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第4話 シャーロットに殺されそうだ!

 翌週――。


 タイムリミットまで後357日。


 1週間図書館に引きこもったけれど、結局「魔法力」が何なのかを理解できないまま今日を迎えてしまった。


 そう、今日は魔法学校への編入試験の日だ。


 試験対策は全くできていない。


 しかし、実家へ帰る手段もよくわからないので、挑戦するしかないのだ!


 というわけで、ひとまず試験会場までやってきた。扉を開けて、中へと入ると……


「へ?」


 他の受験生たちだろうか。五名の男子たちが一斉に僕を取り囲み、僕に杖を向けている。


「お前のその邪悪なオーラは何だ?」

「……カーボンナノチューブです」

「はあ? 何だその魔法は? 聞いたことがない」

「か、科学です」

「はあ!?」

「あ、あの、危ないのでとりあえず杖を下ろしてもらっていいですか? 仮に杖が思いっきり振り下ろされたら、杖の質量が300g、杖の振り下ろし速度が20m/sだとして、運動エネルギーは60ジュール……バレーボールの強烈なスパイクに匹敵します。このエネルギーが鋭い先端に集中すると、かなりの破壊力――」

「はあ!?」

「いや、だから、その杖は先端が直径0.5cmぐらいですよね? そんな小さな面積にエネルギーが集中すると、圧力が非常に高くなります。運動エネルギーが60ジュールだとしたら――」

「おやめなさい!」


 突然現れた年老いた男性が叫んだ。彼は銀色のローブ身にまとい、宙に浮いている。


「が、学長だ!」


 僕に杖を向けていた受験生たちは明らかに動揺している。


「その子もまたこの学校への入学を望む者。試験会場での乱闘は許さぬぞ」

「くっ……」


 男子たちは渋々杖を下ろし、その場を去った。


「あの、ありがとうございました」

「かまわん。しかし、その邪悪なオーラ……厄介な呪いじゃな。頑張りたまえ」


 そう言い残し、学長はその場から消えていった。


「それにしても、こんなにたくさんの受験生がいるのか……」


 僕と同い年ぐらいの人たちが300人……いや、それ以上は来ているようだ。


「皆さん、もうすぐ試験開始となります! 席についてください!」


 席って……どこ?


 と思っていたら、試験官の目の前にたくさんの机と椅子が突如と現れた。


 最初は筆記試験だろうか。そう思いながら、席に着くと、目の前に突然真っ白の紙と羽根ペンが現れた。


「一次試験は筆記試験です! 試験開始と同時に問題が現れます!」


「では、試験開始!」


 ついに魔法学校への入学試験が始まった。目の前の紙に、どんどん文字が現れる。


 第一問、浮遊魔法の基本原理。浮遊魔法は、物体に反発する力を与えることで、物体を浮かせる魔法です。この魔法は、どのような原理に基づいていると考えられますか?


「……空気中で、物体が浮くためにはその物体が排除する空気の重さに対して、浮力が働かなければならない。アルキメデスの法則では……」


 うーん、何か違う気がしてきた。


 コンッコンッ


 ん?


 右隣に座っている女の子が机を軽くたたいている。というか、僕にウインクしている!


 ん?


 あ、なるほど!


 どうやらカンニングさせてくれるらしい。


 表現だけ変えて、あとはほぼ丸写しさせてもらおう!


 こうして、無事に筆記試験を終えた。


「次は実技試験です! 実技試験会場は、奥へと進んだ競技場で実施します! 各自移動してください!」


 次はついに実技試験だ。


 1週間ずっと本を読み漁ってただけだから、実技試験はやばいかもしれない。


 けれど、ソルヴィールを身に着けていればとりあえず魔法は使えるらしいから、何とかなる……はずだ。


「あの……筆記試験、どうでしたか?」


 振り返ると、ついさっきカンニングさせてくれた女の子が立っていた。彼女は可愛らしい顔立ちで、上品な雰囲気が漂っている。そして胸がデカい……。


「お、おかげさまで、なんとか……」

「それは良かったです!」


 ああ、やっぱり可愛い。名前はシャーロットとかだろうか。


「私の名前はジェシカ。あなたは?」


 全然違った。


「僕は、け、健太郎です」

「ケンタロウ? 変わったお名前ですね! ケンって呼んでもいい?」

「あ、はい」

「ケンくん、もしかして……どこか体調でも悪いんですか?」

「えっ……どうしてですか?」

「何だか変なオーラが……」

「い、色々とあってね……」

「そうなんですね……実技試験も協力するので一緒に頑張りましょう!」


 なんて優しい子なんだシャーロット……じゃなくてジェシカさん。


「そうだ! 試験が終わったら、デートしましょうね!」

「で、デート?」

「はい! デートです!」

「まあ――」

「断ったら……殺しますよ」


 ジェシカは笑顔でそう囁いた。やっぱり怖い。

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