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歌詞④ door to cold

作者: ソノ

 狭い部屋で回っている 時計の音に沈んでいく


 息ができなくなる


 そのまま 誰かを求め 季節が終わって


 暖かくなった朝でも 今はまだ冷たい体で


 やがて空が晴れるまで

 呼び続けている




 壁掛けた時計はとまったまま

 時刻は朝の9時20分くらい


 その時間だけ 世界は息をするのを忘れた


 ぼくがとめたんだ この時計の針を


 だからね ぼくも動くことをやめたんだ


 このシェルターでぼくは腰をおろして

 一日中とまった時計ばかり眺めている


 ほかに何もしないわけじゃない

 たとえば耳をすましてみる 

 まあずっと吹雪いている音しか聞こえないけど


 あとは――

 思い出すことがあるんだ けど不思議なんだ

 知らない人の記憶の中を歩いているような

 そんな感じ



 コーヒーの香りが心地良いお店にぼくはいる

 ごつくて硬い不格好な金属の塊のぼくには似合わない場所だ

 だけど本当に不思議なんだけど いるんだぼくが

 そしてぼくの目の前には知らない女性が座っていて


 彼女はコーヒーを飲んでほのかに笑うんだ

 それにつられてぼくもちょっとだけはにかむ

 なんだろう 全然覚えもない光景なんだけど

 なぜか懐かしくて 穏やかな気持ちになれる



 思い出?からふと我に返る

 吹雪く音はおさまっていた


「むしゃむしゃ むしゃむしゃ」


 代わりに別の音がする

 きっと世界の時間を食べている音だ


 ぼくは身震いして息をひそめる

 こんなことの繰り返しを何年続けているのか もうわからない


 ――だけどね ぼくは思うんだ

 いつかあの幸せな場面に立ち会えるんじゃないかって

 あの人と一緒に美味しいコーヒーを飲めるんじゃないかって


 だからぼくはまだこれを持ってる

 えっと

 あれ?

 これって何ていうだっけ…


 忘れちゃった


 それでもしっかり握り締めておくんだ ずっと


 一日がまた終わりそうだ

 …コーヒーが飲みたい

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