えた。

ひどい、と。

ある者は吐き、

ある者は叫び、

ある者は目を逸らした。

そこにあったのは、死体だった。

だが、それは“人”とは呼べなかった。

歯は抜かれ、

髪は引き剥がされ、

肉は切り刻まれ、

どこにも“形”が残っていない。

まるで——

「罪を削ぎ落とした」かのように。

その夜。

蓑部 泰蔵は、いつも通り眠りについた。

「今日も、正しかった」

疑いもなく。

読んでいただきありがとうございます。

さて。

あなたは、どこまでが“悪”だと思いますか?

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