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虚構の後継者

作者: 小雨川蛙

 

 私の師匠はとっても美しい物語を書いていました。


 描かれる風景描写はまるでその場に自分が居るようになります。


 文字で表現されたありふれた世界も、個性的な世界も、まるで本当に見てきたかのように息遣いを感じる程のリアリティがありました。


 けれど、何よりも私の……そして読者の心を強く捕えて離さなかったのは人の姿形でした。


 師匠の作品に出てくる人々は皆が魅力的なのです。

 明るく、優しく、共感の出来る登場人物達の姿は読むだけで心が温かくなっていくほどでした。




 師匠は昨年、永遠の眠りにつきました。

 その間際、私は師匠に思わず伝えていました。


「先生。あなたの描く人々の姿――私は本当に美しくて好きでした」


 すると、師匠は意地悪く笑いながら言いました。


「馬鹿か、君は。私は一度も人間は書いていない。だって――」


 くだらない最期の言葉。


「人間はあんなに綺麗なものか。汚い心を持っているからこそ嘘っぱちの虚構に惹かれるんだ」



 その後、私が師匠の後継者としての地位を確固たるものにしたのは今更説明するまでもありませんね。

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