第6話 僕は諦めない!
魔法学校への編入試験。実技試験では、あのあとジェシカも守備にまわって、僕たちのチームはなんとか風船一つを最後まで守り抜くことができた。
「ケン、お前にはハートが足んねえ! ハートに火を燃やせ! 病気なんてすぐに治る!」
実技試験で同じチームだった暑苦しいマシュー。実技試験中はキレてたけど、なんだかんだ優しくて良いやつだ。
「ありがとう、マシューくん。頑張るよ」
「次は最終試験、面接ですよ! さすがに面接ではケンくんに何も協力できないですが、応援してますからね!」
「シャーロ……ジェシカちゃん、ありがとう」
「しゃーろ……?」
「ううん、なんでもないよ」
次の試験では、教授たちが受験生一人一人に対して面接をやるらしい。皆、順番が回ってくるのを待っているところだ。
「次、ケンタロ・ヤマダ!」
「はい」
ついに僕の番がやってきた。ケンタロじゃなくてケンタロウなんだけど、細かいことは気にしてられない!
案内された部屋に入ると、教授三名が高いところに座って待っていた。無駄に広い部屋だ。
「こんにちは、ケンタロ」
「こんにちは」
「では、早速面接を始めます。クーレシタ魔法学校へ入学を希望する理由を教えてください」
真ん中の男性教授が、真剣な眼差しで質問を始めた。というか、ここの学校名は『クーレシタ』なのか。変な名前だなあ。
「……理由は、僕の宇宙で平凡な生活を送りたいからです」
「僕の宇宙……?」
ああ。なんか怒ってる。絶対に怒ってる。
「……これまで魔法の勉強はどの程度してきましたか?」
「ここ一週間ずっと国立図書館にこもって、ひたすら本を読みました」
「……」
ああ。男性教授の顔がどんどん怖くなっていく。
「それで……本を読んでみてどうでしたか?」
「全く理解できませんでした」
「……ふざけてんのかあ!?」
ああ。ついに怒鳴りだしてしまった。
「まあ、いいじゃないですか。色んな子がいた方が、学校も面白いですよ」
一番右に座っている女性教授が口を開いた。何だか頬が少し赤いぞ。
「レイチェル先生、本気で言ってるのか!?」
真ん中の男性教授は相変わらずキレてる。
ああ。なんかもうやっぱり帰りたい。実家に。
「この子の面接は終了――」
「お待ちなさい!」
男性教授が面接を終わらせようとした瞬間、突如学長が現れた。
「が、学長、しかし――!」
「山田健太郎くんの面接はワシが担当しよう」
「そんな……!」
「先生方もお気づきじゃろう。この子には呪いがかけられておる。特例の対応も必要じゃ」
「……」
「さて、健太郎くん。君はこれからどうしたいのじゃ?」
「僕は……呪いを解きたいです」
「魔法は好きかい?」
「……まだよくわかりません」
「そうじゃな。君にはまだ実践が足りん。本学で新しい仲間とともに、経験を通じて少しずつ学んでいくとよい」
「それは……」
「合格じゃ」
学長は笑顔でそう言ったが、座っている男性教授二名は明らかに怒っている。レイチェル先生はなんだか嬉しそうだ。
「ありがとうございます。では、失礼します」
なんだかんだ合格できてしまった。
けれど、魔法が使えないのにどうしたらいいのだろうか。
実践が足りない……
そうだ。
二十世紀の物理学者アルベルト・アインシュタインも言ってたじゃないか。「何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない」と。
僕は一週間も図書館に引きこもっていただけで、全く魔法を経験していなかった。僕が魔法を使えないのも、きっとコツが掴めていないだけだ。
勉強より実践だ。練習すればきっとできるようになる。
翌日――。
タイムリミットまで後356日。
デートしないと殺すと言われたので、ジェシカと会うことに。
けれど、二人きりで会うのは怖すぎるので、アレックスも勝手に誘っておいた。
デートって何したら良いのかわからないけれど、今日はジェシカとアレックスに頼んで、近くの森で魔法を教えてもらうことにした。
「ケンくんと二人きりで会いたかったけど、仕方ないですね!」
「なんかお邪魔だったみたいで……ごめん……」
「僕が勝手にアレックスくんも誘ったんだ」
「大丈夫ですよ! そりより皆、無事に合格できてよかったですね! 頑張りましょう、ケンくん!」
「ありがとう」
こうして二人に基礎的な魔法を教えてもらい、僕は魔法の特訓を始めた。
30分後――。
「どの呪文を唱えても、何も起きない……」
「やっぱり魔力が無いみたいですね。『呪い』のせいでしょうか?」
やっぱり僕は魔法が使えなかった。